こんにちは。
デイサービスで看護師として勤務している、認知症LOVEレンジャーの友井川愛です。
今回は、「認知症の方をお風呂に入れてあげるにはどうすれば良いか」についてお話します。
親族の介護者や介護職員の中に「認知症の方が、なかなかお風呂に入ってもらえず困ってしまった」経験のある人がいると思います。
そんな経験をしている人に向けて、今回は認知症の方がお風呂に入ることを嫌がる理由をお伝えします。
「どうすればスムーズにお風呂に入ってもらえるのか」について教えますので、最後まで読んでもらえると嬉しいです。
お風呂に入りたくないのは入浴の仕方を忘れているから
認知症の方がお風呂を嫌がる理由のひとつに、「実行機能障害」という中核症状があります。
例えば、「お風呂に入る」という目標を定めたとき、以下の工程を踏まなければいけないですよね?
- 脱衣所に行く
- 服を脱ぐ
- 浴室に行く
実行機能障害とは、目標のために行わなければいけない工程を計画し、実行に移せないことを指します。
つまり「実行機能障害となり、今まで当たり前にできていた行為(お風呂に入る)ができなくなってしまったことを家族や介護者に隠したい」という思いから、お風呂に入ることを嫌がるのです。

もちろん、これはあくまで一つの例です。
「お風呂に入る」行為が面倒に感じる場合や、そもそもお風呂に入ることが何かわからなくなっている場合もありますので、お風呂に入りたくない原因が何か、本人様の言動を注意深く観察することが必要です。
無理やりお風呂に入れることは原則としてNG!
認知症の方が入浴を嫌がるとき、介護者がやってしまいがちなのが、「無理やりお風呂に入れようとすること」です。
何日もお風呂に入らない方に、「何日もお風呂に入ってないから入りましょう」「お風呂に入ってないから汚いから早く入りましょう」と言って入浴を強要してしまうことがあります。
介護者からすれば、「不衛生だからキチンと入浴してほしい」と思ってしまいますよね。
しかし、認知症の方からすると入りたくないちゃんとした理由があるのです。
自分の身になって考えてみてください。
もしあなたが突然、知らない人に知らない場所へ連れていかれ、いきなり服を脱がされたらどう思いますか?
きっと、「怖い」「恥ずかしい」と思いますよね。
それにくわえて、認知症の方は高齢者がほとんどです。
高齢になると自分が思うように体が動かなくなることは想像できると思います。
さらに、認知症の方は「お風呂に入る」という行為そのものがわからなくなり、恐怖を感じてしまうことがあります。
認知症の方にとって「お風呂に入る」とは、「自身の身体が思うように動かない状態で、当然知らない人に知らない場所に連れていかれ、服を脱がされて入浴させられる」ということです。
これでは、認知症の方が「お風呂に入る」行為を嫌がっても不思議ではありませんよね。
自尊心を傷つけずに入浴してもらうことが大事
では、どうやって入浴をおすすめしたら良いのでしょうか。
まず、本人の気持ちを考えてみましょう。
誰でもそうですが皆さん、それぞれの人生がありますよね。
もちろん、認知症の方も同じように人生があります。
高齢になるまでには長い人生があり、そのなかでさまざまな経験をして自信を持ち、自尊心も育っていきます。
例えば、今介護をしている認知症の方が仕事や子育てをしっかりとしていて、家庭を守ってきた方だとします。
そんな人が、今まで普通にできていたことを突然できなくなったら、その方の自尊心は傷つきますよね。
ましてや「お風呂に入ってないから汚い」などと介護者に言われたら、さらに傷つくと思いませんか。
では、どうすれば認知症の方に入浴してもらうことができるのでしょうか、次の章で説明していきます。
安心して入浴できる環境にしよう
認知症の方をお風呂に入れるには、その人の自尊心を傷つけず、入浴をするきっかけを与えれば良いと思います。
例えばですが「体に痒みがある」「痛みがある」といった理由でしか入らない人には、そのことをお伝えしてお誘いするのです。
「この前、○○が痒いと言ってましたよね?ちょっと見せてもらえませんか?」と関心をお風呂以外に向けながらお風呂にお連れするのです。
また、暑い日なら「汗をかいてるからお風呂でさっぱりしましょう」と言って誘導するのも良いですね。
また、お風呂そのものに対して不安があり、入浴を嫌がられることもありますので、安心して入浴できる環境を整えることも大事です。
例えば、冬は浴室に寒さを感じるので、浴室の床や椅子を温めて対策をしましょう。
お湯をかけるときも足元からお湯をかけて、気持ちよさを感じてもらうのです。
体や髪の毛を洗うときに、タオルを渡したら自然に洗い出したり、シャンプーを手のひらに出すと髪の毛を洗い始めたりします。
また、入浴は裸になるわけですから、羞恥心には配慮すべきでしょう。
入浴介助の際は、同性の職員の介助を希望する方がいます。
このとき、その方が何ができるかを観察して、できないところだけ介助しましょう。
もし、シャンプーやタオルを渡しても使い方がわからない場合は、一つずつ声かけを行い、認知症の方が思い出して、自力でできるように誘導することも大切です。

入浴を気持ち良かったと感じてもらおう
最初はお風呂に入ることを嫌がる方も、入浴したことで「気持ち良かった」と感じてもらえた場合、だんだんと入浴頻度が増えることがあります。
私は「気持ち良かった」と感じてもらうために、入浴後はその方がお好きな飲み物を用意していました。
入浴は体の清潔の保持とリラックス効果もありますので、できれば積極的に入ってもらいたいですね。

入浴を嫌がる認知症の方には、「入浴して気持ち良かった」と感じられる経験をしてもらうことが大事だと思います。