いいね!を押すと最新の介護ニュースを毎日お届け

施設数No.1老人ホーム検索サイト

入居相談センター(無料)9:00〜19:00年中無休
0120-370-915
第91回

【事例】コロナ禍での面会制限に「逆に安心してしまった」…罪悪感を抱えるYさんへ公認心理士がアドバイス

最終更新日時 2023/10/30
#親の介護 #仕事と介護の両立
目 次

介護者メンタルケア協会代表で、公認心理師の橋中今日子です。

新型コロナウイルスの感染症法上の位置付け「5類感染症」に変更されたことで、旅行や外出を楽しむ人たちが増えています。しかし、医療・介護の現場では、常に感染リスクへの対処が求められるため、状況によっては面会制限が続いているところもあります。

面会制限によって起こる家族の心理的ストレスはさまざまです。「会えなくて辛い」とのお声だけではなく「ほっとした」というお声もあるのです。

【事例】寝たきりの父親と面会できなくなったYさん(50代・会社員)

関東在住のYさん(50代)は、車で1時間半離れた実家で一人暮らしをする父親(80代)を5年間サポートしていました。父親は半年前に脳梗塞で倒れてほぼ寝たきりとなり、意思疎通も難しくなりました。その後、長期療養ができる病院に入院中です。

父親が倒れて緊急搬送されてから3ヵ月近くは面会制限が緩和されている時期だったため、Yさんはほぼ毎日見舞いに行っていました。しかし、長期療養のための転院の話が出始めた頃から、新型コロナウイルスだけでなく、インフルエンザの感染者数も大幅に増えたため、面会制限が行われるようになりました。

このため、Yさんが父親と会えたのは転院時の移動の車に乗るわずかな時間だけでした。転院先でも、家族は感染対策のために受付までしか入ることができず、Yさんは病棟にストレッチャーで運ばれる父親の姿を離れた場所から見守るだけで、それから2ヵ月以上会えていません。

Yさんは、父親の入院を知る友人たちから、「会えなくてさびしいでしょう」「心配でしょう」と言われるたびに、複雑な気持ちになっていました。体調はどうだろうか、苦しい思いはしていないかと心配する気持ちはあるものの、実はYさん自身はほっとしていたからです。

面会制限があることで、病院に毎日通う必要がなくなり、面会時間を気にすることなく仕事に集中できるようになりました。以前は「父に感染させてはいけない!」と避けてきた友人や同僚たちとの食事にも気軽に参加できます。「会いにいってあげなければ」というストレスから解放され、「このまま面会制限が続いてくれても構わない」とすら思うこともありました。

しかし、Yさんは面会制限で悲しむ家族の報道を目にすると「ほっとしているなんて言ったら、軽蔑されるかもしれない」と、親しい人にも本音を言えなくなってしまいました。さらに「面会制限がずっと続いてほしいと願う自分は、自己中心的なのだろうか?」と、後ろめたい気持ちになっておられたのです。

面会に行くのは意外と重労働

家族が施設に入居していたり、入院中だったりすると、実際の介護負担は少ないように思われがちです。しかし、仕事に子育てにと忙しい中、面会の時間を確保することは容易なことではありません。距離にかかわらず、移動する労力や負担は想像以上に大きいものです。

「見舞いに行っているだけで、たいしたことはしていないんです」とおっしゃる方がいらっしゃいますが、その負担がどれだけ大きいものかは、当事者に自覚がないことも多く、周囲にもわからないものです。

さらに、Yさんのように長期間サポートを続けた方もおられます。介護のために自分が休む時間を後回しにする状況が長期間続くと、要介護者の入院や施設入居が決まった途端に疲弊と疲労でダウンする方も少なくありません。私も実際、母や祖母の施設入居が決まった直後に寝込み、心身の不調が何ヵ月も続く経験をしました。

「ほっとする」のはこれまでの介護で疲れきっていたから

Yさんにはまず、面会制限があることで精神的に楽になるのは当然のこと、自分を責める必要はありませんよとお話しました。合わせて、友人にも率直な気持ちを伝えてみては、ともお伝えしました。Yさんは「こんなことを言ったら友人に軽蔑されるかも」と恐れから、本音を言えないだけでなく、友人に嘘をついていると感じて罪悪感を強く持っていたからです。

Yさんはその後、親友に「こんなこと言ったら薄情な人間だと思われるかもしれないけれど…」と前置きをし、「面会に行かずに休むことができて、今はほっとしている気持ちも大きいの」と伝えることができました。

すると、親友は「そりゃそうだよ! これまで、ものすごく頑張ってきたんだから」とねぎらう言葉とともに、「Yちゃんが自分の時間が取れていると聞けて、私も嬉しい」と喜んでくれたそうです。Yさんは「本音を話すと嫌われるのではないか」との不安が解消されただけでなく、友人との関係性がより深まったと話してくれました。

面会制限によって、不安な思いや悲しい気持ちを抱えているご家族もいらっしゃることでしょう。同時に、介護者自身が休息を取り、友人と楽しむ時間ができたという体験をされている方もいらっしゃいます。どちらがいい、悪いではなく、それぞれ今大切にしたいものの優先順位が異なるだけだと私は思います。

「面会が叶わず、不安で苦しい」という気持ちも、「面会に行かなくて良くなったことで、ほっとしている」との気持ちも、どちらも安心して話せる場所や機会が増えることを願っています。

みなさんが家族間で抱えている悩み、介護で経験されていること、対策をとられていることをぜひ教えてください。お困りのことやご相談には、こちらの「介護の教科書」の記事でお答えできればと考えています。

申し込みフォームリンク

「介護サービスを嫌がって使ってくれない」といった日々の介護の悩みについては、拙書『がんばらない介護』で解説をしています。ぜひ、手にとって参考にしていただければと思います。

関連記事
介護者を悩ませる在宅介護か施設入居の選択。決断する前に今すぐやるべきこと
介護者を悩ませる在宅介護か施設入居の選択。決断する前に今すぐやるべきこと

橋中 今日子
介護者メンタルケア協会 代表
2022/05/26

キーワードから記事を探す

#親の介護 #介護予防 #老人ホームへの入居 #介護保険サービス #看取り・終活 #高齢者の健康 #嚥下 #地域包括支援センター #介護食 #介護にかかるお金 #薬 #フレイル #仕事と介護の両立

【事例あり】過剰な責任感で介護うつになる人の特徴! 自覚なく追い詰められるパターンとは?

!
記事へのご要望
お待ちしてます


この記事へのご要望、
お聞かせください

みんなの介護は皆さまの声をもとに制作を行っています。
本記事について「この箇所をより詳しく知りたい」「こんな解説があればもっとわかりやすい」などのご意見を、ぜひお聞かせください。

年齢

ご要望を
受け付けました!

貴重なご意見を
ありがとうございました。

頂戴したご意見は今後のより良い記事づくりの
参考にさせていただきます!