介護施設では、脳の活性化や身体機能の維持、QOL向上を目的に多くのレクリエーションを行っていますが、料理レクは世代や性別を関係なく楽しめて人気があります。
そこで、今回はご家庭でもできる料理レクの方法をご紹介いたします。
指先の運動や会話が自然にできる
料理レクは、特に認知症やフレイルの予防にもつながるとして注目されています。
- 認知症予防
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献立の作成、材料をそろえる、切る、煮る、盛り付けなどの一連の動作を行うと、脳の司令塔である前頭葉が働くとされています。
また、料理をするときは、指先や手のひらを動かすので、運動野と感覚野が刺激されて、巧緻性※や協調性、集中力が向上して認知症予防に効果があると期待されています。
※手先や指先を上手に使うこと
- プレフレイル予防
- 年齢を重ねると、友人と話をしたり地域活動に参加する機会が減少することがあります。
そのため、プレフレイルの状態になりやすくなりますが、家庭や地域活動で周りの人たちと一緒に調理をすることで、役割や居場所づくりにつながります。外出回数も増えることもプレフレイルの予防に効果的でしょう。

施設で行っている料理レクの例
私が勤務しているデイサービスセンターでも、週1回は利用者さんとスタッフが一緒になって「肉じゃが」「黒豆」などの料理レクを行っています。
料理レク「肉じゃが」
- 用意するもの:肉、ジャガイモなどの食材、調味料、調理器具、電子圧力釜
- 参加人数:5人(要支援~要介護3)
【方法】
- 利用者さんとスタッフが一緒になってジャガイモなどの皮むきや包丁を使って調理します
- 用意できた食材を電子圧力釜に入れてタイマーのセットを行い、スイッチを利用者さんが押します
昼食の提供時に小皿に入れて提供したりご家族にお土産としてお渡ししています。
結果
車椅子の利用者さんには、片手でもできる「食材を混ぜる」「電子圧力釜にスイッチを入れてもらう」などの作業を行っていただいています。
認知症の症状がある方は、スタッフと一緒に料理の献立や後片付けを行ってもらうことで、普段より会話が増え笑顔が見られました。
参加した利用者やスタッフ、ご家族の感想は次の通りです。
利用者
- 数年ぶりに包丁を使って料理ができて楽しかった(女性)
- 料理というと女性がやるというイメージだったが、料理を一緒につくることで普段しない話ができた。料理ができあがったときの達成感もうれしかった(男性)
スタッフ
- 集団レクや個人レクにお誘いしても参加したがらない利用者さんが料理に関心を持って、自ら積極的に参加された
- 利用者さんと一緒に包丁を使って料理をしているときにおいしいつくり方や昔話が聞けて良かった
ご家族
認知症の症状があるので、料理をすることは大変かと思っていましたが、つくった料理を笑顔で持って帰ってきて話をする顔は、発症前と同じような感じです。家族としてはとてもうれしいです
家庭でもできる料理レク
脳梗塞による片麻痺や認知症の症状があっても、できることはたくさんあります。料理レクは食べる楽しみもありますが、料理が完成することで本人の自信にもつながります。
前向きになれることで笑顔が増えたり、会話が増えたりして、本人の生きがいにもなるでしょう。
ご家庭で料理レクを行うときのポイントをご紹介します。
- 本やテレビ番組を見ながら一緒に料理メニューを決める
- 包丁を握って料理をする場合は、見守りをしながらできる範囲はしてもらう
- 料理方法や味付けなどを教えてもらう
料理の場合は、献立や手指を動かすことにより脳内の血流がスムーズになり、巧緻性や集中力、協調性が高まります。
一つの料理をつくる過程で、他の人と話をして笑うことで、精神的にも前向きになります。また、笑うと唾液が多く出るので口腔内の健康維持にもつながるでしょう。
料理はつくる楽しみだけではなく、栄養摂取、社会参加、体を動かすことによって心と体のバランス向上が期待できます。
レクリエーションだけではなく「料理療法」として取り組んでいる施設もあるほどです。ぜひご家庭でも取り組んでみてください!
