皆さん、こんにちは。(公社)大分県栄養士会の栄養ケア・ステーションを担当している、管理栄養士の濱田美紀です。
歳をとっていくと、「運動する機会が減って食欲がない」「義歯が合わなくて食べにくい」「一人暮らしで食事が楽しくない」「調理ができないからいつも簡単なものしか食べられない」といったことから今までよりも食べる量が減ってしまい、生活するのに必要な栄養が足りなくなってしまう方がいます。
そうなると、介護者が気づいたときにはほとんど外出しない・できなくなってしまう場合も。今回は、私が高齢者の献立を立てていく中で、「意識していないと不足しがちな栄養素と、その不足分を補うための簡単な調理レシピ」を紹介します。
不足しがちな栄養素とその役割
- タンパク質
- 筋肉や臓器、血液、骨、髪の毛、つめといった私たちの体をつくる栄養素です。ほかにも身体を動かすエネルギー源にもなります。体内の代謝や、機能の調整を行う酵素やホルモンはこのタンパク質からできており、不足すると体全体の機能が低下してしまう恐れがあります。
- カルシウム
- 人間の骨や歯をつくることに大きくかかわる栄養素ということはよく知られていますが、ホルモンの分泌や血液を凝固させるといった生理機能にもかかわっています。不足すると高齢者においては骨がもろくなる骨粗鬆症の恐れがありますが、これは必要なカルシウムを摂ることだけでなく、運動などの生活習慣も関係してくるといわれています。
- 乳製品にしか含まれていないと思っている方も多いかもしれませんが、実は大豆製品や乾燥野菜、骨ごと食べられる魚の缶詰めや小魚にもカルシウムは含まれているんです。嗜好に合わせて食べやすい食材を見つけましょう。
- ビタミンE
- 老化や生活習慣病予防が期待されているビタミンです。脂溶性のビタミンで、油料理と合わせて食べると効率よく吸収されます。長期にわたり不足すると、溶血性の貧血の原因になったり、動脈硬化をはじめとした生活習慣病や老化のリスクを高める心配があります。身近な食材では、カボチャやツナ油漬け缶やウナギのかば焼きに多く含まれます。
- 食物繊維
- 水に溶けない不溶性食物繊維と、水に溶ける水溶性食物繊維があります。排便をスムーズにし、血糖値の上昇をゆるやかにしたり(水溶性食物繊維)、コレステロールの吸収を防いでくれる栄養素です。
- しっかり噛まないと食べにくいものが多く、噛む力が弱くなっている高齢者さんでは不足しがち。不足すると便秘になる恐れがあります。
ほかにも大事な栄養素はたくさんありますが、たくさんの高齢者さんの食事を見ている中で、特に不足が心配されるものをあげてみました。
栄養素を補う簡単レシピ
次はこれらの栄養素を摂ることも考えながら、毎日の食事に取り入れることのできる工夫を紹介します。
- 肉豆腐
- 牛肉と木綿豆腐、家にある野菜(人参・玉葱・きのこ類など)をしょう油と料理酒、砂糖(みりん)で煮ます。タンパク質・カルシウムがたっぷりです。
- カボチャの煮物のアレンジ
- カボチャをミンチ肉やツナ缶を入れて出し汁、しょうゆ、砂糖やみりんで煮るだけ。牛乳と小豆を入れて、甘く煮てもおいしいですね。タンパク質やビタミンEを摂ることができます。牛乳を入れれば、カルシウムも摂れます。
- チラシずし+ウナギのかば焼き
- 白米にチラシずしの素、ウナギのかば焼きを細かく切ったものをさっと混ぜます。つくれる方はチラシ寿司から作ってくださいね。ウナギのかば焼きには、タンパク質もビタミンEもカルシウムも含まれています。
- カレー(シチュー)+ゆで大豆+きのこ+卵
- これだけでタンパク質や食物繊維、カルシウムを摂ることができます。カレーやシチューを調理することが大変な方でも、レトルトのものを使って準備できそうなものを追加してみてください。
- 食物繊維を増やす工夫
- 白米から雑穀米(五穀米や押し麦・もち麦などを米に混ぜて炊く)にすることで、無理なく食物繊維摂取量を増やすことができます。さらに、納豆と卵を乗せるとタンパク質、カルシウムビタミンEを摂る量もアップ。時間もかからず簡単です。
- おからパウダー
- おからは豆腐をつくるときにできるもので、食物繊維やタンパク質、ビタミンやミネラルといった体に必要な栄養素が含まれています。おからパウダーは、そのおからを乾燥させて、保存ができるようにしたもの。スーパーでいろいろな種類のものが販売されています。
- このおからパウダーも、おからと同様の栄養成分が含まれていて、ヨーグルトや野菜ジュース、カレーライスなどに入れるだけで、不足しがちな栄養素を摂ることができます。
今回は高齢者にとって不足しやすい栄養素と、それを補う簡単レシピについてお話させていただきました。これを参考に、健康的でおいしい食事づくりに励んでみてください。