こんにちは。ケアマネジャーの小川風子です。
今回は、「介護保険サービスの現場に監視カメラは必要か」というテーマでお話しします。
一部の高齢者施設では監視カメラがついている
今の時代、賛否はありますが巷には「監視カメラ」がたくさん設置されています。自動車にドライブレコーダーをつけるのも一般的になってきました。いろいろな証拠が映像として残るために犯罪抑制の効果もあると考えられる一方で、プライバシー保護の観点から不快に思われる方も少なくない監視カメラ。実は介護施設でも、部屋の中にカメラを設置しているところがあるのです。監視カメラを好まない人はたくさんいるのになぜでしょうか。
監視カメラと聞くと、「プライバシーの侵害だ」と思われる方が多いと思います。しかし私個人の意見を先に述べますと、「どんな場所でも介護サービス提供時の映像を残してほしい」と思っています。それこそケアマネ訪問時もお願いしたいくらいです。
その理由を、いくつかのトラブルの事例とともに述べていきますので、実際に実行することは難しいとしても、皆さんも監視カメラの必要性を少し考えていただければと思います。
監視カメラは事態の究明や事故防止に使える
介護職員による高齢者の方への虐待や暴力による事件を、耳にされた方は少なからずいると思います。同じ介護職として本当に許せない出来事ではありますが、ごくごく一部の非常識な職員の行為とはいえ、残念ながらこういった事件は「今後一切起こらない」とは言い切れません。
そういった事件の多くは、ほかの職員がいる場所で起こることはまずなく、誰の目にも止まらない場所で起きています。デリケートな介護もあるので1対1の密室で介護することはザラにありますが、そういった場所で意思疎通の難しい方に誰かが良からぬことをした場合、よほどでなければ証拠は残らないのです。
そんなときに、監視カメラがあればどうなるでしょうか。何かあった場合に証拠が残るのはもちろん、それ以前に「カメラがあるから悪いことはしないでおこう」と思い、良からぬことへの抑止力になるのではないでしょうか。「誰かが見ているから悪いことはしないでおこう」という考え方の介護職員がいること自体への問題は置いておいて、設置することにより防げる事件があるのではないかと思うのです。
また、監視カメラは事件の究明や抑止力の以外にも役に立つことが多々あります。例えば、介護施設では介護職員の知らないうちに入居者が転倒していたり、打ち身があったりすることがあります。介護職員がどれだけ気をつけていても、事故をすべて防ぐことは難しいです。
もし介護職員の知らないところで事故が起こった場合、監視カメラが記録していればどうやって転倒したかがわかります。すると、どこを負傷したのか(頭をぶつけていないかなど)がわかるうえに、転倒の原因となったものを片付けるなどして、次の事故を防ぐための対策も行えるわけです。
訪問介護サービスが利用者との間で最もトラブルが多い
さて、介護施設での監視カメラのメリットは前述した通りで、実際にカメラを設置しているところもちらほらあるわけですが、そうはいかないのが「在宅介護」です。
サービス利用者の方の中には「自宅にカメラを設置して、介護事業者の仕事ぶりを撮るのは介護事業者の方はいい気持ちがしないのでは?」と思われる方もいると思います。しかし私個人の意見としては、「嫌な気持ちはしない」です。それどころか、サービスを行っているときは、常に監視カメラでその様子を録画してほしいとすら思っています。今現在、居宅ケアマネジャーとして仕事をしていますが、そのときの会話もすべて録音してほしいですね。
その理由は、サービス利用者の家で1対1の介護や会話をしているとき、さまざまな思い違いや事件が起きるからです。
トラブルを防ぐための監視カメラ
例えば、利用者の家にヘルパーが1人で訪問して1対1の介護をする訪問介護ですが、おそらくすべての介護サービスの中で、最もトラブルが多いです。私もケアマネジャーとして働くうえで、さまざまなクレームをサービス利用者の方から受けます。一例をお話しすると、下記のような内容です。
- ものやお金がなくなった(ヘルパーが持っていったに違いない)
- 頼んだことをしてくれない
- 暴言を吐かれた
- 何の仕事もしない
- ものを壊した など
その場に私がいたわけではないので、本当かどうかはわかりません。もしかしたら事実なのかもしれないですし、サービス利用者の方の勘違いなのかもしれません。このようなクレームを受けるたびに事業所の責任者に報告をするのですが、何とも嫌な仕事です。
もちろん多くの場合、「ヘルパーはそんなことしません」というのが返答であり、その後は事業所と利用者の方で話をしてもらうことになります。このとき、まったく心当たりのないことを言われてショックを受けるヘルパーが存在しているのが現実です。もし自宅に監視カメラがあり、サービスを行っている様子を撮影していたら事実がわかるわけですから、利用者さんはもとより、ヘルパーにとってもメリットは大きいでしょう。
監視カメラの導入で解決できる問題は多い
ちなみにですが、私も利用者さんに説明したことを「聞いていない」と言われたり、逆に言ってもいないことを「言った」と言われることが少なからずあります。そうでなくても、説明したことを忘れられるのなんてよくあることです。
だから、「話をしているときにそれを録音して、あとから聞きなおしてくれたらいいのに…」と本気で思います。この先スマートフォンなどが利用者さんにも普及していけば、実際に「動画を撮る」「録音しておく」といったことが簡単にできるようになるので、身近になることを期待しています。
もちろんプライバシーの問題もありますし、「誰が設置するのか」「その費用は誰が負担するのか」といった問題もたくさんあります。なのですぐに監視カメラが普及するとは思ってはいませんが、私個人としては「福祉用具サービスで監視カメラをレンタルできるようにしても良いのでは?」とすら思っている次第です。