入浴は、私たちの日常生活に欠かせない活動です。
しかし、高齢者にとっては自立して行うことが困難になりやすい動作の一つでもあります。
入浴動作には、移動・立位バランス・立ち上がり・座り・浴槽のまたぎ・体や髪の洗い・衣類の着脱など、多くの基本的動作能力や応用動作能力が必要とされます。
そこで、身体機能が低下すると困難になりやすい入浴動作を訓練するためのレクを紹介します。自宅でできる簡単な運動やストレッチで、入浴時に必要な筋力や柔軟性を高めましょう。
スムーズな入浴ができるように体の動きをチェックしよう
身体機能や認知機能が低下すると、次のような動作が困難になりやすいとされています。
- 更衣:服を脱いだり着たりする動作。上半身と下半身のバランスや柔軟性、手指の巧緻性が必要
- 移動:浴室まで歩いたり、車椅子やストレッチャーで移動したりする動作。歩行能力や車椅子操作能力が必要
- 洗体:体を洗ったり拭いたりする動作。手足や背中などの届きにくい部位を洗うには、柔軟性や手指の巧緻性が必要
こうした動作をチェックするリストがあるので、下記を参考に体の状態をチェックしてみましょう。
入浴動作チェック表
- 脱衣所・浴室までスムーズに歩けるか□滑りやすい床でもバランスを保てるか
- 椅子から立ち上がったり、座ったりできるか
- 浴槽に足をかけたり、下ろしたりできるか
- 浴槽に出入りするとき、手すりや壁につかまる必要はあるか
- 体や髪を洗うとき手は全身に届くか
上記のうち、できないことが多い場合は、介助が必要になっている可能性があります。入浴時に不便がないか聞いたり、プライバシーを侵害しない程度に観察してみてください。
介助が必要になる前に実践したい簡単レク5選
まだ介助が必要ではないけれど、少し不便が生じてきたときは、簡単にできるレクで訓練してみてください。
入浴動作を訓練することで、筋力や可動域、バランス能力などの身体機能の向上・維持が期待できます。また、入浴動作は心身のリラックスや清潔感にもつながります。
しかし、自宅で入浴動作を訓練する場合は、安全性や効果性に注意しなければなりません。ここで紹介するものは、簡単にできるものばかりなので、ぜひお試しください。
①テレビ体操
テレビ体操とは、NHKで放映されている体操のことで、さまざまな講師による多様なプログラムが実施されています。いずれも専門家による指導のもとで行われているので、効果が期待できる運動です。
自宅でテレビ体操をすることは、入浴動作を訓練するために有効な方法の一つです。テレビ体操は、関節可動域や筋力、バランスなどの身体機能の向上が期待できます。
浴槽に入るためには、足を高く上げる必要がありますし、お湯に浸かるためには、しゃがみ動作が必要があります。テレビ体操では、足を上げたりしゃがんだりする動作が含まれていますので、入浴動作に役立つと考えられます。
テレビ体操をする際には、以下の点に注意してください。
- 自分のペースで無理のない範囲で行いましょう。動作が難しい場合は、軽く動かすだけでも効果があります
- 呼吸を止めないようにしましょう。息を吐きながら動くと楽になります
- 動作の前後に水分補給をしましょう。脱水状態になると筋肉や関節に負担がかかります
- 体調や気分が悪い場合は無理をしないでやめましょう。痛みや違和感がある場合も同様です
②バランスボールチャレンジ
バランスボールを手で押したり引いたりすると、骨盤や背中が動きます。また、バランスボールを足で蹴ったり持ち上げたりすると、下肢や腰部の筋力が鍛えられます。
③ビー玉ピックアップ
ビー玉や豆などを床に散らして拾う運動です。
このとき、足先まで手が届くように下肢を曲げ伸ばしをします。また、指先でつまんだり握ったりすることで、手首や指先の筋力が鍛えられます。
④パラシュート遊び
大小の布を持ち上げたり振る遊びです。一見トレーニングとは思えないかもしれませんが、上肢や肩甲骨周辺の筋力や関節可動域が向上します。
⑤足で引っ張るペットボトルレース
ペットボトルをタオルの上に置き、足でタオルを引っ張って、ペットボトルを倒さずにゴール地点まで運べるかを競うレクリエーションです。
転倒のリスクを抑えられると同時に、集中力や下肢の訓練にもなります。
今回は、入浴動作を訓練するためのレクリエーションをご紹介いたしました。
自宅で簡単にできるトレーニングを行うことで、入浴動作に必要な身体機能の維持や向上が期待できます。
ぜひ、今回ご紹介したレクリエーションを活用して、入浴を楽しめる生活を送っていただければ幸いです。