皆さんこんにちは。千葉県の地域包括支援センターで勤務している社会福祉士の藤野です。
今回のテーマは、「遠距離介護者は、どのように地域包括支援センターを利用できるか」についてです。活用方法と、その事例についてお話しようと思います。
親族の生活環境が心配になり相談へ
例年、お正月やゴールデンウィーク、お盆休みなど、長期休暇の後に遠方に要介護のご家族が住んでいる方からの相談が増加する傾向が見られます。帰省した方がご両親や祖父母の生活環境を見て、この先の暮らしを不安に思うのでしょう。特に、地元に残っているご家族が独居であったり高齢者世帯であったりすることが多いですね。
日常的に、電話をはじめとした連絡ツールで安否確認をしていると思いますが、電話で聞いた生活環境と実際に見た生活環境にギャップを感じるケースも少なくありません。
電話などでの会話においても、「話がちぐはぐになってきた」「話の内容を理解できないようだ」などと感じ、地域包括支援センターにご相談の連絡をくださる方もいらっしゃいます。 実際にあった相談内容は以下の通りです。
- 年末に実家へ帰省したら親族の歩き方がおかしい
- 火の始末ができていない
- 車にぶつけた跡がたくさんある
- 食事がしっかり摂れていない
- 通院しなくなっている
- 買い物ができなくなっている
- 会話がうまく成立しない
これらの行動を心配した親族の方から寄せられる、「もしかしたら親族は認知症になってしまったの?」という相談が多いです。
また、「入院している親族の退院後の生活に不安がある」というご相談もあります。いずれにしても、相談内容の対象者は、常に見守りが必要な方や、他者とのかかわりが希薄な独居・高齢者世帯であることが多いです。

大事なのは異常に気づくこと
親族の方に認知症の症状があったとしても、独居や高齢者世帯である場合はご本人が気がつかず、徘徊や「物盗られ妄想」によるご近所トラブル、ボヤ騒ぎが起こってはじめて発覚することも珍しくはありません。そのときには、認知症の症状や生活環境の悪化が進んでしまっていることも多いです。
とはいえ、遠方に住むご家族はなかなか日常的な支援が難しいのが現実。本来であれば、こういった対象者の方を地域包括支援センターで完全に把握ができれば良いのですが、なかなかそういうわけにはいかないです。
生活に不安がある方の見守りについては、民生委員さんをはじめとした地域住民であったり、医療機関を受診した際に医師が不安を感じた場合に、地域包括支援センターに連絡してくださるケースもあります。
とはいえ、当センターとしても積極的に地域に出向いてアウトリーチすることを念頭に置きながら活動しているところですが、「まだまだ情報が足りない」というのが本音です。
そういったなかで、遠方に住むご家族の相談による連絡は、これまで我々とかかわりのなかった、支援が必要な方を把握できる大切な機会となっています。ご家族からの一報は、私たちにとって重要なものです。

私たちはご家族からのご相談をもとに訪問し、介護保険の申請や調査の立ち合いや介護保険サービスの導入をお手伝いします。
例えば、介護保険の申請をすると「認定調査」があります。基本的にその調査にはご家族の立ち合いが求められますが、単身者であったりご家族が遠方にいる場合は、ご家族に代わって地域包括支援センターの職員やケアマネージャーが立ち合いをします。
他にも、地域包括支援センターにご相談いただければ、ヘルパーサービスを導入したり配食サービスをご提案できます。大切なのは誰かが異常に気がつき、誰かに「つないでいく」ことなのです。私たち包括支援センターの仕事は地域の住民が「誰かとつながっていく」ためのコーディネートだと言っても良いでしょう。
困ったときは地域包括センターに連絡を
介護保険や介護保険外サービスだけですべての問題の解決ができるわけではありません。各サービスは時間的な制限や介護保険上の制約があるからです。
例えば、認知症の影響で徘徊をしているご高齢者の方にはヘルパー派遣をはじめとした支援を行いますが、ヘルパーさんが帰った後に自宅を出て徘徊してしまうケースもあるため、限界があります。そういった場合は遠方に住むご家族に協力を要請し、夕方にその方が不安になるタイミングを見計らって、ご家族から電話をしてもらうこともあります。
家族のお声がけが大事
介護保険のサービスは定期的かつ安定的な供給が可能で、高齢者の方の状況の変化に気がついてもらうためにも非常に有効です。
とはいえ、精神的な支えとして一番うれしいのがご家族のちょっとした優しいお声がけや電話でしょう。お仕事をされている方も多いので、毎日の電話が大変な方もいらっしゃるかもしれません。しかし家族や地域住民、医療介護保険サービスが共同してご本人を支援できたとき、高齢者の方の在宅での生活に「安心」という灯火がともります。
もし、継続的な支援は難しくなってきた場合は、介護保険サービスで支援を受けると良いでしょう。遠方に住んでいることで不安を抱えている方がおられましたら、ぜひ最寄りの地域包括支援センターに相談してみてくださいね。
