皆さん、こんにちは。(公社)大分県栄養士会の栄養ケア・ステーションを担当している、管理栄養士の濱田美紀です。
今回は、「食事による高血圧対策」についてお話していきたいと思います。
食事を含む生活習慣の改善は高血圧予防で重要
皆さまは、ご自身の普段の血圧を知っていますか。私のかかわっている高齢者さんのほとんどが、血圧を下げる薬(降圧剤)を服用しています。なぜ、年を取ると血圧が上がるのでしょうか。
厚生労働省が公開している『日本人の食事摂取基準(2020年版)』によると、高血圧の発症・増悪(次第に悪化していくこと)は「環境要因(生活習慣)」と「遺伝要因」の相互作用から成り立っているとのこと。また、食事を含めた生活習慣の改善は、高血圧の改善や重症化予防のみでなく、発症予防においても重要と記載されています。
高血圧を「症状がないから」と放置するのは危険です。時折「血圧を測る」「(心配な方は)病院での受診を行う」といった、日頃からの予防を継続してほしいと思います。
減塩は調味料や食品選びで無理なく続けよう
高血圧予防を行うのであれば、食塩の取りすぎには気をつけましょう。同資料にとると、1日の食塩摂取量の目標量は15歳以上の男性で7.5g未満、成人相当の女性で6.5g未満となっています。皆さまは、どの程度の食塩を毎日取り入れているか考えたことはありますか。
スーパーなどで売っているほとんどの食品には、「食塩相当量(g)」という表示があります。普段の食事の食塩相当量を確認してみると、目標量より多く食塩を摂取している方が多いのではないでしょうか。高血圧になる要因は年を取るだけではなく、食塩の取りすぎが続くことでも当てはまります。
高血圧予防として減塩を行うことはとても大切です。とはいえ、日頃から無理に減塩を行ってもおいしくない料理を食べるだけ。せっかくならおいしい料理を食べたいですよね。そこで、日頃から常に減塩することを目標にするのではなく、「できそうな減塩」を目標にしたほうが継続できるのではないでしょうか?
例えば、以下のような目標が挙げられます。
- 麺類が好きで良く食べている方は汁を残す日を増やす
- おかずや漬けものに調味料をかけないと食べられない方は、「柚子」や「かぼす」などの香辛料をかけて食べてみたり、減塩の調味料を試す
- お惣菜やお弁当をよく食べる方は容器に記載されている食塩相当量を意識し、少ないものを選ぶ
これら以外にもあると思いますが、ご自分の食生活に自然と取り入れることのできる減塩を試してみてください。
ダイエットで高血圧予防
高血圧予防で気をつけるべきなのは、食塩相当量だけではありません。「肥満」も高血圧のリスクとなります。ダイエットして体重を落とすことで血圧が下がるというデータもありますので、病院などで主治医から「体重を減らしましょう」と言われた方はダイエットをお勧めします。
とはいえ、ダイエットも減塩と同じようになかなか実行できない方が多いです。特に高齢者の方の中には、「今更食べるものを減らしたくない」「今、元気だから大丈夫」と言う方もいらっしゃいます。しかし、高血圧の状態を維持していては、「脳心血管病」などの生活習慣病を引き起こしてしまう可能性もありますよね。
そこで筆者が実際にお奨めした方法でダイエットに成功した方の事例を紹介します。
食事をよく噛んでゆっくり楽しんで食べる
ひとくち食べる度に箸を置き、飲み込んでから次の料理を口に入れましょう。これを継続した80代女性の肥満の方が、3ヵ月で5kgの減量に成功しました。
おやつの容量が小さいものを買う
おやつ(間食)をつい食べ過ぎている方には、記載されているエネルギー量を確認して購入することや、食べもの1個の大きさが小さいものを選んで食べられないストレスを減らすように勧めました。その結果、意識しておやつの内容を変更し、減量することができました。
上記を奨めた方には食べることだけでなく、家事を行ったり散歩したりなど、習慣的に動くことで毎日の活動量を上げて、使うエネルギーを増やすようにも伝えました。2つの事例はご本人の「痩せたい」という意識も結果に寄与しましたが筆者が対応しているほとんどの方は、体重が増えないようにすることに精いっぱいで痩せる方は少ないです。しかし、かかわる方の声かけで本人の意識も変化しますので、根気よくダイエットを勧めてみてください。
野菜やきのこ、魚介をあわせてカリウムを摂取
高血圧を下げるほかの方法としては、血圧を下げる栄養素の「カリウム」を食事に取り入れることも大切です。「カリウム」はさまざまな食材に含まれていますが、特に野菜やきのこ類、海藻類や魚介類、果物に多く含まれています。
カリウムは、水に溶けやすい水溶性の栄養素で、調理するときにゆでたりこぼすと量が減ってしまいます。なので、野菜の場合は皮のある状態で切ってきのこや魚を入れることをお勧めします。具だくさんのスープや鍋にすれば、水に溶け出たカリウムも一緒に食べられます。
若いうちから生活習慣の改善を
2011年の国際連合から「生活習慣病対策のために世界全体がとるべき5つのアクション」が発表されています。その中の5つは以下の通りです。
- たばこ
- 食塩の過剰摂取
- 肥満、不健康な食事、運動不足
- 有害飲酒
- 心血管系疾患のリスクの低下
これを見ると、これまでに説明してきた減塩や肥満の解消などが生活習慣病の対策にとても大切だということがわかります。この5つのアクションは年を取ってから気をつけるのではなく、若い頃から行うことが重要です。元気に年を取るイメージを持って、今から生活習慣の改善を図ってほしいと思います。