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第100回

なぜ高齢者の感染症は重症化しやすい?抗菌薬の服用で注意したいこと

最終更新日時 2023/04/24
#高齢者の健康 #薬
目 次

2019年末から感染が拡大した新型コロナウイルスは、感染症のイメージを大きく変えたことと思います。

一方で、同ウイルスに対するワクチンが実用化され、また治療のための抗ウイルス薬も開発されました。そのような中、2023年5月8日付で新型コロナウイルス感染症は、感染症法に基づく感染症分類の2類指定から5類指定(インフルエンザウイルス感染症と同等)へ変更されます。

ただし、5類指定に変更されたと言っても、新型コロナウイルスそのものが弱体化したわけではありません。

また、高齢者にとって注意が必要な感染症は新型コロナウイルス感染症に限りません。今回の記事では、高齢者が罹りやすい感染症や、感染症の治療に用いられる抗菌薬について解説します。

高齢者で注意が必要な感染症

感染症の種類や発症率の状況は、地域や病原体の流行状況によって大きく異なります。

高齢者では喉や鼻、気管支、そして肺が感染源となる呼吸器感染症、腎臓から膀胱を経て尿道に至る尿路を感染源とする尿路感染症、そして皮膚や胃腸の感染症が一般的です。

なお、新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスは呼吸器感染症の原因となるウイルスです。

高齢者が罹りやすい感染症について、新型コロナウイルスが世界的に流行する以前の2013~2017年にかけて実施された調査結果が報告されています。

この調査では、中国(山東省)に在住している60歳以上の高齢者55万432人が対象となりました。解析の結果、最も一般的な感染症は、呼吸器感染症と皮膚の感染症で、その年間の発症率はそれぞれ17.5%と20.4%でした。

呼吸器感染症の中でも、肺が感染源となる場合には、肺に炎症が広がって肺炎を起こすこともあります。肺炎の多くは、ウイルスではなく細菌の感染によって引き起こされ、その発生率は年齢を重ねるごとに増加します。

肺炎による入院率
区分 入院率
(1,000人あたり)
60歳以上 1人
75歳以上 12人
介護施設等に
居住している高齢者
33人

尿路感染症は呼吸器感染症に次いで入院が多く、感染源が膀胱の場合は膀胱炎を起こすこともあります。

また、病原微生物が膀胱から尿管を遡り、尿がつくられる腎臓へ入り込むと、腎盂腎炎(じんうじんえん)という病気を発症することがあります。

さらに尿路感染症が重症化すると、病原微生物が血液中に入りこんでしまう菌血症を引き起こすこともあります。尿路感染症や腎盂腎炎で入院した場合の死亡率は1~9%ですが、菌血症を発症している腎盂腎炎では10~20%と極めて高くなります。

高齢者における感染症の特徴

ご高齢の方は体の生理的な機能の低下、糖尿病や心臓病などの持病、不十分な食事摂取などの影響で、一般的に感染症に罹りやすく重症化しやすいといわれています。

画像提供:adobe stock

また、呼吸器感染症は、肺炎を発症する確率が65歳未満の方よりも65歳以上の方で4~11倍高く、集中治療室への入室頻度や人工呼吸器の装着リスクも高まります。加えて、感染症を発症しても症状に乏しいことが多く、病状の発見が遅れることによる重症化の危険性が高まります。

尿路感染症も同様に、高齢者が感染しやすいことで知られています。

主な理由としては、免疫機能が低下している傾向にあること、男性の場合は前立腺肥大症などの尿が出にくくなる病気に罹りやすいこと、年齢とともに排尿量が減少することなどが挙げられます。

加齢に伴い身体機能や認知機能が衰えてくると、買い物に行く機会が減り、バランスのよい食事を摂取することが難しくなります。また、食べ物を飲み込む動作(嚥下)が難しい方も多く、十分な栄養を摂取できないこともあるでしょう。

栄養が十分に摂取できないことも、感染症に罹りやすくなる原因の一つです。特に寝たきりの高齢者においては、栄養状態の悪化から褥瘡(床ずれ)を発症してしまうこともあります。褥瘡ができてしまうと、皮膚が損傷している褥瘡部に病原微生物が感染しやすくなり、適切なケアができない場合には、皮膚の感染症が重症化することもあります。

