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第86回

母親の介護がトラウマに…気持ちを書き出して本音を視覚的にも整理しよう

最終更新日時 2023/05/26
#親の介護 #老人ホームへの入居
目 次

当協会には、要介護者が施設入居したあと「面会に行くのが気が重い」と感じ、足が遠のいてしまう家族介護者からの声が寄せられます。「自分は冷たい人間だ」と自責の念にかられ、苦しんでいる方も多いです。

今回は、母親の在宅介護中の苦しい体験を「病気だから仕方がない」と抑え込み続けていたBさんのケースをご紹介します。

【事例】Bさん(50代・女性)

関西地方に住むBさんの両親は、九州の実家で二人暮らしをしていました。膝が悪い母親を支えていた父親が7年前に突然死したため、Bさんは母親を関西に呼び寄せ、夫の協力を得ながら3人で生活していました。

しかし、2年ほど前から母親に物忘れ症状が出始め、アルツハイマー型認知症と診断されました。穏やかで社交的だった母親が「メガネがなくなった」「財布がない」と大騒ぎし「あんたが盗んだんでしょう!!」と怒鳴ったり、時には暴力を振るうこともあります。

一晩中探し物をしては日中に眠るといった昼夜逆転状態になった母親の世話で、Bさんは寝不足が続き、体調を崩してしまいました。

画像提供:Adobe Stock

ある日、Bさんの夫に大病が見つかって入院、手術が必要になりました。ケアマネージャーが手を尽くしてくれて、母親はグループホームに入居することができました。

きっかけは夫の発病でしたが、在宅介護を続けるのが難しい状況だったことは、Bさん自身も頭では理解しています。しかし「私がもっと自己管理できていたら」「もっと母に寄り添えていたら」と、自責の念も抱えています。

幸いなことに夫の術後の経過は順調で、Bさんも少しずつ体調が良くなってきたのですが、なぜか母親の暮らすグループホームに面会に行こうとすると身体がすくみ、足が動きません。

用事や仕事を理由に訪問を避け、明日にしよう、来週にしよう、と先延ばしにしてしまうのです。「私は本当に薄情な娘だ」と、Bさんはさらに自分を責めて苦しんでいました。

「もう関わりたくない!」在宅介護中の体験がトラウマに

私は、Bさんに「面会に行かなければ」と感じる気持ちと、「行きたくない」と感じる気持ちについて、それぞれ書き出しながら頭の中を整理してみてもらいました。すると、以下のような気持ちがあることがわかりました。

「面会に行かなきゃ!」

  • 父が突然死した体験から、母に対しては後悔したくない
  • できる限りのことをしてあげたいし、するべきだ
  • 母の寂しいはずだから、寄り添いたいし、寄り添うべき
  • 長女として、責任を果たさねばならない

「面会に行きたくない!」

  • 寂しそうな顔をしている様子を見たくない
  • つらそうに過ごしていたらどうしよう?
  • 帰りたいと言われたら、どう対応したらいいかわからない
  • 自分のせいで、母に悲しい思いをさせてしまっているのでは?

相反する気持ちを書き出して視覚化することで、気持ちの整理が進んだBさんは、隠れていたもう一つの本音があることに気がつきました。

画像提供:Adobe Stock

それは「もうこれ以上母には関わりたくない!」という気持ちです。Bさんは、在宅介護の状況を「一時期、母の暴言と暴力が酷かったんです。許せないような暴言をたくさん投げつけられ、不眠症になりました。過呼吸で倒れたこともあるんです」とサラリと話されました。

そこで私が「病気がそうさせているんだから仕方ない。母を責めてはいけないと納得しようとしていませんか?」と尋ねたところ、Bさんは絶句し、目から涙がボロボロとこぼれ落ちたのです。

「確かに、母の言動は病気だから仕方ないって思いこもうとしていました。でも、夫が病気になったのはそんな言動をし続けた母のせいだ、もう関わりたくない、と思うことがあるんです。でも、そもそも母をこちらに呼び寄せたのは私だから……」と言葉を詰まらせながら、これまで誰にも話せていなかった気持ちを吐露されました。

Bさん自身も気がついていませんでしたが、Bさんには「これ以上母の介護に関わると、夫の命を奪ってしまうのでは」という恐怖心まで生まれていました。

Bさんは、母親からの理不尽な暴言や暴力が大きなトラウマ体験になっていたのです。しかし、誰かに話したい、わかってもらいたいと思いつつ、心にずっと蓋をし続けてきたことに気がつきました。

自分でも気がつきにくい心の負担

私は、Bさんに、しばらく夫との時間を優先するようアドバイスしました。1ヵ月ほどたって、気持ちに余裕ができたBさんは「私のせいでごめんね」と夫に謝ったところ「何の話?」とポカンとされて、自分の悩みが取り越し苦労だったことに気がつきました。

そして、母親の介護で傷ついたことや、これまで夫に負い目を感じていたことを打ち明けることができたのです。

夫から「お母さんのところに行くのが辛いのであれば一緒に行くし、着替えを届けるぐらいなら僕でもできる。まず、君自身がしっかり休んで健康になってくれる方が、僕も安心できる」と言ってもらえたBさんは、面会に行けずに苦しんでいる気持ちがずいぶん楽になったそうです。

その後、面会を再開でき「母が穏やかな顔で過ごしているのを見て、ほっとしました」と報告してくれました。

Bさんのように家族との関係が良好なケースでも、主介護者は、介護負担に加えて苦しい気持ちを一人で抱え、孤独感をつのらせていくものです。

自分の気持ちや感情を書き出して整理すると、苦しい気持ちの源に気がつき、心の負担を大きく減らすことができるでしょう。配偶者や家族の理解や協力を得られない場合は、ケマネージャーや地域包括支援センターに、胸のうちを率直に打ち明けてみてください。

みなさんが家族間で抱えている悩み、介護で経験されていること、対策をとられていることをぜひ教えてください。お困りのことやご相談には、こちらの「介護の教科書」の記事でお答えできればと考えています。

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