新型コロナウイルス感染症対策で、日常的に消毒液を使うようになりました。店舗や建物などの出入口で手指消毒を行うことが当たり前になっています。
それに伴って注意したいのが消毒液による事故です。今回は消毒液の取り扱いに関する注意点を紹介します。
感染症対策に有効な消毒の種類
日本中毒情報センター・”中毒100番”に寄せられた除菌剤や消毒用エタノールに関する問い合わせ件数が、増加していることが報告されました。2020年2~3月の問い合わせ件数は2019年の同時期に比べて、除菌剤が2.3倍、消毒用エタノールが2.4倍となっています。
新型コロナウイルス感染症が流行した当初は消毒薬が不足していましたが、十分な量が供給されるようになり、事故の数が増えてきたのです。改めて消毒薬の管理について確認してみましょう。
基本的な感染対策は、身体的距離の確保、マスクの着用、手洗い、換気です。それを十分に行ったうえで要所に消毒薬を使うことが大切です。
消毒をすればその他の感染対策はしなくて良いわけではありませんので、改めて自身の基本的な感染対策を確認しましょう。
新型コロナ感染対策で用いられている代表的な消毒薬
厚生労働省では新型コロナ感染症に有効な消毒方法として、次のように紹介しています。これは独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)がまとめた、消毒方法の有効性評価の結果を踏まえています。
それぞれ成分や濃度により用途が異なります。モノだけに使用できる製品や、手指にも使用できる製品など、用途によって使い分ける必要があるので、使用前に注意書きをご確認ください。

事故報告が多い次亜塩素酸ナトリウム水溶液
これらの薬品の中で、次亜塩素酸ナトリウム水溶液(塩素系漂白剤)やアルコール消毒液については家庭でも使う機会が多く、同時に事故報告の多い薬品となっています。
次亜塩素酸ナトリウム水溶液はアルカリ性の薬品で、衣料用の漂白剤として広く使われている製品です。厚労省が0.05%に薄めた溶液が新型コロナウイルスに効果があるという発表をしたため、利用している方も多いのではないでしょうか。
この次亜塩素酸ナトリウム水溶液は、皮膚や粘膜の刺激作用、腐食作用を持つため、皮膚に付いてしまった場合は、流水でヌメリがなくなるまで洗い流しましょう。
眼に入ってしまった場合は、こすらず、すぐに流水で15分以上洗い流してください。また、痛みがなくても眼科を受診するようにしましょう。
商品には「まぜるな危険」と記載があります。これは、次亜塩素酸ナトリウム水溶液が強アルカリ性なので、酸性の薬品と混ぜると有毒ガスが発生するためです。
万が一飲んでしまった場合も、迅速に対応する必要があります。飲んだ薬品が口、喉、食道、胃粘膜を荒らすだけでなく、体内で胃酸と化学反応を起こし、有毒ガスを発生する可能性があります。まれに死亡事故にもつながるため、すぐに処置する必要があります。
もし次亜塩素酸ナトリウム水溶液の原液や多量の希釈液を飲んでしまったら、1時間以内に牛乳を200~400mlほど飲んでください。
無理に吐かせるのは、吐しゃ物によって再度粘膜を痛めることがあるので避けてください。酢、フルーツジュース、炭酸水なども中和熱やガスを発生する可能性があるので避けましょう。
次亜塩素酸ナトリウム水溶液を使う際は、使う分だけ希釈して使い切るか、使わないものは手の届きにくい場所に保管するなど、誤って使用しないための工夫も必要です。
容器の入れ替えにも要注意
アルコール消毒液はドラッグストアなどで簡単に手に入る代表的な消毒薬で、エタノールという成分が使われています。
私たちが口にするビールやワインなどのお酒もエタノールの一種であるため、「飲めるのでは?」と考えてしまいますが、決して飲用はしないでください。
なぜなら、ドラッグストアで消毒用に売られているエタノールには飲用不可の添加物が入っていることが多いためです。
例えば、塩化ベンザルコニウムという消毒薬が一緒に含まれていることがあります。これは消毒効果を持つ一方で、毒性を持っているので飲んでしまうと中毒症状を引き起こす可能性があります。
また、イソプロパノール(イソプロピルアルコール)という添加物も、飲用すると中毒症状を引き起こします。
消毒用エタノールの商品名の語尾に「IP」や「IK」といった文字が書かれているものは、このイソプロパノールが混ざっていることを意味します。飲用不可の製品は酒税がかからないため、純粋な消毒用エタノールよりも安価で購入できるのです。
しかし、純粋な消毒用エタノールでも飲み物としては濃度が濃すぎるため、胃腸粘膜の障がいや、急性アルコール中毒などの症状を引き起こす可能性があります。誤って飲用しないように注意しましょう。
家庭などでお子様や認知症の人が誤って消毒薬を飲んでしまう事故が増えています。よくある誤飲は、容器の入れ替えなどが原因であることが多いです。
ペットボトルやコップのように飲用で使われている容器に消毒薬を入れ替えることは避けましょう。

また、簡単に手の届く場合には保管せず、使用し終わったらすぐに片付けるようにする、誤って口にしづらい容器で保管するなどの工夫をすると良いでしょう。
万が一、消毒薬で事故が起きた場合には、現場で可能な応急処置とあわせて、速やかに受診してください。