感染症治療のための抗菌薬

一般的な感染症に用いられる主な抗菌薬を以下の表にまとめます。なお、抗菌薬は病原微生物の中でも細菌の増殖を抑える薬であり、新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスのようなウイルスに対する効果は期待できません。

一般的な感染症に用いられる主な抗菌薬
抗菌薬の分類 一般名
(成分名)
主な商品名
ペニシリン系 アモキシシリン サワシリン錠
セフェム系第1世代 セファクロル ケフラールカプセル
セフェム系第2世代 セフォチアム パンスポリンT錠
セフェム系第3世代 セフカペンピボキシル フロモックス錠
セフジトレンピボキシル メイアクト錠
キノロン系 レボフロキサシン クラビット錠
シプロフロキサシン シプロキサン錠
ガレノキサシン ジェニナック錠
モキシフロキサシン アベロックス錠
マクロライド系 クラリスロマイシン クラリス錠/クラリシッド錠
アジスロマイシン ジスロマック錠

日本における抗菌薬の処方実態を調査したデータによれば、人口1,000人あたり年間704件の抗菌薬が処方されており、第三世代のセフェム系、マクロライド系、キノロン系で処方量全体の85.9%を占めていました。

ただし、半数ほどは抗菌薬が効かないウイルス感染症など、適応がない症例にも処方されていました。

抗菌薬を不適切に用いると病原微生物が薬剤に対して耐性を獲得し、抗菌作用が得られにくくなります。これを薬剤耐性と呼びますが、抗菌薬の不適切使用については厚生労働省も重要な社会課題として認識しており、2016年には薬剤耐性対策アクションプランを策定しています。

高齢者が注意したい抗菌薬の副作用

適切に処方された抗菌薬は、感染症を効果的に治療する優れた薬剤です。一方、当然ながら副作用が発生することもあります。

代表的な抗菌薬の副作用に、薬のアレルギー反応などによる皮膚の発疹、胃腸の不快感、下痢症状などをあげることができます。特にマクロライド系と呼ばれる系統の抗菌薬は、下痢を起こしやすいことで知られています。

セフェム系の中でも最も処方される機会が多い抗菌薬は第3世代に分類される薬剤です。一般的に安全性が高いと考えられている薬剤であり、小児の感染症治療にも用いられます。

しかし、ごくまれに低血糖を起こすことが知られており、特に栄養状態の悪い高齢者や食事の摂取が難しい高齢者、持病を患っている寝たきりの高齢者等では注意が必要です。

抗菌薬を服用する上で高齢者が注意すべきこと

高齢者では、若年者と比べて薬を分解し、排泄する能力が低下する傾向にあります。そのため、服用した薬が体内に留まりやすくなり、副作用が出やすいといえます。

特に、腎臓や肝臓の病気を治療中の方では、薬の分解や排泄速度が遅くなることも多く、血液中の薬の濃度が高くなりがちです。

また、マクロライド系の抗菌薬は飲み合わせが悪い薬も多く、他の薬の排泄や分解を妨げてしまうこともあります。この場合、マクロライド系の抗菌薬と併用している他の薬の副作用も出やすくなります。

持病が多い高齢者は医療機関から処方されている薬の種類も多く、医師から指示された用法通りに服用できない方も少なくありません。

画像提供:adobe stock

しかし、適切に処方された抗菌薬は、指示された用法を守って服用すると、守らないで服用した場合と比べて、治療効果(感染症の治癒や症状の改善)を得られる確率が3倍ほど高まるとした研究データも報告されています。

つまり、抗菌薬を指示された用法通りに服用できないことは、感染症の治療が上手くいかない原因の一つなのです。薬を飲み忘れてしまいがちな方や、薬の飲み合わせに不安のある方は、かかりつけの医師や薬剤師にご相談されると良いでしょう。

【参考文献】
Front Med (Lausanne). 2019 Jun 6;6:118.
J Glob Health. 2021 Dec 25;11:08010.
Clin Infect Dis. 2009 Oct 1;49(7):1025-35.
BMC Infect Dis. 2021 Oct 9;21(1):1048.
Int J Infect Dis . 2020 Feb;91:1-8
厚生労働省:薬剤耐性対策アクションプラン
BMC Endocr Disord. 2023 Mar 6;23(1):52.
Intern Med. 2019 Oct 1;58(19):2891-2894.
Med Care. 2002 Sep;40(9):794-811

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