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第75回

兄弟の価値観が合わない時の対処法とは?介護で起こりやすい意見の対立と解決策を紹介

最終更新日時 2022/06/27
#親の介護
介護相談の多くが、きょうだいが協力しない、負担に差があるなどといった家族関係の悩みです。きょうだいとはいえ、仕事や生活環境も違えば考え方や価値観も当然違います。いざ親に介護が必要になったとき、その違いがトラブルに発展することは少なくありません。しかし、価値観や考え方の違いをもつきょうだいの意見は、私たちを助けてくれることもあります。

【事例】海外に住む兄が、母親の施設入居を勝手に進めてしまった!

関東地方に住む会社員Oさん(50代・女性)の事例です。

Oさんは、父親の他界後実家に戻り、認知症の母親(要介護2)の母親と二人暮らしをしていました。

母親との生活は意外にも楽しく、Oさんはやりがいを感じていました。実家へ戻って暮らすのは上京以来初めてのことで、地元の環境の良さを再発見することもあり、新鮮だったそうです。

コロナ禍で働き方も変わり、母親との暮らしも順調でした。ところが3ヵ月前、Oさんに乳がんが見つかったのです。

幸いなことに早期発見ですぐに手術を受けることができ、経過も順調。入院中、母親には緊急ショートステイで対応してもらいました。

自分の治療を進めながら、仕事と母親の介護を続けていこうと、前向きな気持ちで退院したOさんを待っていたのは、驚くべき事実でした。

なんと、Oさんと母親のサポートのために海外勤務から一時帰国していた兄が、一言の相談もなく母親の施設入居の手続きを進めていたのです。

Oさんは兄に抗議しましたが「自分の身体の治療が最優先だろう。母さんと二人で共倒れするつもりか?これ以上俺に迷惑かけるな!」と怒鳴られ、話し合いどころではありません。

Oさんは「自分が病気をしなければ、母親の生活を守れたのに…」と落ち込むと同時に、兄への怒りに震えました。

そして「早く元気になって母親に家に帰ってきてもらうんだ、それを支えに治療に集中しよう!」と決意したのです。

このお話を聞いて、みなさんはどう感じるでしょうか。

「ひどいお兄さんだ!」と怒る人もいれば、「Oさんの気持ちはわかるけれど、病気の治療と介護に加えて、仕事の両立は難しいのではないか?」と考える人など、さまざまな意見が出るケースでしょう。

主介護者は、優先順位を見失いがちになることも

この事例には、続きがあります。

強い決意を持って日常に戻ったOさんでしたが、その後の抗がん治療期間に入って状況が一変しました。食欲不振から始まり、全身の倦怠感やしびれなど、さまざまな症状に翻弄されたのです。

体の調子が悪いと、気持ちも塞ぎがちになります。「治療に耐えられるだろうか?」「仕事に復帰できるだろうか?」「再発しないだろうか?」と弱気な思いも出てきます。

治療中に新型コロナウイルスに感染すると重症化しやすいとも聞き、怖くて外出すらできない日々が続きました。

「あの状態では、母の介護どころではありませんでした。悔しいけれど、兄の選択は正解だったのかもしれません」。母親を自分一人で支えられるという考えは甘かったと感じるようになったと、Oさんは話していました。

介護は大変なことが多いですが、自分のかかわりで相手の笑顔が見られたり、元気になったりと、達成感が感じられるものです。そのため「わたしがやらなければ!」と使命感が目覚め、のめりこんでいく主介護者も珍しくありません。

やりがいを感じて介護に取り組むのが悪いことだとは言いませんが、自分の体調や仕事、プライベートよりも介護を優先することが増え、心身のバランスを崩すまで熱中するのは避けたいものです。

介護にのめり込んで体調を崩すこともある

Oさんは大病の直後であり、治療と自分の生活を優先すべき時期でした。

強い決意があったとしても、気力や精神力だけではなんともなりません。辛い結果ではありましたが、違う視点をもつ兄の選択が、Oさんの心身と母親の健康を守ったのです。

主介護者であるOさんに、相談なく母親の施設入居を進めた点は、正しいと評価できないかもしれません。在宅サービスを含めたさまざまな支援を受けながら、自宅で母親の生活をサポートする方法を模索できたのも事実だからです。

理想的には、母親の意向とOさんの気持ちを聞いたうえでの選択の方が望ましいと言えます。ただ、推測でしかありませんが、一時帰国という限られた時間の中では、これが兄なりの最善の策だったのではないでしょうか。

意見のすれ違いは当然起こりうる

抗がん剤治療を終えたOさんは、定期的に通院しながら仕事を再開しました。新型コロナウイルスの感染状況が落ち着き始め、母親が入居する施設も、短い時間ではあるものの面会が可能になりました。

また、兄からは毎月、母親の元へ花の宅配が届いています。兄なりにできることをしてくれているのだと思うと、Oさんは少しだけ、許す気持ちが湧いてきたそうです。

Oさんの場合は、トラブルの後にすれ違いが修正されつつある、幸運なケースだといえます。修復不可能なほど関係性が悪化してしまったという声も、私の元へは多く届いています。

これまで仲が良かったとしても、いざ介護に向き合う際は、お互いが納得できるような合意、選択肢が決められるわけではありません。何かしら、もどかしさや違和感が残ることの方が自然です。

誤解を恐れずにいえば「家族だから、協力して乗り越えるのが当然だ」という考えは幻想でしょう。

親や配偶者が病に倒れた、障がいを負った、介護が必要になった…そんなときに皆で協力し合えれば良いのですが、現実は意見がすれ違い、トラブルに発展することが多いのです。

介護に関して、きょうだい間で話し合うときは「すれ違って当たり前」と念頭に置いてください。自分の気持ちにも余裕が生まれ、相手の意見の中にも納得できる点が見つかるかもしれません。

すれ違いは当然だと考える

みなさんが家族間で抱えている悩み、介護で経験されていること、対策をとられていることをぜひ教えてください。お困りのことやご相談には、こちらの「介護の教科書」の記事でお答えできればと考えています。

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