こんにちは。デイサービスで看護師として勤務しています、友井川愛です。
今回は「認知症の基本的な症状である中核症状」について考えていきたいと思います。
中核症状を5つの症状に分類
認知症の症状の1つに、「中核症状」と言われるものがあります。
中核症状とは、脳の神経細胞の損傷が原因で起こる症状です。
中核症状を5つの症状に分類して、考えてみましょう。
(1)記憶障がい
ものを覚える機能の「記銘」、覚えていることを保つ機能の「保持」、覚えていたことを引き出す機能の「再生」がうまく機能しないことで、ものごとを覚えられなかったり、記憶がなくなることがあります。
記憶障がいが最も多いとされているのは、「アルツハイマー型認知症」。
特にエピソード記憶が保持されにくいため、「いつ・どこで・何をした」という経験に基づく記憶が思い出せなくなります。
(2)実行機能障がい
今までできていたことができなくなったり、ものごとを進めるための段取りがうまく行かなくなります。
また、計画的に行動することも困難になります。
(3)当識障がい
「人・時間・場所」などを認識することが、できなくなります。
(4)「失認・失行・失語」
ものごとを理解できない症状を指す「失認」、日常動作ができない症状を示す「失行」、言葉が理解できず、言葉が出にくくなる症状の「失語」を発症することがあります。
(5)「理解・判断力」の低下
寒くても薄着で外出するなど、状況に応じて、適切な行動ができないことがあります。
認知症の方の行動を止めたり、責めることで症状が進行する可能性がある
続いて、中核症状がある認知症の方に起こりがちな、料理に関する問題を見ていきます。
普段、私たちは料理をするときにどういった思考を巡らせているでしょうか。
料理をするときには、以下のように一連の流れをイメージします。
私たちは、記憶をもとに必要な情報や段取りを確認しながら、ものごとの手順を把握しています。
何をつくるかを考え、材料を購入し、調理を始めるしかし、記憶障がいが起こると、記憶を引き出せなくなって、料理に限らず生活に支障が出ます。
そして、実行機能障がいが起こると、ものごとの手順がわからなくなるので、何かに取り組むことが面倒に思えることがあります。
アルツハイマー型認知症の、Aさんの事例を見ていきます。
アルツハイマー型認知症のAさんの事例
80代のAさんが台所で昼食の準備をしていると、娘が焦げ臭いにおいに気がづきました。
台所に行くと、火のかかった鍋の中身が焦げていました。
そのとき、Aさんは部屋でテレビを見ており、娘がAさんに鍋のことを尋ねると、Aさんは「火をかけた覚えはない」と言います。
この出来事には、記憶障がいが関係しています。
さらに実行機能障がいも伴い、料理の手順がわからなくなって鍋を放置してしまった可能性が考えられます。
また、本人は故意的に鍋を焦がしたわけでも、そうしたかったわけでもありません。
認知症の方を強い口調で責めたり、料理を止めさせようとすると認知症が進行する可能性があるため、注意しましょう。
家族が一緒に料理をすることで安全を確保
中核症状がある認知症の方は、安全対策を行いながら、誰かと一緒に料理をするようにしましょう。
家族が一緒に台所に立って「○○のつくり方がわからないので、教えてね」、「一緒につくるほうが楽しいよ」などと声をかけながら、料理をしてみましょう。
火は、家族が扱うようにして、本人には料理の盛り付けや、配膳をお願いしてみると良いと思います。
また、家族が外出する際は、ガスの元栓を止めて置き、代わりに電気ポットや電子レンジなどを準備しておきましょう。
認知症の方が問題を起こして周囲が困ることもありますが、「一番困っているのは本人」であることを忘れないことが重要です。