みなさん、喘息(気管支喘息)というと、どのような症状を思い浮かべるでしょうか。
多くの方がイメージするのは呼吸が苦しくなって、ひどくなると呼吸の度にヒューヒューと音が聞こえるような喘息の発作だと思います。
このような喘息の発作を起こしたときに、適切な処置をしないままだと、最悪の場合は亡くなることもあります。
喘息の患者さんのなかの1割くらいは咳喘息といって、ひどい咳が止まらなくなる発作を起こす人がいるのです。
厚生労働省の報告による過去のデータによると、喘息死した成人の90%近くが60歳以上の高齢者でした。
今回は、なぜ喘息(気管支喘息)の発作が起こるのかについてお話しします。
喘息は身体を守ろうとして起こる
気管や気管支は、外界から空気を吸って体内に酸素を取り込むための空気の通り道です。
人は呼吸をするときに、綺麗な空気だけを吸うことができれば良いのですが、空気中に浮遊しているいろいろな物質を一緒に取り込んでしまいます。
子どもはアレルギー症状が原因になっているケースが多い
子どもの喘息は、息を吸うときにダニの死骸やフンなどを取り込んでしまい、アレルゲン(アレルギーの原因物質)となって発作を起こすアレルギー症状が原因の場合が多いです。
このような小児喘息の場合は、適切に治療すれば大人になったときに、発作が起きないようになることが多くあります。
大人の喘息は気管支の炎症が原因になるケースが多い
高齢者の方に起こる喘息、つまり成人の方の喘息は、空気と一緒に吸い込んだ刺激物が繰り返し気管支の表面を傷つけ、炎症を起こしていることが多くあります。

例えば皮膚の表面を強くこすったりすると、ひどいときにはちょっと皮がむけて、赤くなって、腫れてきて、擦りむいた部分からは粘液(浸出液)が出てきます。
実は喘息の方の気管支粘膜の表面は、その状態と同様に荒れた状態になっているのです。
喘息症状は身体を守るために起こる
気管支粘膜は身体のなかにあるため目視もできず、痛みを感じないので、本人は気づくことができません。
しかし、空気中の異物に刺激され続けると、気管支の表面が傷ついて荒れた状態になり、腫れてきて、粘液がたくさん出てきて痰もからんできます。
気管支の内側が腫れることで、空気の通り道である気道が狭くなります。
その状態で異物が入ってくると、身体は自分を守るために気管支を収縮させ、喘息の発作を起こすのです。

実は喘息ではない方でも、身体にとって危険なものが気管支から入ってこようとすると、喘息発作と同じようなことが起こります。
例えば「混ぜるな危険」の洗剤を混ぜてしまうと有害なガスが出ますが、これを吸おうとすると身体が拒否して喘息発作と同じ状態になります。
すなわち、喘息の発作そのものは身体を守るために起こる自然なものです。
問題は、喘息の方は小さな刺激でも発作を起こしてしまい、ときには命の危険が伴うような事態に発展する可能性があることです。
なぜ喘息の発作を起こしやすい人がいるのか
では、喘息の方はなぜ他の人が何ともないような刺激で発作が起きてしまうのでしょうか。
みなさんが腕を擦りむいたとき、その傷に少し触れただけでも痛みを感じて、思わず腕を引っ込めてしまいますよね。
喘息発作は、これと同じことが気管支で起きています。
つまり、気管支の表面が傷ついて炎症を起こしているため、喘息の方の気管支は健康な方よりも刺激に敏感になるということです。
そのため、他の人が何ともないような刺激でも、身体を守るために刺激物が入ってこないように気管支が収縮し、喘息の発作が起こるのです。
喘息の治療は、この気管支表面の炎症を抑え、発作を起こさないようにすることが大切です。
もちろん発作を起こしたら、まずは発作を鎮めることが大事なのは言うまでもありません。
しかし喘息治療の目標は、腫れて炎症を起こしている気管支表面の状態を正常な状態に戻して、多少の刺激があっても発作を起こさないようにすることなのです。
そして治療をするうえで何よりも大事なのは、発作が起きていないときでもしっかりお薬を使うことです。
最後に一言
今回は、どうして喘息が起こるのかについてお話ししました。
気管支が傷ついて起こる喘息は、ただ発作を抑えるだけでなく、きちんとした治療を行うことが大切です。
次回は喘息のお薬についてお話しします。