便秘にはさまざまな要因があります。食事や運動が原因で便秘になることもあれば、加齢に伴い便秘症状が現れる人もいます。
便秘を改善するには下剤を使用するケースと、整腸剤を使用するケースがあります。
第33回では、主に下剤について取り上げたので、今回は整腸剤についてご紹介いたします。
腸内環境が悪化すると便秘を生じやすい
食生活や生活環境の変化、ストレスなどで腸の働きが低下すると、おなかが張る、ゴロゴロ鳴るなど、腹部に不快な症状が生じることもあります。
私たちの腸内には、およそ1,000種類、100兆個もの腸内細菌と呼ばれる多様な細菌が生息しています。
腸内細菌は大きく善玉菌、悪玉菌、どちらでもない日和見菌の3つに分けられ、正常時は、それぞれバランスをとりながら存在しています。
健康的な生活をしている方の腸内細菌は、ビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌が優勢ですが、タンパク質や脂質が中心の食事、不規則な生活、ストレスなどがあると悪玉菌が増加します。すると、腸内バランスが崩れ、下痢や便秘などの消化器症状があらわれることがあるのです。
また、加齢によってもビフィズス菌などの善玉菌が減少することも報告されています。
善玉菌は腸内を酸性にすることによって、悪玉菌の増殖を抑え、腸の運動を活発にします。さらには、食中毒の原因菌や病原菌による感染予防や、発がん性をもった腐敗産物が腸内でつくられるのを抑える働きもあります。
各種ビタミンの産生や免疫機能の向上、血清コレステロールの減少などの作用も報告されており、腸内環境を整えることは体全体の調子を整えることにつながるといえるでしょう。
毎日摂取することが好ましいプロバイオティクス
日本で販売されている代表的な整腸剤は、ビフィズス菌、乳酸菌、酪酸菌というように善玉菌が薬になったものです。
整腸剤は腸に対して善玉菌を増やし、悪玉菌を減らすように働きかけるため、便秘と軟便の両方の症状に効果があります。
一部で、腹部膨満感(お腹の張り)やアレルギー症状(どんな薬にも起こり得る副作用)などの副作用が報告されているものもありますが、総じて副作用が少なく、長期に使用してもリスクの少ない薬です。
整腸剤の服用以外にも、食事から摂取して善玉菌を増やす方法もあります。
ヨーグルトや乳酸菌飲料などからビフィズス菌や乳酸菌を摂取することができます。
これらはプロバイオティクスと呼ばれる生きた善玉菌です。腸内にある程度の期間存在しても住み着くことがないので、できるだけ毎日続けて摂取していくことが勧められています。
整腸剤と食品のどっちから摂取したらいい?
同じプロバイオティクスでも、整腸剤と食品のどっちがいいのか疑問に思う方もいるでしょう。
ただ、この疑問については明確に回答するのが困難です。というのも、その人の体調やライフスタイルによって異なるためです。
ヨーグルトや乳酸菌飲料が好きで毎日飲むことが習慣になっているという人には、整腸剤は必要ないかもしれません。ヨーグルトや乳酸菌飲料にはカロリーの高いものもありますので、食品から日常的に摂取しているのであれば、摂りすぎには注意が必要です。
逆に下記のような方は整腸剤を服用することが好ましいと考えられます。
- 不規則な食生活を送っている方
- 下痢や便秘の症状を引き起こしやすい方
- 食品から善玉菌を摂りづらい方
- 高齢者のように善玉菌が減少している方
整腸剤は、便秘時に使う下剤や下痢時に使う下痢止めよりも効き目が穏やかです。便秘になりやすい方が日常的に使用するには、下剤よりも整腸剤が好ましいでしょう。
しかし、便秘による腸閉塞や、軟便による脱水などを予防するために、下剤や下痢止めの使用が適していることもあります。
症状や原因により使い分けが必要ですので、どちらが良いか迷ったときは医師や薬剤師に相談し、上手に使用しましょう。