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第182回

【プロ監修】肥厚爪の正しい切り方を解説!ニッパー型爪切りの安全な使用法や爪が厚くなる原因と対策も紹介

最終更新日時 2024/08/29
目 次

高齢者の肥厚爪とは?原因と症状を理解しよう

肥厚爪の定義と高齢者に多い理由

高齢者の足のケアは、介護現場において重要な課題の一つです。特に注目すべきは「肥厚爪」と呼ばれる症状です。肥厚爪とは、爪が通常よりも厚くなり、硬化した状態を指します。

在宅医療マッサージ株式会社の調査によると、介護者の75%が「被介護者が肥厚爪になったことがある」と解答しているほどです。
被介護者が肥厚爪になったことはありますか?

肥厚爪とは、爪が通常よりも厚くなり、硬化した状態を指します。この症状は高齢者に多く見られ、適切なケアが必要とされています。

肥厚爪が高齢者に多い理由は、主に加齢による身体的変化にあります。

高齢者の爪は若年層と比較して成長速度が遅く、一般的に1ヵ月あたり約0.5mm程度しか伸びません。これは若年層の半分以下の速度です。成長が遅いことで、外部からの刺激や圧力の影響を長期間受けやすくなり、結果として爪が徐々に厚くなっていきます。

また、加齢に伴う爪の水分量の減少も肥厚爪の一因となっています。爪の乾燥は硬化を促進し、厚みを増す要因となるのです。

肥厚爪の主な原因

肥厚爪の発生には、いくつかの要因が関与しています。
 

加齢による生理的変化

年齢を重ねるにつれて、爪の成長速度が遅くなり、水分量も減少します。これにより爪が乾燥し、厚くなりやすい状態になります。加齢は避けられない要因ですが、爪の生え際をオイルやクリームで保湿することで症状を軽減できる可能性があります。

不適切な靴の着用

足に合わない靴や、つま先が狭い靴を長期間使用することで、爪に過度な圧力がかかります。この継続的な圧力が爪の肥厚化を引き起こす主要な要因の一つです。介護施設では、入居者の靴のフィッティングに注意を払うことが重要です。

画像提供:イラストAC

深爪

爪を短く切りすぎることにより爪床に圧力がかかり、爪が厚くなる原因になります。介護現場での爪切りの際は、適切な長さを保つよう注意が必要です。

爪のケア不足

定期的な爪のケアを怠ると、爪と皮膚の間に角質(老廃物)が溜まり、爪が厚くなることがあります。特に自身で爪のケアが難しい高齢者に対しては、介護者による定期的なケアが重要です。

放置するとどうなる?肥厚爪の危険性

肥厚爪を放置することは、高齢者の生活の質(QOL)に深刻な影響を及ぼす可能性があります。介護施設の運営者や介護従事者は、以下の危険性を認識し、適切な対策を講じる必要があります。

まず、肥厚爪の状態では厚くなった爪が靴に当たり、歩行時に痛みを感じることがあります。これにより、外出を控えるようになり、活動量が低下する可能性があります。活動量の低下は、筋力の低下や認知機能の低下にもつながる恐れがあります。

感染リスクの増加も懸念されます。肥厚爪の隙間は細菌やカビが繁殖しやすい環境となります。これにより、爪周囲炎や爪白癬(水虫)などの感染症のリスクが高まります(※)。感染症は高齢者の健康状態を著しく悪化させる可能性があるため、早期の対応が重要です。

※あくまでも肥厚爪は爪周囲炎の一要因です。

爪の変形と剥離も起こりやすくなります。放置し続けると、爪が巻き込んだり、剥がれたりする可能性があります。これらの症状は痛みを伴い、日常生活に支障をきたす原因となります。

転倒リスクの増加も重要な問題です。「認知症と原薬の相関性およびフットケアによる転倒予防の効果」によると、適切なフットケアを受けている高齢者は、そうでない高齢者と比べて転倒リスクが約20%低くなるという結果が出ています。肥厚爪による歩行の不安定さは、転倒リスクを高める要因となります。

これらの危険性を考慮すると、肥厚爪の早期発見と適切なケアが、高齢者の健康維持と介護予防において極めて重要であることがわかります。介護施設では、定期的な爪のチェックとケアを日常的なルーチンに組み込むことが推奨されます。

