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第245回

意外と知らない要介護認定の落とし穴とは?地域格差や判定基準の曖昧さが招く問題点を解説

最終更新日時 2021/07/23
#介護保険サービス
皆さんこんにちは。株式会社てづくり介護代表取締役の高木亨です。介護保険制度を適用されるために必要となるのが要介護認定です。この制度は各自治体が運用しており、認定率の地域格差などが問題視されています。さらに判定基準が曖昧なので、別の問題も生じています。そこで今回は、要介護認定の仕組みと問題点を解説いたします。

皆さんこんにちは。株式会社てづくり介護代表取締役の高木亨です。

介護保険制度を利用するためには、必ず「要介護認定」を受けなければなりません。しかし、この要介護認定にはさまざまな問題があると指摘されています。

そこで今回は要介護認定の流れと問題点について考えていきたいと思います。

要介護認定を受けるまでの流れと仕組み

加齢によって必要性が生じて介護サービスの利用を考えたとき、まず要介護認定を受けて、「要介護」や「要支援」の判定をもらう必要があります。

その際、まずは「介護保険要介護・要支援認定申請書」を市区町村の担当窓口に提出します。すると、市区町村から認定調査員が原則として自宅を訪れ、申請者本人への聞き取りによる認定調査が行われます。調査項目は全国一律となっている「認定調査票」に基づいて進められます。認定調査票は79項目の基本調査と聴き取られた特記事項で構成されています。また、本人の主治医が市区町村から送付された「主治医意見書」を作成し、市区町村に返送します。

そうして集められた認定調査員による調査結果とかかりつけ医が作成する主治医意見書を基に、コンピューターが介護にかかると想定される時間(要介護認定等基準時間と言います)を推計して算出し、この時間を基に要支援1~要介護5に分けられます。この過程を「一次判定」と言います。

次に、一次判定の結果と主治医意見書、認定調査票に記載された特記事項を基に、介護認定審査会が審査判定を行います。介護認定審査会では一次判定の変更の必要性を審査します。介護認定審査会は、医療・保険・福祉の学識経験者5名程度により構成されています。これを「二次判定」と言います。

こうして決定された認定結果が、市区町村から認定結果通知書と被保険者証として送付されます。これらの書類は、要介護認定の申請日から30日以内を目安に届くこととされていますが、実際は平均38.5日程度となっているようです。

要介護認定は、介護を要するとされる度合いにより「要支援1~2」と「要介護1~5」の7つに区分されています。区分によって受けられるサービスの内容や支給限度額は異なります。なお、認定の結果、要介護者、要支援者のいずれにも該当しない「非該当」と判定される場合もあります。

要介護認定には多くの時間と人員が割かれる

要介護認定の制度に潜む問題点

さて、要介護認定にはさまざまな問題点があります。

例えば、要介護認定率の地域格差が問題とされています。現在、要介護認定率が高いのは和歌山県、大阪府、島根県などで20%超となっており、低い自治体は埼玉県、茨城県、栃木県などで15%台となっています。こうした要介護認定率は確かに地域差があることを示す一つの指標と言えます。

「要介護認定は介護サービスの給付額に結びつくことから、その基準については全国一律に客観的に定める」

これは厚労省の方針で、介護保険制度が始まった2000年4月から一貫して守られているものとされてきました。しかし現場レベルでは、近隣の市区町村間でさえ、認定結果のばらつきを感じざるを得ませんでした。

その中で2020年3月7日、「要介護度 ばらつく認定」(日本経済新聞)の記事が掲載され、その前提が守られていないことが明らかとなったのです。

この記事によって、住んでいる場所によって認定結果が異なっていることが判明。公費が使われているサービスでありながら、基準が客観的に定められているとは言えないことが示されたのです。

さて、ここに絡んでくるのは政府によって推し進められてきた「インセンティブ交付金」です。インセンティブ交付金は2018年に創設されました。インセンティブ交付金を端的に説明すると、要介護度を維持・改善した自治体に交付金を手厚く配るというものです。

インセンティブ交付金を得るために、各自治体が要介護認定を操作できる環境が事実上存在している可能性があるのです。

性善説に基づけば、インセンティブ交付金のために要介護認定が軽くされるような事態は起こらないと考えられます。しかし、コロナ禍で財政状況が厳しい市区町村が大多数を占めており、そんな自治体が意図的に要介護認定を操作する可能性は否めません。

総合事業や介護予防という考え方は、そもそも要介護認定者の要介護度を下げしたり、認定者を少なくしたりする目的があります。ところが、財政的に厳しい市区町村ほど総合事業や介護予防といった介護の適正化事業は「職員不足」「業務多忙」「予算不足」などに悩まされ、適切に実施できていないケースが多くあります。

インセンティブ交付金というアイデアを否定するつもりはありません。しかし、介護における支出抑制のために、要介護認定率に影響がおよぶ可能性は排除できません。本来、要介護認定は、自治体の財政状況とは完全に切り離されるべきではないでしょうか。

自治体が制度を悪用する可能性も否めない

インセンティブ交付金を総合事業や介護予防といった介護の適正化事業の促進のために推進するのであれば、要介護認定に全国一律の基準を設けることが先決だと考えています。

公平感が担保されなければ、本当に介護保険制度を必要としている人にサービスが行き届かなくなることも考えられます。そうなれば介護保険制度自体が絵に描いた餅のように形骸化する懸念すらあります。

適切な運用をできるよう、要介護認定をもう一度改めて考える必要があると思います。

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