新型コロナウイルス感染症における予防策として、マスクを着用する日常生活にも慣れてきたことと思います。一時期はマスク不足で大変な状況でしたが、今ではドラッグストアやスーパーなどで、さまざまな種類のマスクが販売されています。また、フェイスシールドを着用して接客している店員さんも見かけます。その効果は、いかがでしょうか?
これから夏にかけて気温が暑くなると、マスクの着用が辛い時期にもなります。今回は、マスクやフェイスシールド着用の意味と、熱中症予防についてご紹介します。
マスクの素材別にみる効果の違い
一般的なマスクを素材別にみると、不織布マスクは最も高い効果を持ちます。次に布マスク、その次にウレタンマスク・ポリエステルマスクの順です。
理化学研究所の研究では、不織布マスクが約8割、布製手作りマスクが約7割の飛沫・エアロゾルの飛散を抑制したと報告されています。また、素材の種類にかかわらず、マスクは7割以上の飛沫・エアロゾルの飛散を抑制しており、感染予防に非常に有効であると結論づけています。周囲に人がいるような環境下では、引き続きマスク着用が必要でしょう。
そのほか、N95マスクという規格のマスクがあります。N95マスクは、防塵マスクとして使用されてきました。結核菌のように空気感染を起こす病原菌は、0.5ミクロン以下の飛沫核となって空気中を浮遊します。
※1ミクロン=1mmの千分の一 (参考:PM2.5は直径2.5ミクロンの粒子、細菌は約1ミクロン、新型コロナウイルスは約0.1ミクロン)
N95マスクは最も捕集しにくいと言われる0.3ミクロンの微粒子を95%以上捕集する性能を持つため、空気感染の心配があるときなどは着用が必須です。一見すると、常にN95マスクを着用しておけば安全な気がしますが、あくまでもこれは正しく装着できた場合の話です。N95マスクを使用の際にはフィットテストを行い、マスクが正しく着用され、脇からの漏れがないかをチェックする必要があります。また着用時は息苦しいので、日常的な使用には不向きです。日常での使用には、実用的かつ比較的性能の高い不織布マスクを着用することをおすすめします。
フェイスシールドはマスクとの併用が理想
フェイスシールドは、もともとマスクと併用して、眼からの飛沫感染を防止するために使われるものです。マスクをせずに単独で使用するための製品ではないのです。理化学研究所の調査によると、フェイスシールド着用時、粒子の大きさが50ミクロン以上の飛沫は、フェイスシールドに付着するため飛散を抑制できるとされています。しかし、5~10ミクロンの飛沫に関しては、ほとんどが横から漏れてしまうので、小さな飛沫の防止効果は低いことが確認されました。
つまり、換気のできないような場所でフェイスシールドをマスク代わりに着用することは、感染予防策としては不十分だということを意味しています。フェイスシールドを着用しているときは、小さな飛沫による感染対策として、必ず換気などを並行して行う必要があります。使用方法について判断に迷ったときは、マスクを着用するようにしましょう。
飛沫・エアロゾルを顔に浴びた場合
咳などを通じて、飛沫・エアロゾルを顔に浴びた場合のシミュレーションを理化学研究所が行っています。この研究によると、50ミクロン以上の飛沫は、鼻腔や口腔に付着して溜まる一方、20ミクロン以下の微小な飛沫・エアロゾルは、鼻腔や口腔には付着せず、そのまま咽頭、気管を通って体内に侵入するという結果が報告されています。このことから、マスク着用時にも換気を行う必要があることがわかります。
高齢者が気をつけたいマスク着用時の熱中症予防
マスクを着用すると、着用していない場合と比較して、心拍数や呼吸数の増加、血中二酸化炭素濃度の上昇、体感温度の上昇など、身体に負担がかかることがあります。そのため、高温や多湿といった環境下でのマスク着用は、熱中症のリスクを高めるおそれがあるのです。
厚生労働省では、屋外で人と十分な距離(少なくとも2メートル以上)が確保できる場合には、マスクを外すよう呼びかけています。また、マスクを着用する場合には、強い負荷の作業や運動を避け、のどが渇いていなくても、こまめに水分補給をする必要があります。特に高齢者は、通常時でものどの渇きを訴えないことが多いので介護者が十分に注意しておきましょう。
さらに、周囲の人との距離を十分にとれる場所では、マスクを一時的にはずして休憩することも必要です。そのほか熱中症対策としては、外出時は暑い日や時間帯を避けることや、涼しい服装を心がけ、エアコンを活用することも有効です。
一般的な家庭用エアコンは空気を循環させるだけで換気は行っていないため、冷房使用時でも窓の開放や換気扇の使用など、できるだけ換気を行う必要があります。設定温度を通常時よりも下げるなど、工夫しながら換気を行うといいですね。特に、高齢者や子ども、障がい者の方々は熱中症になりやすいので、十分に注意しましょう。
海外では、新型コロナワクチン接種が進むにつれて、マスク着用の義務を解除している地域も出ていると報道されています。しかし、CDC米疾病対策センターでは、ワクチン接種と並行してマスク着用を続けることを推奨しています。また、WHO世界保健機関では、現在問題となっている変異株について、マスクが引き続き有効であるという見解を示しています。
日本でマスクを外せる日が来るのはまだ先のことだと思います。私たちはこの2年間で多くの経験を積み、何が危険で、どのような対策が有効かを学んできました。必ず終わりの来る戦いです。今しばらく辛抱して、感染対策をしていきましょう。