高齢者の肥厚爪を安全に切るためのコツ

準備するもの:適切な道具の選び方

高齢者の肥厚爪のケアを適切に行うためには、正しい道具の選択が重要です。介護施設や在宅介護の現場で使用する道具は、安全性と効果性を両立させたものを選ぶ必要があります。以下に、推奨される道具とその選び方を説明します。

①爪切り

肥厚爪のケアにはニッパー型の爪切りが最適です。通常の爪切りよりも力を入れやすく、厚い爪も切りやすい特徴があります。選ぶ際は、刃の質がステンレス製で錆びにくいもの、グリップが握りやすく滑りにくい素材のもの、刃先の形状がストレートなものが安全です。

画像提供:イラスト AC

②爪やすり

爪の形を整えるために使用します。肥厚爪のケアには、複数の粗さの面があるものが便利です。材質は耐久性の高いサファイアやガラス製のものが推奨され、粗い面から細かい面まで複数の粗さがあるものを選びます。形状は平板タイプよりも握りやすいスティックタイプが扱いやすいでしょう。

③保湿クリーム

爪と周囲の皮膚を保湿するために使用します。成分は尿素やグリセリンなど、保湿効果の高い成分を含むものを選び、刺激性の低い無香料・無着色のものが望ましいです。また、べたつきが少なく、すぐに浸透するタイプが使いやすいでしょう。

④消毒用アルコール

爪切りやすりの消毒に使用します。濃度70%以上のエタノールを含むものを選び、スプレータイプが使いやすいでしょう。

⑤使い捨てのおしぼり

爪を温めたり、切った後の清掃に使用します。タオルで代用することも可能ですが、その場合はタオルを介しての感染が内容に対策を講じる必要があります。

爪を柔らかくする:切る前の重要ステップ

肥厚爪は非常に硬く、そのまま切ろうとすると力が入りすぎて怪我をする可能性があります。そのため、入浴後や足浴後など、爪が柔らかくなっているタイミングで切るのが最適です。入浴や足浴後は爪が水分を含んで柔らかくなっているためです。介護施設では、入浴スケジュールに合わせて爪切りの時間を設定することが効率的です。

ただし入浴が難しい場合や、ベッド上での爪切りが必要な場合は、シャボンラッピングという手法を取るのがおすすめです。

「シャボンラッピング」とは、水をほとんど使わず、泡で手や足を包み込んで洗浄する方法です。物品もそろえやすく、場所も選びません。 この方法につきましては、以前他の記事でご紹介したことがありますので是非合わせてご確認ください。

重いバケツはもう不要! 全身浴できないときの足浴・手浴法「シャボンラッピング」を伝授

マッサージを行うのも効果的です。爪とその周辺をやさしくマッサージすることで、血行が促進され、爪が柔らかくなります。爪の根元から先端に向かって、円を描くように優しくマッサージします。1〜2分程度行い、力を入れすぎないよう注意します。

これらの方法を組み合わせることで、より効果的に爪を柔らかくすることができます。

肥厚爪の正しい切り方と形の整え方

肥厚爪の正しい切り方を解説します。

①横方向に切ります

通常の爪切りと同じように横方向に切ります。一度に大きく切らず、少しずつ切っていくことが重要です。爪の両端は直角に切ります。巻き爪を防ぐため、爪の両端は直角に切り、角を丸く切りすぎないよう注意します。

②爪やすりで爪の形を整えます

粗い面から始め、徐々に細かい面に移行して爪の表面を滑らかにします。爪の縁に沿って一方向にやすりをかけ、往復させると爪が割れやすくなるので注意が必要です。爪の先端を整える際は、爪の先端を軽く丸めることで、引っかかりを防ぎます。ただし、極端に丸くせず、わずかに丸みをつける程度にとどめます。

③爪の長さを確認します

爪の長さは、指の先端から1〜2mm程度残すのが適切です。短すぎると痛みの原因になり、長すぎると靴に当たる可能性があります。爪の厚みを均一にすることも大切で、爪の表面に凹凸がある場合は、爪やすりで均一にします。ただし、厚みのある部分を一度に薄くしすぎないよう注意が必要です。

④爪切り後のケアをします

まず清掃を行います。爪の破片をきれいに取り除き、柔らかいブラシや綿棒を使用して、爪の周りをきれいにします。次に消毒を行います。爪周りをアルコール濃度70%以上の消毒液で軽く拭きます。その後、保湿を行います。爪と爪周りの皮膚に尿素やグリセリンを含む保湿クリームを塗り、軽くマッサージするのがよいでしょう。

