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第318回

居心地良い環境をつくる高齢者ケアの取り組み方。ともに生活する上で意識すること

最終更新日時 2022/07/05
#親の介護
厚生労働省が発表した『介護分野をめぐる状況について』によると、2020年度の在宅介護者推定値は378万人、2025年には427万人にも達すると予想されています。在宅介護をしていくなかで、高齢者が「ここで暮らせて本当によかった」と思うのはどんな場所なのでしょうか。今回は、高齢者ケアに関する30のヒントが紹介されている『ともに生きることば 高齢者向けホームのケアと場づくりのヒント』から一部抜粋・編集し、その中から3つを紹介します。本書は介護職の視点で書かれていますが、在宅介護者にも参考になる内容が詰まっています。ぜひ、本書で紹介する「ことば」をヒントにしながら、自分たちなりのケアと場づくりを実践してみてください。

まず、これまでのライフストリーリーを整理する

本人が「ここが自分の暮らしの場だ」と心から思えるようになるためには、そこをその人にとっての自然な環境にすることが大切です。

そして、ここでの日々とこれまでの人生を重ねていくようにして、自分の人生の「ホーム」であると感じられるようにしていきます。

そうなれば、あとは今を生きることで、いきいきとして充実し、喜びのある日々を「ともに生きる」ことができるでしょう。

この場を、そこで暮らす人にとっての自然な環境にするため、まず、本人や家族、ケアする人のそれぞれの思いを共有しあうことから始めます。

そして、本人のこれまでの習慣をなるべく保てるように工夫し、ここが自分の「ホーム」だと思えるようにします。設備や備品もぬくもりとこだわりを大切にして選ぶようにし、自然なあたたかみが感じられる空間にしていくとよいでしょう。

これまでとここでの暮らしの人生を重ねていくためには、今までどのような人生を送ってきたのかという《ライフストーリー》を語りあう時間をつくってみましょう。

そのなかでわかった「得意なこと」や「好きなこと」をヒントに、その人の《役割をつくる》と、ここでの貢献の領域が生まれ、居心地がよくなっていきます。

さらに、本人が望む《これからの生き方》についても語りあうと、それを取り入れていくことができるようになります。

このように環境と暮らしのスタイルを整えたら、あとはその時々の今を生きるということに尽きます。

普通なら実現が難しいと感じるちょっとした冒険をみんなで応援したり、つながるきっかけをつくって、よい関係が生まれることをサポートしたりします。

また、日々の暮らしではいろいろな失敗が起こるものですから、ちょっとした失敗を許し、笑いあえる雰囲気をつくり、いつも笑顔が生まれる場になるようにします。

このようにして「自然に暮らせる居場所をつくる」ようにすると、ここが自分の人生を過ごしていく場所として心豊かにいられるホームになっていくでしょう。

『ともに生きることば 高齢者向けホームのケアと場づくりのヒント』P2~3より一部抜粋・編集

友人と語るように、ライフストーリーを語る

その時々で必要な手助けをしているだけでは、日々の「生活」の支援はできても、本人の「人生」に関わっているとはいえません。

本人が日々暮らしていくことを支え、困りごとを解消する手助けをすることは、ケアする人の大切な役割です。

しかし、本人は、今起きていることだけでなく、「これまでの人生の流れのなかでの今」を生きています。その流れを踏まえずに、部分的な理解で対応しているのは、本当にその人がその人の人生を生きることに寄り添っているといえるでしょうか。

そこで、これまでどのような人生を送ってきたのかを語りあい、お互いに相手のことを深く知ることができるようにします。ゆったりとした静かな場所で、お茶でも飲みながら、リラックスして話す機会をつくります。

そして、新しい友人と出会った時のように、これまでどのように生きてきたか、どんなことに興味があって、どんなことを大切にしているのかなどを語りあいます。

ライフストーリー
イラスト:井庭 崇/伴野 友香

その結果、お互いに相手のことを知ることで親しみをもてる関係になり、これからの日々をともに過ごす「仲間」と感じられるようになります。

また、そこで語られたことは、今後の関わりや場づくりのヒントにもなるでしょう。このように、人生について語りあう時間自体が、かけがえのない思い出の一ページになるのです。

