訪問介護は、在宅介護をされている方にとって最も身近な介護保険サービスですよね。
しかし、介護保険サービスのなかでも約束事の多いのがこの訪問介護、つまり自宅にヘルパーが来て介護を行うサービスなのです。
家事を行う「生活援助」、体の介助を行う「身体介護」など、サービス内容はどちらもイメージがしやすいと思いますが、単位の計算方法やサービス時間など、ややこしい部分については間違って認識されていることもたくさんあります。
なかでも生活援助については、「同居家族がいる場合は利用できない」と思い込み、はじめからサービスの利用を諦める方がたくさんいます。
では、「同居家族がいても生活援助を利用して良いんですか?」と聞かれると、イエスともノーとも即答できないのが正直なところ。
今回は、同居家族がいても生活援助を受けられる場合を説明していきますね。
一人暮らしでなくても生活援助は利用できるケースはある
そもそも、生活援助は一人暮らしの方しか利用できないと思われがちですが、要介護者のケアプランを作成するときの書類には「生活援助中心型の算定理由」という欄があります。
そこには、「1.一人暮らし 2.家族等が障害、疾病等 3.その他( )」と記載されており、ケアプランに生活援助を組み込んだ場合、当てはまる部分に〇をつけるのです。
この項目があるということは、すなわち"一人暮らしでなくても生活援助は利用できる"ということ。
それでは何故、“家族がいると生活援助を受けることができない”という誤解が多いのかと言うと、誰でも簡単に生活援助を利用できるとなると、ヘルパーが"家政婦扱い"になる可能性があるからです。
つまり、一人暮らしでない場合、生活援助を利用するためのしっかりとした理由付けが必要になるのですね。
例えば、家族等が障害、疾病等があれば比較的にサービスの利用はスムーズです。
家族に家事ができる人がいるなら、その人にしてもらえば良いというのが利用するまでの難関のため、家族が病気や障害を抱えているケースであれば利用ができる可能性が高いのです。
このように、同居家族がいても利用者のために家事ができない状態が明確ならば、ケアマネがその旨を必要書類に記載し、プランに位置づけることができます。
高齢者世帯でどちらも要支援・要介護の場合は要注意
家族がいても生活援助を利用したいケースとして多いのが、高齢者世帯でどちらも要支援・要介護認定を受けている方々です。
介護保険のサービスは個人単位なので、夫婦そろって要介護状態でも、妻の生活援助が妻のケアプランで、夫の生活援助は夫のケアプランで作成しなくてはいけません。
例えば掃除の場合、各々が使う自室などは話が簡単ですが、お風呂場やトイレ、台所などの共有部分は、どちらが多く利用しているかを検討し、どちらかのケアプランに組み込むのです。
また、この共有部分についてのサービスは、ケアマネの判断だけではなく、保険者である市町村の判断を仰ぐことが多くあります。
介護保険サービスの最終的な決定権は保険者にあるので、もしそこで利用を認めてもらえなければ介護保険での利用はできません。
よって利用を開始した後になって、それは「保険が効きませんよ」と言われると大変なので、あらかじめ保険者に確認を取っておくわけです。
元気な同居家族がいる場合でも利用できるケースがある!
では、みなさんが一番気になるのが、同居家族がいて元気なんだけど生活援助は利用できるか、だと思います。
結論から言いますと、“必要があれば”できます。
この見解を間違えて、元気な家族がいると始めから生活援助を認めないケアマネや保険者がいるようですが、それに対して厚労省からは「きちんとアセスメントしたうえで必要であれば利用するように」という指導も出ています。
ただし、元気な同居家族がいる場合の生活援助の利用は、ケアマネがかなり厳しく検討し、それでも必要だと認められた場合だけ可能だと思った方が良いでしょう。
それでは、ご家族がいても生活援助を受けることができるケースと、利用できるサービスの例を挙げてみましょう。
・家族が昼間は仕事のために外出している場合の、昼食調理や配膳、洗い物
・失禁が多く、トイレが汚れていて滑る危険性がある場合のトイレ掃除と、その都度の洗濯。
・日中独居(介護が必要なのに日中は家族が全員外出していて、実質的には一人暮らしになっている高齢者)の場合の、ポータブルトイレの掃除。
こういった理由であれば利用することが可能ですが、それ以外の買い物や掃除、洗濯だと、家族が自分の分を行うときに一緒に行えば良いという解釈になると思います。
ちなみに、元気なご家族がいる場合で生活援助をケアプランに取り入れる場合も、後々になって保険者に介護保険を利用できないと言われないように、事前に確認することが多いです。
その他、介護疲れが著しくて共倒れの危険性がある場合も、どうぞご利用くださいというのが厚労省の通達に記されています。
最後に一言
ここまで、同居家族がいても生活援助が受けられる場合についてご説明しました。
私個人の意見としては、制度をもっと緩くすることでと思うのですが、法的にまだまだ厳しい部分が多く残っています。
ただ、ご家族は“できないことはできない”ときちんと主張し、必要なサービスは利用するべきだと思います。
困っている場合は始めから諦めず、ケアマネージャーに相談してみてくださいね。