高齢者の肥厚爪切りの注意点と専門家に相談すべき症状

肥厚爪切りの注意点

高齢者の肥厚爪を切る際には、いくつかの重要な注意点があります。

①深爪を避ける

深爪は爪周囲炎や陥入爪の原因となり、高齢者の足の健康に深刻な影響を与える可能性があります。爪の先端は指の先端と同じくらいかわずかに短いくらいに変更のうえ、爪の白い部分(遊離縁)を完全に切り取らないようにします。また、爪の両端(角)はしっかり残すことも大切です。

②力の入れすぎ

肥厚爪は硬いため、力を入れすぎてしまいがちですが、これは爪や周囲の皮膚を傷つける原因となります。爪を柔らかくする前処理を十分に行い、爪切りの刃を確実に爪に当て、ゆっくりと力を加えます。一度に切ろうとせず、少しずつ切っていくことが大切です。

爪の角を残すことも重要です。爪の両端(角)を丸く切りすぎると、巻き爪の原因になる可能性があります。爪の角は直角に近い形で残し、角を丸く削りすぎないよう注意します。また、爪の両端が皮膚に食い込んでいないか確認することも大切です。

③爪の状態を確認する

爪切りの前後で爪の状態をよく確認し、異常がないかチェックすることが重要です。変色や変形がないか、爪周囲の皮膚に発赤や腫れがないか、痛みや違和感がないか本人に確認します。

自分で切るのが難しい場合の対処法

高齢者の中には、視力の低下や手先の器用さの減少により、自分で爪を切ることが難しい方も少なくありません。そのような場合、以下の対処法を検討することが重要です。

①家族やデイサービスや訪問介護などのサービス利用

信頼できる家族や介護者に爪切りを依頼する際は、爪切りの方法や注意点を家族や介護者と共有し、定期的なケアのスケジュールを立てます。また、爪切り時の姿勢や環境設定について助言することも大切です。

画像提供:イラストAC

②介護用爪切り器具の活用

レバー式や電動式など、力を入れずに使える介護用の爪切り器具を利用することで、握力が弱い方でも使いやすく、安全性が高い設計になっています。自立支援の観点からも有効な方法といえるでしょう。

これらの対処法を選択する際は、個々の高齢者の状況や好みに合わせて最適な方法を選ぶことが重要です。また、複数の方法を組み合わせることで、より効果的なケアが可能になります。

専門家に相談すべき症状と相談先

高齢者の肥厚爪のケアにおいて、一定の症状が見られた場合は、専門家への相談が必要です。介護施設の運営者や介護従事者は、これらの症状を見逃さず、適切なタイミングで専門家につなぐことが重要です。

専門家に相談すべき主な症状として、爪の色の変化が挙げられます。黄色や黒色に変色している場合、白濁や緑色の変色がある場合は注意が必要です。これらの症状は、爪白癬(水虫)や爪下血腫の可能性があります。

爪の形の変化も重要な兆候です。極端に湾曲している場合、爪が剥がれかかっている場合、爪が著しく厚くなっている場合は、巻き爪や爪剥離症の可能性があります。

痛みや腫れ、出血、そして爪の肥厚が急激に進行した場合には専門家への相談が必要です。短期間で爪の肥厚が著しく進行した場合は、全身疾患の可能性があります。

これらの症状が見られた場合、以下の専門家に相談することをおすすめします。

皮膚科医は、爪白癬や爪周囲炎など、皮膚や爪の疾患全般を診察します。

足病医(ポディアトリスト)は、足や爪に特化した専門医で、総合的な足のケアを行います。特に複雑な爪のトラブルや糖尿病性足病変などの専門的なケアが必要な場合に適しています。

整形外科医は、爪の変形や骨の問題が疑われる場合に相談します。特に巻き爪や陥入爪で外科的処置が必要な場合に適しています。

まとめ

介護施設での実践において重要なポイントとして、定期的な爪のチェックが挙げられます。入浴時や着替えの際に、爪の状態を定期的にチェックし、チェックリストを作成して異常の早期発見に努めることが大切です。

高齢者の肥厚爪の切り方について、その定義や原因から具体的なケア方法、注意点、専門家への相談のタイミングまで詳しく解説しました。この知識を活用し、安全で効果的なケアを心がけることで、高齢者の足の健康維持と、ひいては全身の健康とQOLの向上に貢献できるでしょう。定期的なケアと観察、そして必要に応じた専門家との連携を通じて、より良い介護サービスの提供を目指していきましょう。

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