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第200回

グループホームでの支援の目的は入居者の「これまでの生活」を維持すること

最終更新日時 2021/09/21
#親の介護 #老人ホームへの入居 #介護保険サービス

株式会社Qship(キューシップ)代表・介護福祉士の梅本聡です。

前回前々回に引き続き、運営基準などの法令をもとに、認知症対応型共同生活介護事業(以下、グループホーム)の特徴などをお伝えします。

グループホームの運営基準と解釈通知

私がホーム長を勤めていたグループホームでは、掃除、洗濯、炊事、買い物といった家事を入居者の方たちの暮らしの中に取り入れていました。というのも、グループホームの運営基準と解釈通知には、次のことが規定されているからです。

運営基準
介護等 第九十九条三項は、
利用者の食事その他の家事等は、原則として利用者と介護従業者が共同で行うよう努めるものとする。
解釈通知
(6)介護等
③ 基準第九十九条第三は、利用者が介護従業者と食事や清掃、洗濯、買物、園芸、農作業、レクリエーション、行事等を共同で行うことによって良好な人間関係に基づく家庭的な生活環境の中で日常生活が送れるようにすることに配慮したものである。

グループホームが「認知症対応型共同生活介護」として介護保険制度に位置づけられたのは、2000年4月のことです。それ以前の入居系介護施設で利用者の方たちに必要だった家事は、「管理・提供型」でした。そのため、「掃除・洗濯は職員が行う」「食事は献立が決められ、時間になれば提供される」ことが当たり前でした。

要介護状態でなかったときは、掃除でも洗濯でも自分に必要なことは自分で行っていた方たちが、施設に入った途端に管理と一方的な提供の中で生きていくことになっていたのです。

そんな中、入居者の方たちが料理や掃除、洗濯など、これまで家庭でやっていたことを続けられるように支援することが制度的に取り入れられたのが、グループホームでした。1994年から介護の仕事に就いていた私にとっても、それまでの施設介護の実践とかけ離れたグループホームに驚き、強い関心を持った記憶があります。

「これまでの生活」を維持するための支援

「設備(環境)」も、グループホームの実践に家事を取り入れることを後押ししています。

運営基準
第三節 設備に関する基準
第九十三条二
共同生活住居は、その入居定員を5人以上9人以下とし、居室、居間、食堂、台所、浴室、消火設備その他の非常災害に際して必要な設備その他利用者が日常生活を営む上で必要な設備を設けるものとする。

入居者の方たちの居住スペースには、「台所」を設けることが基準化されています。グループホームの制度設計の際、入居者の方たちの暮らしと支援に家事を取り入れることが想定されていたことが、ここからもわかります。

また、グループホームにおける家事は、入居者の方たちの暮らしと支援の「主体」として考えられていたのだと思います。というのも、グループホームと同様に入居者の方たちが家事を行うユニット型特養の設備基準は、「簡易な流し・調理設備を設けることが望ましい」となっているからです。

運営基準や解釈通知を確認してわかるのが、グループホームの入居者の方たちが「掃除、洗濯、炊事、買物といった家事」を行うことは、イベントでも特別な取り組みでもなく当たり前の日常だということです。。まとめるとこうなります。

  • これまでの生活の継続…自分に必要なこと(のひとつである家事)のうち、自分で行えることは継続する
  • これまでの生活の取り戻し…自分に必要なこと(のひとつである家事)のうち、できないと思われていたことを取り戻す
  • これまでの生活の代行…そのうえで自分に必要なこと(のひとつである家事)のうち、できないことは代行する

「これまでの生活」の継続・取り戻し・代行

介護施設で唯一「食材料費」が徴収されることの意味

前述した運営基準にあるとおり、グループホームの入居者の方たちの食事(炊事)は、原則入居者の方たちと介護職員が共同で行うよう努めることが規定されています。

ここで確認しておきたいのが、次の規定です。

運営基準
第三節 設備に関する基準
第九十六条三
認知症対応型共同生活介護事業者は、(略)、次に掲げる費用の額の支払を利用者から受けることができる。
一 食材料費
二 理美容代
三 おむつ代
四 (略)日常生活においても通常必要となるものに係る費用であって、その利用者に負担させることが適当と認められるもの

このようにグループホームでは、「食材料費」を徴収していいことになっています。ちなみに利用者から支払いを受けることができる費用に、「食材料費」が示されているのはグループホームだけです。

利用者の方に食事提供を行う他の事業、介護老人福祉施設や老人保健施設、短期入所、通所介護、小規模多機能型居宅介護では、「食事の提供に要する費用」いわゆる「食費」の徴収ができると運営基準に規定されています。

この「食事の提供に要する費用」とは一体何なのか、次の厚生労働省からの告示を確認してみます。

●居住、滞在及び宿泊並びに食事の提供に係る利用料等に関する指針(厚生労働省告示第四百十九号)

二 居住、滞在及び宿泊並びに食事の提供に係る利用料
ロ 食事の提供に係る利用料
  食事の提供に係る利用料は、食材料費及び調理に係る費用に相当する額を基本とすること。

ご覧のとおり「食事の提供に要する費用」は、「食材料費」と、栄養士の人件費は除いた基本的には調理師の人件費を想定した「調理に係る費用」で構成されています。

そのため、グループホームだけが徴収可となっている「食材料費」というのは、料理に必要な食材や調味料などの費用のみを指しています。調理師や調理のみに従事する職員の人件費は含んでいないので、いわゆる「食費」とは異なるわけです。

この点からもグループホームの食事は、特養や老健、デイサービスのような「提供(給食)型」ではなく、原則入居者の方たちと介護職員が共同で調理を行う「自炊型」だということがわかります。

また「自炊」とは「食事を自分でつくること」ですから、食材も自分(たち)で買いに行く必要があります。(提供型は業者が運んできてくれます)

そのため、入居者の方たちの暮らしと支援(実践)にとって「食材の買い物に行くこと=地域社会とかかわること」が必然となっていきます。毎日のように買い物に出かけることで、地域住民と交わるようになり、関係がつくられていくからです。これも食材が届けられる「提供(給食)型」の食事では実現が難しいことです。

「これまでの生活」の継続・取り戻し・代行

グループホームは、以前の施設介護で要介護状態にある方から奪われてしまっていた「これまでの生活(=日常生活行為や家事で自分に必要なことは自分で行う)の維持」を施設(グループホーム)での暮らしの「主体」としました。そのため、これまでの生活の中で「今もできることに取り組める」「その能力を発揮できる」環境(設備など)が整えられました。

つまり、グループホームは、本人が「生活の主体者」として生きていけるように支援することが可能な事業だと言えるでしょう。それは、以前の施設介護では実践できなかったことです。

私も10年半、そんなグループホームでの実践を追求してきました。グループホームだからこその基準や設備なども「支援専門職である私たちが活かしてこそ!!」。ですから、またいつかグループホームの実践に取り組んでみたいと思っています。

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