Q.7 介護ロボットについて、もう数年前から話題に上っているにも関わらず、一向に実用化される気配を感じられません。実際のところ、経産省的には介護ロボットの開発や導入についてどのような温度感なのでしょうか?(アラン・介護職員)
私が働いている施設でも、人材不足はかなり深刻な問題になっています。少しでも業務を効率化して、少人数でもまわせるようにしたいと思っていますが、そこで期待したい介護ロボット…でも、なかなか実用化(あくまで実用的に業務に使えるレベル、という意味で)しませんよね。介護ロボットの導入について、役所的には一体どのように考えているのでしょうか?
少なくとも経産省は本気です。その熱意が続くかどうかは、民間企業にかかっていると言えるでしょう
“現在”経産省が介護ロボットに関して力を入れていることは間違いありませんが、そもそも経産省は熱しやすく冷めやすい官庁なのであんまり本気にしすぎてはいけません。
厚生労働省と経済産業省はまったく性格が異なる省庁です。人間で例えるならば厚生労働省が寡黙で誠実な青年だとしたら、経済産業省は雄弁で活発なナンパ男といったところです。それは仕事の範囲にも表れています。厚生労働省が決められた労働・社会保険分野の制度を粛々と運営しているのに対して、経済産業省はエネルギー、中小企業、知的財産、通商交渉、 IT産業や製造業の振興、とおよそ企業活動が関わるありとあらゆるところに顔を出します。
一方で職員数を見ると厚生労働省が30,000人弱なのに対して、経済産業省は7,500人程度しかいません。介護ロボットに限定したら、おそらく経済産業省の担当官は50人もいないでしょう。このように経済産業省の方が所管している範囲が広いのに職員数がはるかに少ないわけですが、経済産業省は外部の企業と連携することでこの広い所管範囲の業務をこなしています。
通常は経済産業省の指示のもとで企業が業界団体を作って、そこに予算を獲得して共同でプロジェクトを進め、一方で経済産業省は他省庁に制度改正の働きかけをする、という政策の進め方をします。そのため経済産業省自体が責任をもって最初から最後まで何かを完遂するということはほとんどありません。結局は企業のやる気に左右されるわけです。
介護ロボットに関する政策もまさにこの枠組みに当てはまります。表向きは経済産業省が進めているように見えても、結局のところ介護ロボットが実現・普及するかどうかは、経産省のパートナーとなっている企業次第というところもあります。なので最初に言った通り少なくとも“現在”は経産省は介護ロボットに本気ですが、その熱意が今後とも続くかどうかは別問題ということに注意する必要があります。