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第116回

高齢者の知覚低下の順番 味覚は最後まで低下しにくい!認知症の方の食事にも味付けに配慮を

最終更新日時 2020/01/17
#親の介護
こんにちは。デイサービスで看護師として勤務している、認知症LOVEレンジャーの友井川愛です。今回は、認知症の方に食事を提供する際に知っておいて欲しいことをお話します。

こんにちは。デイサービスで看護師として勤務している、認知症LOVEレンジャーの友井川愛です。

今回は、認知症の方に食事を提供する際に知っておいて欲しいことをお話します。

認知症の方にも味覚はちゃんとある

認知症の方のなかには、なかなか食事を食べられない方がいます

この理由としては、「食べられない内容のものである」「食事を食べたくない気分」「食事が認識できない」…などのさまざまなものが考えられます。

認知症の方にとって、食事はとても大切です。

人は高齢になるにつれて身体状態が低下し、順番として、まずは視力や聴力が明確に低下していきます。

しかし、味覚は高齢になっても低下しにくいといわれています。

そのため、介助する人には、認知症の方の味覚に配慮してほしいものです。

ステーキを前にして舌なめずりをしている高齢男性

認知症の方の食事をごちゃまぜにしないで

私が介護や医療の現場で働くなかで、とても悲しい気持ちになることがあります。

「認知症だからわからないだろう」と、食事の際、さまざまな食べ物をごちゃ混ぜにしたり、ご飯などに薬を混ぜたりしている場面を見ることがあるのです。

「認知症の方には、何を・誰と・どこで食べているかがわからない」という介護者の勝手な推測で、認知症の方から味わって食べる楽しみを奪わないで欲しいと私は思うのです。

確かに、認知症の方のなかには淡々とした表情で食事される方もいます。

しかし、よく観察すると、お好きな料理を召し上がるときの表情がわずかに緩んだり、食べる速さが普段より速くなったりしています。

つまり、認知症の方もちゃんと味わって食事されているのです。

生活環境に応じた好きな料理で、安心につなげられる

皆さんの育った環境に応じて、好きな味付けや食材、料理などがあるかと思います。

好みの料理を食べるとホッと安心することはありませんか?

認知症の方も、そんな私たちとなんら変わりません。

私たちと同じく認知症の方にも、美味しいと思う料理や馴染みの食材、味付けの料理をぜひ食べていただきたいものです。

お好きな料理を食べることによる安心感は、認知症の方にとって重要です。

そのため、生活環境が変わっても、食事環境はどうかできる限り変えないでいただきたいと思っています。

食事の認識ができないケースもある

アルツハイマー型認知症の方によくみられるのが、目の前に料理がセッティングされていてもなかなか食べ始めないケースです。

介護者が「お食事ですよ」と声かけしても「はい、はい」と返事だけされ、なかなか食べてもらえません。

こんなときには、お茶碗とお箸、もしくはスプーンを介護者が本人に持つように介助すると食べられることもあります。

ここで考えられるのは、認知症の中核症状である「失認」です。

失認は、主に脳の後頭葉が障害され、目から入った情報が正しく認識されず、食べるものが何かわからなくなることです。

そのため、先ほど説明したように認知症の方にお茶碗とお箸を渡したり、介護者が介助して無理に食べさせようとすると食べ物の認識ができないので、口に入れることを嫌がられる場合もあります。

このようなときは、タイミングを計りながら無理強いせずに介助することをおすすめします。

高齢女性の食事介助をする若い女性

生活音や部屋の汚れが集中を阻害する要因になることも

私たちは普段気にしないものでも、認知症の方は気になって集中できない原因となるものがあります。

例えば、食事中に聞こえるドアの開け閉めの音や洗い物の音、話し声、テーブルに置いてあるもの、カーテンの柄や床の汚れなどです。

私たち介護者はこのことも踏まえて、生活音に注意したり、生活用品などの室内環境を整えたりする必要があります。

味付けの工夫によって食べてもらえたケース

Aさんは80歳代の男性で、最近アルツハイマー型認知症の診断を受けた方です。

住み慣れたご自宅での生活が難しくなってグループホームに入居されたのですが、なかなか食事が進まずグループホームの職員も困っていました。

食事の際、ご自分の席に座るのですが、テーブルクロスの柄に気をとられたり、置いてあるものに興味を持ったり、なかなか食事に集中できない様子でした。

職員が食事を食べるよう声かけをしますが、本人は「はい。そうですね」とおっしゃるばかりで、食べ始めるのに時間がかかっていました。

また食事の摂取量にもかなりむらがあるのです。

職員は何が原因なのかわからず話し合いをしていたのですが、そのときにあることに気づきます。

それは、Aさんが食事を半分も食べないときと、全量召し上がるときがはっきりしているということです。

お醤油やお味噌を使用したときに限って食事を残すことがあるということもありました。

これは偶然ではないと考え、Aさんがご自宅で使用していたお醤油とお味噌のことを、ご家族に尋ねました。

すると、Aさんは九州出身で甘いお醤油やお味噌が好きだということがわかったのです。

実は、このグループホームでは、しょっぱいお醤油や甘くないお味噌で料理をつくっていたのです。

そのため、Aさんは馴染みの味付けではないときは食事を残していたのです。

私もそうですが、多くの九州育ちの人は、甘いお醤油やお味噌が大好きです。

そのため、ときどき関東に行くことがあると、お醤油がしょっぱくておいしく感じられず、困ることがあります。

それほど、自分の食べ慣れた味の料理を食べることは、幸せや楽しみにつながるということです。

その後、Aさんのもとへ、ご自宅でも使用していたお醤油などをご家族が持ってきてくださりました。

好みの味付けがされた料理を食べられるようになってからは、Aさんは全量摂取できるようになりました

また、食事への集中が途切れないよう柄のないテーブルクロスに変え、大きな生活音が出ないようにするなど、環境も整えました。

こうしたことで、落ちついて食事ができるようになったのです。

冷蔵庫と、フライパンを持った女性の料理人と、腕を組んで笑顔の高齢男性

最後に一言

ここまでお話してきたように、認知症の方の食事に関する問題が起きた場合、思わぬことが原因となっていることがよくあります。

そのため、介護者は普段からの様子や生活歴など知ったうえでケアすることが大事です。

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