こんにちは!「音でタノしむ、音でラクする」をテーマに、高齢者介護現場での活用を目的とした楽器を開発している「ソニフル」の代表“いまたつ”こと今井竜彦です。
音楽が持つさまざまな「チカラ」を紹介し、介護の現場にたくさんのステキな時間をお届けします。よろしくお願いします!
今回は、認知症予防につながる「音楽×デュアルタスク脳トレ」をおすすめしている、音楽療法士の柳川円先生にインタビューしてきました。
いまたつと一緒に、楽しく学んでいきましょう!
身体機能や認知機能が低下するフレイルが懸念される
2019年末から猛威を振っている新型コロナウイルスは、私たちの生活を大きく変えました。
現在、第2派の発生が懸念されていますが、ワクチンは開発されていません。
厚生労働省によると、80代以上の患者の死亡率は11%と、70代と比べて約2倍以上高いとされています。
そのため、外出を控える人も多い状況です。
しかし、高齢の方が家で過ごす時間が増えると、食欲不振によって栄養摂取量や筋力が低下するという悪循環によって、身体機能や認知機能が低下するフレイルが懸念されます。
そこで今回、フレイル予防にも一役買う「音楽×デュアルタスク脳トレ」を紹介します。
楽しく継続しやすい効果的な脳トレ、それが「音楽✕デュアルタスク脳トレ」
今井:最近は、ゲームだと「脳トレソフト」が人気ですよね。脳トレはなぜ認知症予防につながるのでしょうか?
柳川先生:脳の認知機能は、脳内の血流が悪化することで低下すると言われています。なので、脳に必要なエネルギーとなる酸素を運んでくれる血液の流れを促進すれば、認知機能の低下を防ぐ効果が期待できます。
脳トレを行うことで、脳への血流を促進し、認知機能の向上を促します。そのため、認知症予防になると言われているのです。
今井:なるほど。そして、そこに音楽をプラスするとどんな良い影響があるのでしょうか。
柳川先生:脳トレは基本的に、毎日行った方が認知症予防の効果が高いです。
しかし、「毎日脳トレをやらなければいけない」という義務感のもとで取り組むと、次第にストレスになってしまい、段々と意欲がなくなり、継続が難しくなってしまいます。
そこで、お勧めなのが「音楽を活用した脳トレ」です。
音楽の一番の魅力は、「感情を動かす力」だと思います。いまたつさんは、悲しい音楽を聴いて涙を流したり、元気な音楽を聴いてやる気をもらったりした経験はありませんか。これは、まさに「音楽によって感情を動かされた」という経験です。
「感情を動かす音楽」を活用することで、脳トレ自体を楽しく継続して、脳トレがしたくなる環境づくりができます。
私は、これまで高齢者施設で音楽を使った脳トレを行った経験がありますが、参加者の表情は明るく、笑顔で取り組まれている方が非常に多い印象があります。
今井:脳トレは「楽しくなければ効果が出ない」と聞いたことがあります。音楽と一緒に行えば、毎日楽しくできるのは間違いないですね!
先生の「音楽脳トレ」は、さらに効果を高めるためのポイントがあるんですよね。
柳川先生:そうなんです。それが「デュアルタスク」を用いた脳トレです。
このデュアルタスクというのは、2つの動作を一度に行うという意味で、日本では「ながら作業」「同時作業」と同義語です。
実はデュアルタスクというのは、日常生活に取り組まれることが非常に多いです。
例えば、「ラジオを聴きながら料理をする」「電話をしながらメモをする」などが挙げられます。
きっと皆さんの生活の中でも、たくさんのデュアルタスクが行われていると思います。実は、この行為自体に、認知症予防につながる効果があると言われています。
今井:学生のとき、音楽を聞きながら勉強していたら怒られたことを思い出しました。
でも、最近の研究では音楽を聞きながら作業することで、集中力や効率が上がるとされる報告もありますよね。
それでは、デュアルタスクが持つ、認知症予防への効果について教えてください。
柳川先生:人間は、歩いたり掃除をするという軽い動きをするだけでも、脳内の体を動かす部分を活性化させています。
デュアルタスクでは、2つの動作を一度に行うので、体を動かすことと、もう一方の動作を行うための思考が一緒に行われます。
そのため、脳のさまざまな部分を同時に活性化させることができ、認知能力を向上させると言われています。
今井:「脳トレ」に、楽しく続けられる「音楽」の要素と、脳をたくさん活性化させる「デュアルタスク」の要素を組み合わせれば、「楽しく継続しやすい効果的な脳トレ」ができるということですね!
