こんにちは、管理栄養士の端場愛です。冬になると、高齢者の方がもちで窒息したというニュースを耳にすることがあります。もちは縁起物の側面もあり、ハレの日には欠かせない食べものです。
縁起物を大事にする高齢者も多く、毎年正月には欠かさず食べる方も多くいます。しかし、もちは高齢者にとって窒息のリスクが高い食べもの。消費者庁のデータによると、1年間のもちによる窒息事故のうち43%が1月に集中しているそうです。もちを食べる機会が多い1月は、特に気を付けなくてはなりません。
この記事では、「なぜもちがこれほどまでに危険なのか」「介護食でもちを楽しむ方法はあるのか」を説明し、おすすめレシピを紹介いたします。
高齢者の死因になるもちの危険性
もちは、摂食嚥下能力が低下した高齢者にとって危険な食べ物です。その理由は「嚙み切りにくい」「のどに張りつく」の2つにあります。
もちは粘りが強く、嚙んでも口の中でくっついてしまうこともあります。その状態で飲み込むと、大きなもちがのどに流れ込みます。さらに、ベタベタしているので、のどに張りつきやすく、なかなかのどを通りません。そのため、窒息につながりやすいのです。健康な人が食べてもヒヤッとすることがあるのに、摂食・嚥下能力が低下している高齢者が食べると、余計にリスクが高くなってしまいます。
また、ほかの食品と比べてもちは粘度が強く、のどから取り出しにくいのも危険な点です。万が一のどに詰まった場合、簡単に出てこないケースも多いので、呼吸が停止する時間が長くなってしまいます。
介護食としてもちを楽しむ方法
もちは摂食嚥下能力が低下した高齢者にとって危険だと説明しましたが、工夫すれば高齢者でも、もちを楽しめます。
- 1.小さく切って少しずつ食べる
- もちを小さく薄く切ると安全に食べられます。ただし、小さく切ったからといって絶対に安全とはいい切れません。高齢者がもちを食べるときは、必ず誰かがそばにいるようにしましょう。また、少しずつ口に入れてください。一度に食べると小さく切っても、口の中でくっつきやすくなります。
- 2.水分を一緒にとる
- 焼いたもちをそのまま食べると、水分がないので余計のどに張りつきやすくなります。そこで、汁物の中に入れるか、大根おろしなど水分のある食材と合わせるようにしましょう。もちを食べる前後にお茶などを飲んで、口腔内を潤しておくことも大切です。
- 3.もちの代替品を利用する
- 摂食嚥下能力が低下している場合は、先述の方法をとっても窒息リスクが高まります。そこでおすすめしたいのが、もちの代用品です。もちに似た食感なのに粘性が低い白玉団子や、介護用に作られたもちを利用してみましょう。
白玉団子は既製品ではなく、白玉粉に豆腐を混ぜた手作りのものがおすすめです。豆腐を入れることで嚙み切りやすくなり、安全性が高まります。白玉団子も危険な場合は、片栗粉と豆腐を混ぜて団子状にしたものが良いでしょう。より歯切れがよく安全に食べられます。
介護用のもちは介護用品店や通販サイトで手に入ります。粘りがあまりなく、歯にくっつきにくいので、高齢者でも食べやすいのが特徴です。

もちの代用品を利用した簡単レシピ3つ
ここからは、餅の代用品を利用したおすすめレシピを3つ紹介します。まずはレシピに餅の代用品のつくり方をご紹介いたします。
2種類の代用もち
・豆腐入り白玉団子
ボウルに絹ごし豆腐と白玉粉を1:1の分量で入れ、耳たぶの固さになるまでこねます。食べやすい大きさに丸めたら、軽くつぶして中央をへこませてください。お湯を沸かした鍋に団子を入れ、浮き上がってきたら2分ゆでましょう。火が通ったら、氷水をはったボウルにとります。
・片栗粉と豆腐のもち
片栗粉40gに絹ごし豆腐80gを合わせてよく混ぜましょう。油を引いたフライパンにスプーンを使って生地を落とし、両面をこんがりと焼きます。
- 1.お雑煮
- だし汁に薄口しょうゆ、酒、塩を加えて味を整えます。だし汁を入れた別の鍋で、飾り切りにしたにんじんと、大根(またはカブ)、青菜、しいたけを火が通るまで煮ましょう。お椀に味を整えただし汁と野菜を盛り込み、もちの代用品を加えたら完成です。正月といえばお雑煮。今回はすまし汁仕立てにしましたが、各地方の味に変えても良いですね。
- 2.おろし納豆もち
- 代用もちに青のりを軽くふり、大根おろしと納豆を上に乗せ、好みでしょうゆを垂らせば完成です。飲み込みが心配なら、とろみをつけただし汁をもちにかけてください。朝食やおやつにおすすめです。大根おろしの水分と納豆のとろみで、代用もちがより食べやすくなります。嚥下能力に問題がない方は、通常のもちを使用しても良いでしょう。
- 3.豆乳入り白玉ぜんざい
- あずき缶に無調整豆乳を注ぎ、沸騰しない程度に温めます。そこに代用もちを加えたら完成です。豆乳を使用するので、たんぱく質も補給できます。寒い時期にぴったりのおやつです。

もちはお正月に欠かせない食べものですが、一歩間違えれば窒息の危険が高まります。もちを食べる際は「誰かがいる場合にする」「小さく切る」「たくさん口に入れない」「水分と一緒にとる」の4点に注意してください。摂食嚥下能力が低下していて、もちを食べられない場合は代用品を利用すると良いでしょう。今回紹介したレシピを参考にして、みんなと一緒にもちを楽しんでくださいね。