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第110回

【事例で解説】認知症の嫉妬妄想の原因と対応方法!配偶者の浮気を疑ってしまう心理とコミュニケーションのコツ

最終更新日時 2019/09/19
#親の介護 #老人ホームへの入居
今回は、レビー小体型認知症の方に生じやすい「嫉妬妄想」についてお話しします。嫉妬妄想になると、「配偶者が浮気をした」などと思い込んでしまい、配偶者の方を責めてしまうことがあります。ご家族としては、認知症が原因だと理解はできても、やはり「浮気をした」などと疑われると心的負担はかなり大きいものです。

こんにちは。デイサービスで看護師として勤務している、認知症LOVEレンジャーの友井川 愛です。

今回は、レビー小体型認知症の方に生じやすい「嫉妬妄想」についてお話しします。

嫉妬妄想になると、「配偶者が浮気をした」などと思い込んでしまい、配偶者の方を責めてしまうことがあります。

ご家族としては、認知症が原因だと理解はできても、やはり「浮気をした」などと疑われると心的負担はかなり大きいものです。

嫉妬妄想をする方には、「自分は配偶者に関心を持ってもらえている」「孤独ではないんだ」と思ってもらう対応をすることがポイントです。

それでは事例を交えながら、対応方法をお伝えしますね。

認知症の方の嫉妬妄想とは

認知症の妄想は、以下の4つが代表的です。

  • 物盗られ妄想…財布や通帳などを盗まれたと思い込む
  • 見捨てられ妄想…家族に見捨てられたなどと思い込む
  • 嫉妬妄想…配偶者が不貞をしたと思い込む
  • 迫害妄想…敵対する誰かに襲われると思い込む

今回の「嫉妬妄想」は、先述したようにレビー小体型認知症の方に多くみられるものです。

配偶者が浮気をしていると思い込み、大声で責め立てたり、周囲の人に言いふらしたりするような状態になります。

嫉妬妄想が発生する原因としては「妄想性誤認」が考えられており、妄想を伴う見当識障害(いつ・どこで・だれが…などがわからなくなる状態)が原因と言われています。

また、嫉妬妄想が起こる原因としては、劣等感や焦燥感という精神的な状態も関係していると考えられています。

ご本人は不安だからこそ疑ってしまう

例えば、配偶者の方はいつも通りに出かけただけなのに、突然ご本人から「浮気をした」と疑われてしまうと困ってしまいますよね。

ただ、認知症の方は見当識障害があるために、配偶者の方よりもずっと長い時間、外出しているように感じていることがあるのです。

そのため、「こんなに長時間も出かけるなんて怪しい、浮気をしているはずだ」と思い込んでしまうわけです。

嫉妬妄想が男性に多い理由は?

