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第12回

誤嚥しても「むせない」不顕性誤嚥の恐怖とは?発症メカニズムと3つの抵抗力アップ法

最終更新日時 2020/03/18
#嚥下
皆さん、こんにちは。ふかつ歯科で摂食機能療法専門歯科医、深津ひかりです。今回は続編として、抵抗力を高めるアプローチ法についてお話していきたいと思います。

皆さん、こんにちは。ふかつ歯科で摂食機能療法専門歯科医、深津ひかりです。

前回の記事では、誤嚥は誤嚥性肺炎の原因にはなるものの、肺炎を生じるか否かは「侵襲と抵抗のバランス」で決まるというお話をしました。

この考えに基づいて、誤嚥性肺炎の予防として侵襲を減らすアプローチ法についてご説明しました。

今回は続編として、抵抗力を高めるアプローチ法についてお話していきたいと思います。

「不顕性誤嚥」はむせない嚥下

誤嚥性肺炎発症のバランスを大きく崩す原因の1つに「不顕性誤嚥(ふけんせいごえん)」というものがあります。

健常な人は「誤嚥をすればむせる」という生体の防御反応が起こりますが、嚥下(えんげ)障害の患者さんの中には「誤嚥してもむせない」人がいます。

このむせない誤嚥のことを「不顕性誤嚥」といいます。

不顕性誤嚥の方は、誤嚥物が咳嗽(がいそう)で排出されずに気管や肺内に入ったままになるため、バランスが崩れて肺炎のリスクが高くなるのです。

下の図は、誤嚥性肺炎発症のバランスを表した図です。

誤嚥性肺炎発症のバランスの解説図

不顕性誤嚥の発生メカニズム

少し難しくなりますが、不顕性誤嚥が生じるメカニズムをお話しします。

不顕性誤嚥の発症機序には、「サブスタンスP」という神経伝達物質がかかわっていると考えられています。

咳や嚥下の反射が良い(不顕性誤嚥の症状がない)人は、咽頭のサブスタンスPの濃度が高いことが示されています。

一方、不顕性誤嚥を生じている患者さんでは、濃度が低いことが明らかになっています。

これらのことから、嚥下反射や咳反射が生じるには、咽頭のサブスタンスP濃度が高いことがポイントです。

サブスタンスPが放出される仕組みのイラスト

パーキンソン病、超高齢の方は不顕性誤嚥が生じやすい

サブスタンスPは、脳内のドパミンに誘導、刺激されて咽頭に放出されるため、「パーキンソン病」「パーキンソン病類似疾患」「レビー小体型認知症」など、ドパミンが不足しやすい疾患では不顕性誤嚥が生じやすいです。

また、加齢によってもドパミンの産生は低下するため、超高齢であることも不顕性誤嚥を起こすリスクとなります。

抵抗力を高めるアプローチ

不顕性誤嚥がある方や、誤嚥する量や頻度が高く、肺炎になる可能性が高い方は口から食べ物を摂取できないわけではありません。

現に私の患者さんの中にも、誤嚥はしているけれど肺炎にならずに食べ続けている方はたくさんいらっしゃいます。

ポイントは、ご自身の抵抗力を高めて誤嚥性肺炎を予防することです。

そこで、抵抗力を高めるアプローチをご紹介します。

①ワクチンの接種

肺炎球菌(※)は誤嚥性肺炎の原因菌になることも多く、誤嚥をしている高齢者においても誤嚥性肺炎の予防のために肺炎球菌ワクチンの接種が推奨されています。

また、インフルエンザのワクチン接種も有用です。

インフルエンザと肺炎球菌のワクチンを両方接種することで肺炎の重症化や肺炎による死亡を減らせることがわかっています。

※肺炎球菌…肺炎になる原因として最も多い「原因菌」のこと。

②咳嗽(がいそう)反射を改善する薬剤の使用

咽頭のサブスタンスPや脳内のドパミンを補う薬剤が咳嗽反射(※)の改善には有効であることが知られています。

代表的なものとして、ACE阻害剤、アマンタジン、シロスタゾール、半夏厚朴湯などがあります。詳しくは野原幹司著『認知症患者さんの病態別食支援: 安全に最期まで食べるための道標』(2018年、メディカ出版)をご覧ください。

※咳嗽(がいそう)反射…せき込むこと。誤嚥を防ごうとする反応。

③喀出力の維持・改善

痰やつばを吐き出す機能のことを「喀出(かくしゅつ)機能」と言います。

呼吸・喀出機能を改善・維持するには呼吸理学療法が有効です。

反射としての咳が出せなくても、意識して咳ができれば誤嚥物は喀出できます。

それ以外にも、自発的な運動が低下している高齢者は肺炎を生じていますので、呼吸理学療法によって呼吸機能の維持・改善が期待できます。

要介護の方でも適応できる呼吸理学療法

ここでは、要介護の方でも適応可能な呼吸理学療法を説明します。

A.深呼吸

簡単な指示がわかる場合は、深呼吸は最も適用しやすい呼吸理学療法です。

リラクセーションや胸郭(きょうかく)可動域の維持、誤嚥物の排出促進などの効果が期待できます。

鼻呼吸でゆっくりと深吸気、呼気を行うといいでしょう。

B.胸郭(きょうかく)可動域訓練

a)シルベスター法(変法)

シルベスター法(変法)の写真

シルベスター法は、写真のように後ろから両腕をひじを支えて上げる方法です。

呼吸と同期させるのが効果的ですが、上肢を持ち上げると胸郭が広がる方向に力がかかるため、同期させなくても胸郭可動域訓練になります。

痛みを伴わないように、柔軟体操の要領でゆっくりと動かすのがポイントです。

b)体軸の捻転

体軸の捻点をしている様子の写真

上半身(胸椎-きょうつい)を動かす動作は、胸椎とつながる肋骨(ろっこつ)を動かす作用があるため、胸郭可動域訓練として有効です。

胸椎の前屈、側屈、捻転などが自分で行う、または誰かに手伝ってもらって行えると良いでしょう。

寝たきりの症例では、背臥位(はいがい※)の状態で膝を屈曲させ、その膝を左右に倒すと間接的に胸椎を捻転させることができ、胸郭可動域訓練となります。

体軸とあわせて肋骨の捻転も効果的ですので、理学療法士さんと相談して訓練に取り入れるのも一法です。

※背臥位…横になり、仰向けで寝ている姿勢。

c)肩甲骨の内転

肩甲骨の内転をしている様子の写真

真後ろに立って、術者を支点にして両肩を開く要領で行います。

円背(えんぱい※猫背のこと)になっていると、肩も前方に落ち込むため胸郭が動きにくくなります。

そういう場合は、胸を張るような姿勢を取らせると良いでしょう。

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