『ともに生きることば 高齢者向けホームのケアと場づくりのヒント』P10~11より一部抜粋・編集

貢献できる役割をつくれば、自分の居場所ができる

身の回りのことを何でもやってしまうと、本人はサービスを受けているような気持ちになり、そこが自分の「生活」の場だと思えなくなってしまいます。ケアする側として、あれこれお手伝いしようと思うのは自然なことです。

しかし、本人にとっては、誰かがやってくれることをわざわざ断ってまで自分でするのは難しく、生活のために自分でできることがほとんどなくなってしまいます。

そうなると、受け身の姿勢が強くなり、生活の主人公であるという感覚は薄れていってしまうでしょう。

そこで、本人のやりたいことやできることを発想の種としてその人の役割をつくり、自分たちの生活をつくることに参加できるようにします。

役割を考えようとするときには、思い出話を聞きながら本人の好きなことや得意なことを教えてもらい、それに関係することをやってもらうようにするとよいでしょう。

たとえば、郷土料理をつくるのが得意な人には料理に協力してもらう日をつくり、腕をふるってもらいます。また、お花好きの人がいたら、花壇をつくってお花の手入れをしてもらうというのもよい例です。

役割をつくる
イラスト:井庭 崇/伴野 友香

その結果、何らかのかたちで貢献できるようになると、その場が自分の居場所であると感じられるようになります。そのことで周囲から感謝されたり、よい関係を育んだりすることにもなるでしょう。

また、そのように自信や生きがいを持って暮らしていくことは、心身ともに健康でいられることにつながっていくものです。

『ともに生きることば 高齢者向けホームのケアと場づくりのヒント』P12~13より一部抜粋・編集

これからの時間をどう過ごすのか、一緒に考える

ここでの暮らしを、単にこれまでの暮らしの延長だと捉えていると、過去への思いが募りやすく、今を楽しみ前向きに生きることを十分に味わえなくなってしまいます。

たしかに、身体の衰えや環境面から、不自由が増えてきているかもしれません。

しかも、このような日々があとどのくらい続くのかは、誰にもわかりません。そう思うと、目標や計画を立てようという気持ちが生まれないのは、当然ともいえるでしょう。

しかしそれでは、これからの日々も人生の重要な部分であり、まさにこれから生きていくかけがえのない時間であるということを見逃してしまうでしょう。

そこで、「どのように生きていきたいか」を一緒に考える時間を持ち、これからの人生に前向きで具体的なイメージを持てるようにします。

昔の写真を見たり、思い出話をしたりしながら、どういうことが好きなのか、どういうことを大切にしてきたのかを振り返ることから始めると、これからのことが話しやすくなります。

あるいは、「どうなりたくないか?」と聞いてみると、そこから考えやすくなることもあります。本人の内なる思いを引き出せたら、これからの生き方について具体的に話していきます。

これからの生き方
イラスト:井庭 崇/伴野 友香

その結果、これからどのように生きていきたいかというイメージがあると、その実現へのお手伝いや関わりができるようになります。

また、これからの日々も楽しみになり、前向きな気持ちが生まれてもきます。このようなことを話しあっていることで、将来、本人との意思疎通が難しくなったとしても、本人の希望に沿ったケアをすることができるでしょう。

『ともに生きることば 高齢者向けホームのケアと場づくりのヒント』P14~15より一部抜粋・編集

著者:金子 智紀/井庭 崇

高齢者向けホームの運営者やケアをする人の視点に立ち、高齢者と「ともに生きる」ために大切な30の「ことば」を紹介。ケアの本質に迫った内容で、介護職員はもちろん、在宅介護や障がいのある方のケア、子育てなど、さまざまな現場でのケアに活かすことができます。

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金子 智紀 / 井庭 崇
慶應義塾大学SFC研究所上席所員/慶應義塾大学総合政策学部 教授
2022/07/11
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小川 風子
居宅介護支援事業所 ケアマネジャー
2019/03/29

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