嫉妬妄想は、一般的に男性に多いとされています。

その理由としては、仕事に打ち込んできた男性が、定年退職をきっかけに生活が変わってしまうことが影響していると考えられます。

具体的には、生きがいだった仕事がなくなったり、仕事を通じての人間関係が薄れて孤独を感じたりすることによって、気持ちが不安定になるケースなどが挙げられます。

そして自信を失ったご本人は、「妻から見捨てられるのではないか」という劣等感などを抱き、「妻が浮気をしているかもしれない」と考えてしまうようになるのです。

否定するときには言い方に気をつけましょう

嫉妬妄想によって「浮気をした」などと責められてしまうと、配偶者の方としては強く言い返したくなると思います。

ただ、ご本人は意地悪でそんなことを言っているのではなく、本当に浮気していると思い込んでしまっています。

そのため、配偶者の方が強く否定してしまうと、「こんなに否定なんて、怪しい」とさらに感情的になってしまうことがあるのです。

そんなときは、難しいとは思いますが、配偶者の方は落ち着いて対応しましょう。

「どうしたの?」と不安な気持ちに耳を傾けたり、「そんなことないですよ」など穏やかに対応したりすると、ご本人も次第に落ち着いてきます。

それでは、ここからは事例をもとに説明していきましょう。

嫉妬妄想の事例 浮気を疑ってしまうAさん

70歳男性で認知症のAさんは、若い頃から真面目な性格でした。

公務員をしていましたが、定年を迎えて退職してからは自宅で日々を過ごすようになりました。

現役で仕事を頑張っていた頃のAさんにとって仕事は生きがいであり誇りでした。

家族のために仕事に全力で取り組んでおり、充実した日々を送っていたのです。

しかし、定年退職して以来、もともと趣味もなく仕事人間だったAさんは、自宅で単調な生活を過ごすばかりでした。

特に何をするでもなく、部屋でテレビを見るなどして過ごし、外出もほとんどしていません。

一方、妻のBさんは専業主婦で、近所付き合いも良く明るく社交的な方でした。

身体を動かすのも好きだったため、週2回はテニスを楽しんでいます。

ある日、Bさんがテニスの練習から自宅に帰ってくると、Aさんは不機嫌そうな表情で玄関に出てきました。

Aさんは、「今何時だと思ってるんだ?」「どこに行っていたんだ?」と、いきなり大声でBさんに怒鳴ってきたのです。

Bさんは驚いて、「どうしたのですか?テニスの練習に行ってくると言ったじゃない?」と答えました。

すると、Aさんは「そうか」と言い、部屋に戻ってしまいました。

Bさんは、Aさんがどうして急に大声で怒鳴ったのか、理由がわからず困惑しました。

ただ、このときはちょっと機嫌が悪かったのだろうと思うことにしたのです。

しかし、その後もAさんは、Bさんが外出するたびに「どこに行ったのか?」「誰と会っていたのか?」と尋ねてきて、そして、とうとう「Bさんが浮気をしている」と言い出しました。

もちろん、実際に浮気なんてしていないので、Bさんは困りながらも、外出するときはなるべくAさんと一緒に出掛けることにしました。

テニスに行くときには、必ずその旨を伝え、連絡先も事前に伝えるようにしました。

また、Aさんとの会話を今まで以上に増やすように心がけて、避けてしまうような態度をとらないように気をつけるようにしました。

すると少しずつ、Aさんからの嫉妬妄想が減ってきたのです。

このことから、Aさんの嫉妬妄想は、生活が変化したことによる不安や、妻のBさんへの寂しさが原因だったということが窺えます。

スキンシップやコミュニケーションが効果的

嫉妬妄想が起こってしまった方への対応方法としては、事例のBさんように、日頃からご本人とコミュニケーションをはかることが重要です。

配偶者の方は、常にご本人に関心があることを伝え、手や肩などに触れるなどスキンシップをとりながら話をすると良いでしょう。

さらに、ご本人がいる環境が閉鎖的にならないように工夫をするのも効果的です。

例えば、なるべく家の中に閉じこもりがちにならないように、デイサービスに通うなどして他者とコミュニケーションをとるようにするのも有効です。

そのほか、認知症が発症する前から、仕事以外のお友達や、近所の方などとコミュニケーションをとる環境があると良いでしょう。

また、外出する際はできる限り本人と一緒に行き、どうしても一人での外出する場合は、必ず行先を伝えましょう。

嫉妬妄想が起こると、時間の経過に伴って、ご本人が妄想を信じ込んでいくことが多くあります。

そうなると、どんなに家族が否定しても疑念は払拭できません。

できるだけ早い段階で、日頃からご本人を不安にさせないように寄り添うことが必要です。

悩みは抱えず損談を

嫉妬妄想のある方のなかには、興奮気味になり、なかなか怒りがおさまらない場合があります。

こうしたときは、ご本人がいる場所から一旦離れて様子をみると、次第に興奮がおさまってくる場合があります。

また、同じ嫉妬妄想のある方でも、配偶者を責め立てない方もいます。

例えば、配偶者や家族ではなく、近所の方や施設スタッフに訴えることがあるのです。

そのような場合には、事前に周囲の方に症状があることを説明しておくと良いでしょう。

嫉妬妄想の症状を急になくす、ということは難しいですが、認知症の方とコミュニケーションをとり、不安に感じている原因を取り除くことで改善していくことが少なくありません。

それでも配偶者の方にとっては、やってもいないことを繰り返し責め立てられるので、精神的にもつらいと思います。

対応が難しいと思ったら一人で抱え込まずに、配偶者の方や友人、ケアマネなどに相談してみてくださいね。

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