加齢とともに加齢臭を気にされる方がおられますが、その原因は口臭かもしれません。口臭が気になると「人と話すのを避ける」「車などの狭い空間を避ける」など、社会生活に支障をきたすこともあります。
そこで今回は、高齢者の口臭や口臭予防対策についてお伝えします。
生理的口臭は気にしすぎないことも大切
口臭には、病気を原因とせず、健康な方にも生じうる生理的口臭と、なんらかの病気が原因で発生する病的口臭があります。
それぞれの特徴を知っておくことがまず大切です。
生理的口臭
生理的口臭は、1日の生活のなかでも周期的に変化します。さらに、ホルモンの周期などが関連して起こるケースもあります。
生理的口臭の原因の1つは、唾液の減少による口の渇きです。
口腔内の細菌がもつ酵素によってタンパク質が分解されると口臭成分が発生するのですが、通常、水分量の多い唾液中では、細菌とタンパク質の間に距離ができるため、口臭成分は発生しにくくなっています。また、口臭の原因となる成分が生じても、唾液の容量自体が大きいため唾液の中に溶け込んで外部に出にくくなっています。
しかし、水分量が少ない唾液の場合は、唾液とタンパク質の距離が近くなり口臭成分が発生しやすくなります。それとともに唾液の容量自体も減少しているため、口臭の原因となる成分が気体へ変化し唾液の外部に出てしまいやすくなるのです。その結果、口臭を感じやすくなります。
唾液量が減少して水分量の少ない唾液が分泌されるのは、就寝時や過度のストレスなどによる緊張状態にあるときです。そのため、起床時やストレスが続くときは、生理的口臭が生じやすくなります。
特に高齢者では、病気や薬の影響も相まって唾液が減少しやすくなっており、口臭が生じやすくなります。
そのほか、生理的口臭には、空腹時口臭・疲労時口臭、ホルモンの変調による口臭、嗜好物・飲食物・薬物による口臭があります。
空腹時口臭や疲労時口臭は、「アセトン臭」と言われる、独特の酸っぱい臭いが特徴的です。これは、体のエネルギーの不足を補うために、脂肪が分解される際に生じるからです。
ホルモンの変調による口臭では、エストロゲンの減少などによって生じる月経時口臭や更年期口臭などがあります。また、嗜好物・飲食物・薬物による口臭では、タバコやニンニクなどが原因となることもあります。
ただ、生理的口臭は一般に口臭のレベルとしては低いため、気にしすぎないほうが良いでしょう。客観的に見て口臭が強いというわけではないのに、ご自身の口臭を気にしすぎてつらい思いをされている方もいます。
口臭は健康な人にもある自然なものであることを知り、ときには気にかけないことも大切です。
むし歯や歯周病が原因となる病的口臭
むし歯や歯周病などの口腔の病気や、全身の病気を原因とした病的口臭に関しては注意が必要になります。
口腔内の病気に関連する口臭
歯周炎・むし歯、口腔粘膜の炎症など、口臭の原因になることが多い口腔内の病気は、特に高齢者は発症しやすいものです。
口腔内の病気の原因としては、口腔内・義歯の清掃不良、不適合な修復物などがあります。
清掃不良は生理的口臭とも関連しますが、口腔内でプラークの付着物や舌苔などが多くなり、細菌の栄養源となるタンパク質が増加することで、強い口臭となります。
また、プラークの付着は、歯周病やむし歯の原因にもなります。そして歯周病が進行すると歯周炎になることがあります。
歯周炎では、歯周ポケットから出血や排膿しやすくなっており、血液を好む細菌が増殖したり、排膿そのものにより口臭が生じます。加えて、むし歯には食物残差などがとどまりやすくなりさらに口臭の原因となっていきます。
修復物の上の部分が外れたむし歯の場合では、むし歯からの口臭はさらに強くなっていく可能性があります。
そのほか、口腔内では義歯も清掃を十分していないと口臭の原因となることがあるため注意が必要です。
口臭対策のポイント
では、日々の口臭対策についてご紹介いたします。
細菌の栄養素となるタンパク質を減らす
日々の口腔清掃をしっかりと行うことが基本となります。そのためには、効果的なブラッシングを行うことがとても大切です。
また、義歯や歯の修復物が不衛生となりプラークが増えることもあります。義歯は義歯ブラシで洗浄し、義歯洗浄剤にて消毒できているか、歯の補修物にプラークがついていないか日々確認しましょう。
しかし、日々のケアだけでは十分に清掃ができないことも多々あります。
そのため、かかりつけの歯科を持ち、歯や義歯を含めた専門的なメンテナンスを定期的に受けていくことも重要です。
良質な唾液が分泌される生活を整える
良質な唾液の分泌にも口腔内の清潔を保つことがまず大切になります。
過度なストレスが持続する生活をしていないか、生活環境のなかで、リラックスできる時間を整えていくことも大切です。
加えて、高齢者では口の喝きを感じにくくなっており、知らない間に脱水傾向になることもあります。脱水傾向になると唾液の質も低下するため、適度な水分が摂取できているかどうかの確認もしていきましょう。
そのほかの病的口臭に注意しよう!
今回は「生理的口臭」と「病的口臭」のうち口腔内の病気に起因するものを中心にお伝えしました。
しかし、病的口臭はその他耳鼻咽喉領域の病気、内科的病気などに関連するものもあり注意が必要です。
耳鼻科領域の病気の場合、鼻炎や副鼻腔炎、扁桃周囲炎、咽頭の病気などだけなく、鼻咽腔・口腔、顎顔面周囲の悪性腫瘍の場合もあります。
また、内科的病気としては糖尿病・腎臓の病気・肝臓の病気・肺がんなど、重篤な病気になることもあります。
口腔内の病気がないのに口臭が強い場合や、口臭以外の症状がある場合はかかりつけ医などに相談することをおすすめします。