みなさん、こんにちは!デイサービスで看護師として勤務している、認知症LOVEレンジャーの友井川 愛です。
本日は、認知症介護でお困りの方が非常に多い症状のひとつ「夜間せん妄」の対策について考えていきます。
と、その前に、このごろ急に寒くなってきましたね。
認知症の方は私たちより暑さや寒さを感じにくいので、気候に合った衣類を選んで体温の調整をすることが困難です。
寒い季節でも薄着で過ごしてしまうことが考えられるため、周囲のみなさんは早めに季節の変化に気づくことで、適切な対応をするようにしてください。
さて、それでは本題の「夜間せん妄」について話していきましょう。
夜間せん妄になると眠れない原因とは?

「せん妄」は意識混濁や幻覚、興奮、不安などの精神症状のことで、夜間に大声を出したり、暴れたりする症状のことを「夜間せん妄」と言います。
それでは、どのような方に夜間せん妄が起こりやすいのでしょうか?
睡眠ホルモンが減少が原因
私たちは通常、朝に目覚め、夜に眠るという身体の仕組みになっています。
この仕組みは「サーカディアンリズム」と呼ばれており、人間は24時間周期の地球の自転に合わせた生活リズムを形成しているのです。
しかし、アルツハイマー型認知症の方は、サーカディアンリズムが乱れやすくなっています。
睡眠ホルモンであるメラトニンが減少してしまうことで、自然な眠気が起こりにくくなり、寝つけなくなるのです。
レム睡眠行動障害
レビー小体型認知症の方にみられる症状に「レム睡眠行動障害」があります。
通常、夢を見ていても体が動き出すことはないですよね。
なぜなら夢と同じ行動がとれないように、筋肉を緩んでいる状態にすることで制御しているからです。
一方で、認知症の方(特にレビー小体型認知症の方)は脳幹の機能低下によって睡眠中の筋活動が抑制できません。
その結果、夢を見るとその夢に反応してしまい、大声や暴力などが生じるのです。
精神的不安
施設や病院で過ごしている方の場合、夜勤スタッフの業務音が聞こえてくるケースがあります。
そのような環境の音によって不安をあおられ、気分が高揚してしまうと眠れないことがあります。
身体的な原因
夜間に眠れない方のなかには、便秘の方が多くみられます。
認知症の方が落ち着かない場合は、排便がきちんとあるか確認してみましょう。
夜間せん妄を改善する4つのポイント

1.太陽の光を浴びましょう。
前述したとおり、サーカディアンリズムが乱れてしまうと睡眠障害を引き起こします。
まずできる対策は、朝に太陽の光を浴びることです。
起床してすぐに(眼で)太陽の光を浴らびれるように援助することで、サーカディアンリズムを修正することができます。
また日中に活動し、健康的に少し疲労することも、生活リズムを整えやすくするポイントです。
2、お昼寝はOK!
日中に強い眠気があるようなときは、15~30分程度のお昼寝をすることが睡眠障害に効果的だと言われています。
3、足をあたためてみましょう
眠りやすい状態にするためには、体温を下げることも重要です。
就寝の1時間前に足をあたためておくと、その反動で眠る頃には体温が下がっているため、眠気が自然に起こりやすくなります。
私も業務中、不眠を訴えていた方への対応として、両足を深めの洗面器につけてもらい、人肌より少し高めのお湯を注いでマッサージするようにしていました。
その方は気持ちよくなりウトウトされていました(笑)。
ポイントとしては最初に洗面器にお湯を張っておき、その後もゆっくりと音を立てながらお湯を注ぐことです。
お湯のあたたかさはもちろん、注ぐときのお湯の音にも癒しの効果がありますよ。
4、あたたかい飲み物とチョコレート
あたたかい牛乳や甘いココアを飲むことが、眠気をもたらす効果を発揮します。
牛乳が苦手な方の場合は、あたためておいた牛乳にチョコレートを溶かしてみるのもおすすめです。
もちろん、少量のチョコレートを食べてもらうのでもOKです。
また、眠くないのに無理して布団に入ると、イライラして余計に眠れなくなることがあるため、飲み物や甘い物を摂取しながら会話してみましょう。
夜間の大声で起こされたら?

以前、務めていた職場にレビー小体型認知症の方がいました。
その方は夜になると大きな声で「誰か来た!助けて!」と言いながら、廊下に出て来ていました。
その方はレム睡眠時行動障害だったと考えられますが、話を聞いてみると、知らない男の人にずっと追いかけられたと言うのです。
私たちがそのような夢を見た場合、目が覚めたときには「あー。良かった。夢だった」と気づいてホッとしますよね。
しかしレム睡眠時行動障害のある方は、目を覚ました後も夢を夢だと認識できず、現実の出来事と思ってしまうのです。
もし認知症の方が大きな声を出して周囲の人を起こしてしまった場合、その方が何回も同じことを繰り返していると「またか」と感じられるかもしれません。
しかし本人からすると、夢ではなく「本当に知らない男の人に追いかけられていた」と思っているため、訴えに対して夢の出来事だと否定するのではなく「大丈夫ですよ。私がいるから安心してね」などと優しく声かけしてみましょう。
決して感情的に反応せず、本人の不安な気持ちを汲みとることで、安心させてあげられるように優しく接してくださいね。
また、寝室の環境を整えることも大切です。
電気の光が明る過ぎたり、逆に真っ暗でも眠れない場合があるので、蛍光灯を間接照明に変えるなどして、程よい光になるよう調整してみましょう。
眠れないときの睡眠薬の使用について

夜になっても寝てくれないなら、睡眠薬を飲ませて寝てもらおう、などと安易な判断をしてしまうのはとても危険です。
高齢者の方は私たちよりも、薬の作用が効きすぎることがあるからです。
眠れないからといって、睡眠薬を服用することで朝になっても起きられなくなり、一日の生活リズムが乱れてしまうことがあります。
これでは、夜間せん妄を引き起こす誘因にもなりかねません。
そうならないためにも、睡眠薬に頼るのではなく、日中の活動量を増やして夜間にぐっすり眠れるようにしましょう。
- 夜間せん妄の原因を理解して、優しい対応を心がけましょう
- 日中や就寝前の工夫で、夜眠りやすい身体をつくりましょう
- 睡眠薬に頼るより、活動量を増やして生活リズムを整えましょう