はじめまして。福岡県北九州市で「ケアプランセンターはぴるす」という事業所を運営している大内田と申します。
介護相談と終活相談をメインに事業を行っていますので、ご相談などがありましたら、お気軽に問い合わせください。
今回は、「買い物難民の解決策」についてお話いたします。
高齢者が自主的に行っている取り組み
買い物難民は過疎地を中心に多くの地域で問題になっていますが、弊社がある北九州市八幡東区もそのうちのひとつです。同地区は平坦地の少ない地域で、ほとんどが高台になっています。
若いときに製鉄所で勤務していた人たちが、「高台でもいいから」とこぞって家を建てて、そこから職場に通っていた地域なのです。そのため、高台に住宅密集地があり、高齢者もそこに多く住んでいらっしゃいます。家が階段を50~100段昇ったところにあるというケースもよくあります。
北九州市では「おでかけ交通」という取り組みを実施し、交通難民をマイクロバスで自宅や近所まで送迎したりしています。
しかし、マイクロバスの乗り場までは、自宅から坂や階段を昇って向かわなければなりません。時折、移動スーパーも来てくれますが、やはり自宅からそこまでの移動が大変なのです。
そこで、皆さんがどうしてるかといえば、「生協」を利用する方が多くいらっしゃいます。ただ、生協では自宅まで配達してくれる場合もありますが、基本的には配達のトラックまで取りに行かないといけません。また、注文する紙に書いてある字が読みにくいといった問題もあり、やはりスーパーを使用せざるを得ない人たちもいます。
スーパーの中には、2,000円以上買い物をすると無料で自宅まで配達してくれるサービスもありますが、そもそもスーパーまで行くのが大変です。そのため、複数人でタクシーに乗り合わせで行ったりされる方もいらっしゃいます。
今では「ネットスーパー」もありますが、70代くらいの方だと「なんとかインターネットを閲覧できる」くらいの知識しかありません。さらに80代以上の方になると、パソコンなどがまったく使えないケースも少なくありません。
ヘルパーを活用した買い物代行
こうした問題を解決するのが、「介護保険」です。介護保険制度は「自立支援」が大前提なので、基本的には「ヘルパーさんとの買い物同行」になるんです。
ただこの場合は、ヘルパーさんと一緒にタクシーに乗ってスーパーまで行かないといけません。例えば「ヘルパーさんの乗ってきた車に同乗させてもらう」といったことは、安全上の理由からできないのです。
そんなときにケアマネがよく行っているのが、「天候不良時や体調不良時は、買い物代行」とケアプランに書いておきます。そうすると、介護保険でヘルパーさんに代理で買い物をしてきてもらうことができるようになるからです。
ケアプランに前述のようなことが書かれてあるかどうかは、よく見ておいた方がいいと思います。
車椅子で移動する方の場合には、「介護タクシー」というものもあります。しかし、基本的には「ヘルパーさんとの買い物同行」でないと介護保険では認められません。
ヘルパーさんは、ほかにもさまざまな支援を行っています。例えば、「認知症の人が冷蔵庫の中の賞味期限切れのものを整理する」といったことです。
その際、ケアマネはケアプランに「支援者と一緒に冷蔵庫の整理ができる」「支援者と一緒に献立を考えることができる」などの目標設定を記します。
そうした目標の一環としてヘルパーさんに買い物代行をお願いするという、プランの作成方法もあります。
デイサービスの買い物支援
ケアマネによる買い物難民への対策は、ヘルパーさんの活用だけではありません。
デイサービスでも買い物同行のサービスを行っていることがあります。例えば、デイサービス施設に移動スーパーが週1回やってきたり、レクリエーションの一環として買い物ツアーに出かけたりといったことです。中には、「必ず買い物に連れて行くこと」を特徴にしているデイサービスもあります。
また、地域の商店と連携して行うケースも少なくありません。地域のクリーニング屋さんやお茶屋さんなどが連携して買い物が困難な高齢者に対するサービスを展開しているのです。
デイサービスの利用中に買ってきたものについては、帰りの送迎の際にスタッフが自宅まで持ってきてくれることが多いです。「食事の確保」という名目だけであれば、デイサービスの帰りに夕食として食べるお弁当を持たせてくれるところだってあります。
こうした取り組みができる理由は、買い物をレクリエーションという「日常生活動作訓練」の一環として位置づけているからです。
ケアマネに相談する際に必要な心構え
2021年度から半年に一度、「担当しているケアプランセンターが紹介したヘルパーステーション・デイサービス・福祉用具貸与事業所について、上位3事業所がどこなのか?」ということを、利用者や家族に説明することが義務づけられました。
さらに、「なぜそのヘルパーステーションやデイサービスなどの事業所を利用者や家族に紹介したのか?」ということについてケアマネに説明を求めることができるようになりました。
ケアマネが紹介した事業所やケアプランの内容について、利用者や家族が精査できるようになったのです。
ケアマネに相談する際は、しっかりと「○○だから、△△したい」といった意向を伝え、それに合った事業所を選んでもらうといったことが必要になります。
買い物難民の解決策として、介護保険制度を利用することは非常に有効です。その一方で、利用者や家族は、具体的にどんな点に困っているのかをケアマネに伝えられるようにしておく必要があるでしょう。