高齢の方から「最近ボタンが止めにくい」「以前と比べて、指先の仕事ができない」と言われたことはありませんか?
指先が以前よりスムーズに動かない原因の一つとして、手や指の調整力が低下している可能性があります。
今回は手・指と脳の関係や、指先の動きを維持するための家庭でも手軽にできるレクを紹介します。
手・指の動作が加齢とともに衰える理由
手は、「第二の脳」と呼ばれ指先を動かすことにより血流が高くなり、認知症予防に効果があるとされています。
厚生労働統計協会の『厚生の指標』によれば、50代から「物をすくう」「物をつつむ」「指をひらく」「つまむ」という緻密な動作が低下することにより、認知機能も低下すると指摘されています。
脳の機能には物を持ったり動かしたりする運動野と、物を触って情報を得る感覚野があります。脳の約3分の1に及ぶ領域が手の動きや感覚に使われていますが、加齢とともに脳から手・指に対する命令がスムーズに伝わりにくくなります。
指体操などで親指を刺激することにより脳の運動野、感覚野、前頭前野の血流が増加し、手・指の動作もスムーズになり認知症が改善されたデータもあります。

介護施設でも取り入れられる「化粧療法」
最近では、手・指の動作の維持改善として大手化粧品メーカーが行っている「化粧療法」が注目されています。
「化粧療法」とは、化粧品の瓶を開けることや鏡を使って化粧をすると、化粧をしない高齢者と比べて、握力や手指の動作や握力低下の予防に効果があるという研究結果が出ています。
私が以前勤めていた介護老人保健施設では、レクリエーション時にワーカーさんが女性に「化粧療法」を行ったところ、普段食事介助を必要とする要介護4の女性が、自分から指を動かして化粧する場面がありました。
その後、何回か行うことにより、手・指の動作も改善し口腔ケア時も歯ブラシを自分からするようになりました。それだけでなく、笑顔が増えるようになり、自室から出る時間も増え、他の利用者さんとレクリエーションに参加するようになりました。
家庭でできる手指のトレーニング
家庭でも楽しみながら手・指の調整力が維持・改善ができるレクリエーションを3つご紹介いたします。
- 1.ジグソーパズル
- 完成の図を見ながら小さなピースをつまむ、糊を付ける、貼り合わせるなどの動きにより、脳内の血流が高まります。
- 2.ミュージック指体操
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- 普段聞きなれている歌謡曲を流して気分をリラックスさせます。
- 知っている歌を歌いながら右手はグー、左手はチョキをつくり、リズムに合わせて交互に動かす。歌と手の運動を同時に行うことで口腔機能の維持やデュアルタスク効果で脳が活性化します。
- 3.布や古新聞を利用した小物入れやバッグの作成
- 自宅にある古新聞や布を利用して、ハサミで切ったり、形を整えたりして、出来上がった作品を友人にプレゼントすることにより自分の居場所づくりができます。

今回は、手・指の動作が加齢とともに低下しやすい原因と、自宅でできる簡単なレクリエーションを紹介しました。
手・指がスムーズに動かないことがあれば、脳内の血流があがる体操やレクリエーションをお試しください。