ですが、音楽に加えて難しそうなデュアルタスクも加わると、なかなか難易度が高そうです…。誰でも簡単にできるものなのでしょうか。
柳川先生:安心してください、大丈夫です!
まず、一番簡単にできる「音楽×デュアルタスク脳トレ」は、歌いながら体を動かすというものです。中でも私が音楽療法で取り入れていたものに、「手遊び歌活動」というものがあります。
手遊び歌は、高齢者に馴染みがある歌が多く、歌を歌いながら手を動かすだけでも、立派なデュアルタスク効果を得ることができます。
手遊び歌に馴染みがない方は、歌いながらグーパーの動きをするということでも同様の効果が得られます。
例えば、童謡の「かたつむり」に合わせて歌いながらグーパー体操をするだけでも、効果的な脳トレを行うことができます。
かたつむりの歌に合わせた歌いながらグーパー体操
- でーんでん→グー
- むーしむし→パー
- かーたつむ→グー
- りー→パー
ほかにも、「海」や「ふるさと」などの3拍子の歌は、グーチョキパーの3つの動きを取り入れると、ぴったりパーで終わりになります。ですので、歌の終わりにきちんとパーになっているか確認し合うと、活動が一段と盛り上がります。
お金をかけずにお孫さんとも一緒に楽しめる活動ですので、ぜひ実践してみてほしいです。
今井:これならお手軽ですし、どんな歌にでも応用できますね!
試しにパプリカでやってみたのですが、歌いながら手を動かすのは思ったよりも集中力が必要で、思わず夢中になっちゃいました。
柳川先生:歌を歌うだけでは物足りないという方は、楽器を使った脳トレがお勧めです。
音楽を聴きながら、音楽に合わせて楽器を鳴らすというのも、立派なデュアルタスクです。楽器を鳴らすということは、体を動かすということでもありますし、音が鳴ることで達成感を感じられます。
中でも私がお勧めしている楽器は、鈴やマラカス、鳴子など手首を動かして鳴らす楽器です。
このような、保育園や幼稚園などでも使われる楽器を高齢者対象の脳トレに活用しようとすると、「子どもくさい」「馬鹿にしているのか」と思われてしまうかもしれませんが、実は非常に大事な筋肉をつける効果があります。それは、手首を回す運動です。
実は手首を回せなくなると、自力でお茶碗を支えることが難しくなって、食事が困難になる可能性が高くなるのです。
誰でも、美味しいご飯をなるべく自分の力で食べたいと思うもの。子どもじみた楽器でも、このように声をかければ多くの方がやる気を持ってくれると思いますので、ぜひ積極的に取り組んでいただきたいです。
また、いまたつさんが開発した音楽療法用の楽器「良くなる子」は360度どの方向に振っても、さらにひねるような動作でも音が鳴るので、手首を回す運動にはお勧めですね。
独特なフォルムは「これ、一体何!?」と思わず手を伸ばしたくなる気持ちにさせてくれます。
力が弱い方でも軽々持てるのも非常に魅力です。
ぜひいろいろな楽器を用意して、「音楽×デュアルタスク脳トレ」を楽しんでいただきたいです。
音楽を活用して毎日を楽しく過ごす
いかがでしたか。音楽を活用して毎日を楽しく過ごし、新型コロナウイルスに打ち勝ちましょう!
「柳川先生のブログ」では、「介護の現場で役立つ音楽のチカラ情報」が発信されていますので、こちらもぜひチェックしてみてください。次回もお楽しみに!