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第9回

高齢者の不眠症に睡眠薬は危険?副作用や依存のリスクを最小限に抑える使い方

最終更新日時 2018/03/26
#薬
睡眠薬は急激に服薬を中止すると、以前よりも症状が悪化してしまうことがあり、自己判断で中止はせず、医師の指示を仰ぎましょう。中止する際、1~2周間、睡眠状態をチェックしながら徐々に量を減らしていきます。

こんにちは。メディスンショップ蘇我薬局・管理薬剤師で、訪問薬剤師をしている雜賀匡史です。

介護の教科書「介護✕薬剤師」では、老人ホームに勤務されている方はもちろんですが、介護者のみなさんにもわかりやすく薬の知識をお伝えしていきます。

9回目のテーマは「睡眠薬」についてです。睡眠は身体の疲労回復や脳の健康に関係する、私たちが生きていくうえで欠かすことのできない生理現象ですが、現代社会のさまざまなストレスや生活リズムの変化から、誰しもが十分な睡眠時間を確保できているとは限りません。

そんなときに服用するのが、睡眠薬や睡眠導入剤と呼ばれる薬です。薬の手助けを受けることで、深い眠りにつくことができる方も多いでしょう。睡眠薬は作用時間や作用の仕方(作用機序)が異なるため、正しく使用し、適切な薬を選択しないと副作用が現れやすい薬剤です。

今回は、睡眠薬の正しい知識やその使い方、睡眠薬の服薬を上手に止める方法を紹介します。

睡眠薬にはどのような種類があるの?

睡眠薬にはさまざまな種類があります。薬を選択する際の指標となるものの1つに、薬の作用時間があります。作用時間というのは、薬の服用によって期待する効果が持続する時間のことで、大きく分けて4つの項目があります。

睡眠薬の種類と作用時間
睡眠薬の
種類
作用時間 薬の対象者
超短時間型 3~4時間 主に寝つきが悪い(入眠障害)場合
短時間型 5~6時間 主に睡眠の前半に何度も目が覚める(中途覚醒)場合
中時間型 7~8時間 睡眠全体を通して何度も目が覚める場合や朝早くに目が覚める場合
長時間型 8時間以上 睡眠の後半に何度も目が覚める場合や朝早くに目が覚める場合

これらの睡眠薬は、すべて処方箋が必要な医療用医薬品になります。処方する医師が実際に皆さんの睡眠状況を見ることはできませんので、ご自身や介護を必要とされている方の睡眠パターンを正しく把握し、その状況を医師に正確に伝えることで、適した薬剤を処方してもらう必要があります。

ただし、薬の吸収速度や排泄時間には個人差があるため、実際には作用時間が予測より前後することがあります。処方された薬が本当に適した薬剤であったかどうかは、服用後の経過観察で判断することになりますので、飲んで安心は禁物です。

睡眠薬の副作用はどんなもの?

睡眠薬を服用する上で必ず押さえておきたいことは、副作用についてです。種類によって起こりうる副作用や発現頻度は異なるのですが、一般的に広く使用されている「ベンゾジアゼピン系睡眠薬」と呼ばれる薬剤では、睡眠作用だけでなく、痙攣(けいれん)を抑える抗痙攣作用や、不安な気持ちを抑える抗不安作用、筋肉の緊張を緩める筋弛緩作用などをもっています。

この中で、特に注意すべきなのは筋弛緩作用。高齢者が睡眠薬を服用し夜間にトイレに行くとき、足元がふらついて転倒してしまうことがあります。この筋弛緩作用を少なくした薬剤が「非ベンゾジアゼピン系睡眠薬」と呼ばれる薬剤。非ベンゾジアゼピン系睡眠薬の方が新しく発売された薬剤ですので、副作用の部分が改良されています。

しかし、高齢者のように薬物代謝機能が低下していると、朝方や日中時間になっても薬の効果が持続してしまう持ち越し効果と呼ばれる症状がありますので安心はできません。朝方や日中時間帯にボーっとしていたり、昼過ぎまで寝てしまうような方は、持ち越し効果を疑ってみる必要があります。

手元にないと不安になったり、効果が弱まって服薬が止められなくなる

睡眠薬の服用において、「精神的依存」と「身体的依存」の2種類があります。

精神的依存は眠れない恐怖から、睡眠薬を服薬しないことが考えられないようになり、手元にないと不安に感じてしまうことから、服薬し続けてしまうことを指します。また、身体的依存は、一部の睡眠薬の効能が脳の神経に作用することで、常に神経刺激を続けているとその状態が普通になり、やがて同じ量では効果が弱まることから服薬が止められなくなることを指します。

身体的依存の状態になると、今までの量では効果が弱いために、一回用量が増え、服薬頻度も増してきます。この状態で怖いのは、やはり副作用。睡眠薬の副作用は、先ほどの筋弛緩作用のほか、肝機能障害、食欲不振、意欲の低下、記憶障害、めまい、頭痛、疲労感などがあります。もしこれらの症状が現れている場合には、医師、薬剤師に必ず相談しましょう。

副作用や依存を防ぐには?

副作用や依存を防ぐためには、必ず決められた用量を服薬することです。眠れないからといって、自己判断で増量することは絶対にしてはいけません。

また、医師や薬剤師から薬をもらう際、もし他に飲んでいる薬があれば、その情報を必ず伝え、飲み合わせを確認してもらうことが必要です。睡眠薬には飲み合わせの悪い薬剤が数多く存在していますので、飲み合わせの相性が悪いと予想していた効果が増減してしまう可能性があります。

そして、近年では「メラトニン受容体作動薬」や「オレキシン受容体拮抗薬」といった副作用や依存を起こしにくい睡眠薬がいくつか発売されています。今までの薬剤とは作用の仕方(作用機序)が異なり、安全性が高いことで知られていますので、必要に応じて医師、薬剤師に相談されると良いでしょう。

睡眠薬を止める適切な方法

睡眠薬は急激に服薬を中止すると、以前よりも症状が悪化してしまうことがあります。自己判断での中止はせず、医師の指示を仰ぎましょう。中止する際、通常は徐々に量を減らす方法がとられます。1~2週間かけ、睡眠状態をチェックしながら量を減らしていきましょう。

不眠症と勘違いしやすい

介護されている方から受ける相談で、「夜中の3時に起きて歩き回るので(被介護者の)転倒が怖いのです。もっと強い薬はないですか?」と、深夜時間帯に起きてしまう訴えをされることがあります。

夜中に起きてしまっては、介護されている方もさぞ大変なことでしょうが、「何時頃にベッドに入っていますか?」と聞くと、「20時にはベッドに入っています。」と回答がありました。つまり、7時間たっぷり睡眠をとって真夜中の3時に起きているのです。いたって正常な生理現象ですね。

ほかにも、昼寝をしているにもかかわらず、夜眠れないから薬が欲しいとの相談もあります。本来寝るべき時間帯に寝ていないと不眠症であると判断しがちですが、日中時間帯の過ごし方や、ベッドに入る時間を工夫して、なるべく薬に頼らずに、生活リズムを整えることで改善する方法はないか、今一度検討してみると良いと思います。

不眠症は本人だけでなく介護されている方も辛い症状です。困ったときは悩まずに医師、薬剤師に相談しましょう。薬だけではなく、生活リズムも考慮した方法で上手な睡眠をとっていきたいですね。

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