はじめまして。REASON代表で、理学療法士・整理収納アドバイザーの中川恵子と申します。
「介護の教科書」の連載では、在宅介護をされている方に向けて「介護者の負担を減らし、高齢者のケガも減らせる環境整理収納術」をテーマに、在宅介護のヒントをお話しをさせていただきます。
「環境整理収納術」を実践すれば、介護者の方も要介護者の方も安心して毎日を送ることができます。ぜひ実践してみてください。
危険が潜む部屋になっていませんか?
要介護者、自立の方問わず、居室を見て「危ない!」と感じたことはありませんか?
上の図の項目にひとつでもあてまはっているお部屋だと要注意です。私が在宅リハビリで担当していた方の中にも、そのような方がいらっしゃいました。
誰が見ても「危ない!」と感じると思いますが、利用者の方は「大丈夫です、大丈夫」とおっしゃいます。また、その方の部屋は危ないだけでなく、掃除をするにも一苦労で、かなりホコリの多い部屋でもありました。
そして、部屋が荒れはじめて2年たった頃、ダニが発生してしまい、その方は背中をダニに刺されるようになってしまいました。
家の外よりも中で怪我をする
これは、東京消防庁が出した「65歳以上のけがを中心とした事故での救急搬送データ分析(平成18~22年)」を基にしたグラフです。
意外なことに、高齢者がけがをしている場所はお家の中が多いのです。しかも、居室・寝室という身近なところでけがをしています。けがが多く発生するのは、階段や洗面所などではなく、身近なベッド周りや居室が多いというデータが発表されました。そして、「転ぶ」が81%でけがをしてしまう1番の原因なのです。
高齢者の方にとって、整理収納の期待される効果というのは…
・けがを減らすこと
・感染症の原因にもなるホコリを減らすこと
転んで骨折してしまえば寝たきり生活にもなりかねません。まずは、どこにリスクがあるのかを知るようにしましょう。
「動きやすい部屋」 床にモノを置かないことが重要!
介護する人・介護される人の双方にとって良い環境は、安全で掃除がしやすい環境でもあります。その条件は、動きやすいスペースで、床に置いてあるモノが少ないことです。
床に洋服やチラシ・新聞が置いてあれば、歩いているときに踏んでしまい、滑って転んでしまうリスクが高くなります。
そして、床に置いてあるモノを片づけてから掃除をはじめます。洋服をしまうときに、高齢者の方が選びやすく、しまいやすい収納方法で定位置が決まっていないと、また洋服の収納場所が床に戻ってしまいます。
棚に写真やインテリアがたくさん置いてあれば、それを動かしてから拭き掃除をしなくてはなりません。家具がたくさん置いてあれば、ホコリがたまりやすくなります。
このようにモノが多ければ多いほど掃除に時間がかかり、老化とともに掃除や片づけをする気力と体力が失われ、お部屋が散乱して転びやすい環境になってしまうのです。
「整理収納でリハビリ」 私が環境整備をはじめたきっかけ
私は20年間、理学療法士として病院や老人保健施設、有料老人ホーム、訪問看護ステーションなどで働いてきました。私の仕事は、患者様、利用者様、入居者様にリハビリを通じて元気になっていただくこと。
その中で、高齢者の方がいつまでも元気に暮らし続けるために、介護する人も介護される人にとっても、共に良い環境が作れる方法はないかと常に考えてきました。
そして行き着いたのが、要介護者の日常の基本的な動きである食事、排泄、着替えなどの生活リハビリを、最小限のお手伝いで効果的にできれば、体の状態を維持でき、いつまでもお元気に暮らすことができるのではないかと考えるようになりました。そうできるように環境を整えればいいのではないかと。
同時に、炊事、洗濯、そうじ、趣味(手芸、カラオケ、盆栽)など、生活リハビリをしながら生きることを楽しんでもらい続ける目的もあります。
- ご飯を食べる楽しみ
- 自分で洋服を選ぶ楽しみ
- お料理をつくる楽しみ
- 掃除をしてきれいな空間で暮らす楽しみ
- たわいないおしゃべりする楽しみ
本日のまとめ
身の回りを整理することで、高齢者のケガを減らし、感染症の原因にもなるホコリを減らせる効果があるということを気づいていただけましたでしょうか?
私は、高齢者の方達が、最後まで自分の脚で立って元気でいてほしいと願っています。だからこそ、チラシや新聞や電気のコードでけがをして歩けなくなったら、もったいないと思うのです。
本連載では、介護する人にとっても、介護される人にとっても、共に良い環境をつくるための整理収納のポイントを、
・モノのかかわり方
・モノの分け方、減らし方
・収納の仕方
・家具の選び方
・洋服などの整理収納術
以上の側面からお伝えしていきたいと思います。
人間は誰だって老いていきます。周囲にいる人たちのサポートで、怪我なく生活を送らせてあげたいですね。次回もお楽しみに!