一般的に「高カロリーは健康に悪い」というイメージが浸透しています。確かに、高カロリー食材を食べると肥満につながり、メタボリックシンドロームや糖尿病などの生活習慣病を招く可能性があります。
しかし、高齢者の場合は、ある程度高カロリーな食事をするべきだとも言われています。痩せた高齢者ほど死亡率が高いというデータもあるからです。
毎日元気で過ごすためには、高カロリーな食材を活用して、適切なBMI(肥満指数)を保つことが大切です。今回は高齢者がたくさんのエネルギーを必要とする理由や、高カロリー食材による健康維持のすすめなどを紹介します。
活動量が少ない高齢者がエネルギー量を必要とする理由
高齢者がエネルギー量を必要とする理由は、さまざまな病気を抱えていることが多いからです。一般的に高齢者は出歩く機会も減りがちで、活動量が少なくなる傾向があります。
そのため、エネルギー消費量も少なくなりやすいのです。しかし、高齢者の場合、活動量だけでエネルギー消費量を測ることはできません。病気によって体が炎症を起こしていると、そのためにエネルギーがどんどん消費されるからです。
例えば、膝の人工関節を入れる手術をしたとします。手術箇所は当然ながら炎症を起こし、エネルギーの消費量が増加します。加えて、発熱があればさらに多くのエネルギーを消費します。
また、がんの療養中や骨折、発熱している場合も同様にエネルギーを消費しています。
そのため、活動量が少ない高齢者でも、多くのエネルギー量を必要とするケースが多いのです。
BMIの低い高齢者ほど死亡率が高い
BMIは肥満や低体重に用いられる指標で、「体重(kg)÷身長(m)×身長(m)」で計算されます。
日本の中高年を対象にした国立がん研究センターの研究によると、最も死亡率が高いBMI値は男女ともに14~18.9。男性で見ると最も死亡率が低いBMI25~26.9の人と比べると、約80%高くなっています。
一般的にBMIが高い(30以上)と肥満による疾病リスクが上がるとされ、適切なBMIにするよう求められています。しかし、高齢者の場合、BMIが低すぎると体に蓄えられているたんぱく食の量が少ないため、感染症にかかりやすくなるなどのデメリットが大きくなります。そのため、肺炎などの重篤な疾病を招きやすく、死亡するリスクが高まるのです。

高齢者は「高カロリー」が健康維持の秘訣?
胃の消化の機能が落ちている高齢者にとって、たくさんの食事からエネルギーを確保するのは至難の業です。そこで役に立つのが「高カロリー」な食事です。
とはいえ、毎日揚げ物などの食事をすすめるのは、栄養の偏りなどが心配になります。そこで、無理なくエネルギーを確保できる食事をご紹介します。
おすすめの高カロリー食材や調理法
【食材】
- 脂質の多い肉(牛肉、豚肉など)
- 油脂(油、バターなど)
- 乳製品(牛乳、チーズなど)
【調理法】
- 和洋中さまざまな調理法にする
- 甘辛い味付けにする
脂っこい食事が苦手なら、オリーブオイルなどのさっぱりとした油脂を料理に加えるだけでも、エネルギー量が増加します。
和食は油脂を使わない料理が多く、エネルギー量が少なくなりがちなため、洋食や中華なども適宜取り入れましょう。また、砂糖やみりんなどで甘辛い味付けにするとエネルギーを確保できます。
3食のモデル
- 朝食:パン(バターを塗る)、目玉焼き、牛乳
- 昼食:ごはん、牛肉のすき焼き風煮、味噌汁
- 夕食:ごはん、サケの照り焼き、ほうれん草のおひたし、味噌汁
栄養補助食品を活用する
食欲がない場合や、嚥下(えんげ)機能が弱まっている場合は、栄養補助食品を利用するのもおすすめです。最近ではドラッグストアでも栄養補助食品が販売されているので、気軽に手に入れられます。
例えば、ドリンクタイプの栄養補助食品なら、1本で200カロリー程度摂れるものもあり、健康維持にピッタリな商品が数多くあります。もし、どの栄養補助食品を選べばいいかわからない場合は、かかりつけ医か管理栄養士に相談してみましょう。管理栄養士は、ドラッグストアや調剤薬局に在籍していることもあります。

高齢者は程度の差はあっても、病気を抱えているケースがほとんどです。自分自身や家族に当てはまると思った方は、ぜひ効率的にカロリーを摂取する方法を試してみてください。高齢者こそしっかりエネルギーを確保して、毎日をイキイキと過ごしたいものです。