はじめまして、こんにちは。介護の教科書「介護×薬剤師」を担当することになりました株式会社パンブーが運営する、コトブキ調剤薬局横須賀店で薬剤師をしている竹中孝行です。
高齢になると、代謝や排泄機能の低下、薬の量の増加などさまざまな理由で、薬の副作用が表れやすくなります。今まで飲んでいる薬だからといっても大丈夫というわけではなく、加齢とともに急に副作用がみられることもあります。
特に高齢の方の場合は、ふらつきなどの副作用により、寝たきりの原因となることもあります。年齢や体の調子・症状に合わせて、医師や薬剤師と相談し、薬も調整していかなければなりません。
今回は、「高齢になると、なぜ副作用のリスクが高まるか」について解説するとともに、気をつけるべきポイントや対処法なども合わせて解説していきます。
薬の副作用はなぜ起こる?

ご存知のとおり、薬は「症状を和らげる」「病気を治療する」などを目的として使用します。その本来の目的に関連する作用を「主作用」といい、本来の目的以外であらわれた作用のことを「副作用」といいます。
例えば、花粉症の時期によく処方される抗ヒスタミン薬は、花粉症の症状を和らげたいという目的で服用する場合、鼻水や目のかゆみをおさえる作用が主作用で、眠気が起きるというのは副作用になります。一方、寝つきをよくしたいという目的にして服用する場合には、眠気が起きるというのは主作用になります。
理想的な薬は、主作用が最大限にあり、副作用が起こらないものですが、実際には、副作用はどの薬においても起こります。
副作用が起こる理由としては、薬がひとつの作用ではなく複数の作用を持っているなど薬そのものの作用に原因がある場合や、服用される方の体質や疾患などが原因となる場合などさまざまです。
高齢になると副作用のリスクが高まる理由
高齢になると副作用のリスクが高まる理由としてはいくつかありますが、主に考えられる3つのことについて説明していきます。
体の代謝機能の低下
薬が体に吸収され、代謝されるまでに大きく関わっているのが「腎臓」と「肝臓」になります。年齢とともにこれらの機能が低下することによって、薬の成分が代謝されずに体内にとどまる時間が長くなるため、薬の効き目が強く出る可能性があります。そのため、副作用が起こりやすくなります。
疾患とともに薬の種類・量が増加
体の衰えとともに多くの疾患になりやすく、それに応じて薬の種類や量が増加する傾向があります。薬の種類や量が増えると、薬の飲み合わせなどの影響などもあり、思わぬ副作用が出ることがあります。
適切な薬の量の調整が難しい
添付文書上で定められている薬の用法・用量では、成人や小児といった記載はありますが、高齢の方に対する用法・用量は基本的に定められていません。個人差もあるため、医師がその方の状態を判断し、薬の量を増減し調整します。そのため、より効果を高め、副作用のリスクを最小限にする薬の量の調整が難しいといったことがあります。
副作用で特に気をつけるべきポイント
高齢の方の場合、副作用のリスクが高まる可能性があるため、薬を服用している場合にはご自身、ご家族が体の変化をよく観察する必要があります。副作用は、もちろん全般的に注意してほしいのですが、特にふらつきや転倒につながるような副作用には注意が必要です。
高齢になると骨などが弱くなり、転倒から骨折につながりやすいためです。骨折してしまうと寝たきりになり、そこから認知症につながるケースもみられます。ふらつきの頻度が増えている場合には、体の不調を疑うだけでなく、薬による影響も原因のひとつかもしれないと考えることが大切です。
何か、少しでも気になる症状が出た場合には、医師や薬剤師など専門家に早めに相談するようにしましょう。
副作用でふらつきや転倒につながる恐れがある薬(一例)
- 睡眠薬
- 抗精神病薬
- 低血糖症状を起こしうる糖尿病薬・インスリン
- 高血圧治療薬
- 過活動膀胱治療薬
- アレルギー疾患薬(花粉症など)
副作用がみられたときの対処法
副作用がみられたときの対処法としては、早めに医療機関を受診し、医師に相談することです。副作用が出たからと、自己判断で薬の服用を中断してしまう方がいますが、薬の服用を突然やめてしまうと、逆に体に悪影響が出てしまう薬もあります。その判断は、専門家でないと難しいです。
また、異なる医療機関から複数の薬をもらい飲まれている場合には、薬の飲み合わせにより副作用が出ていることがあります。病院や薬局に行った際は、今服用されている薬を全部伝えるようにしましょう。すべての薬を把握しないと、正しい対処ができない場合があります。
おわりに
今回は、高齢になるとなぜ副作用のリスクが高まるかについて解説するとともに、気をつけるべきポイントや対処法なども合わせて解説しました。高齢になると何か気になる症状が出ても、体力の衰えを原因として考え、薬が影響していると思いつかない部分もあります。
薬剤師は、患者さんより気になる症状を伺い、もし薬が原因でなっていたと判断した場合、医師に相談し、処方変更の提案を行うこともあります。まずは、気になった症状が出ている場合には、自己判断では難しいため、専門家に早めに相談するようにしましょう。