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第57回

【介護休暇制度とは?】法律で定められた取得条件と給与・期間を徹底解説!2025年改正のポイントも

最終更新日時 2024/10/03
目 次

介護休暇制度とは?法的根拠と基本的な仕組み

介護休暇制度は、家族の介護を行う労働者を支援するために設けられた法定の休暇制度です。この制度は、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(通称、育児・介護休業法)に基づいて定められています。介護休暇は、要介護状態にある家族の介護や世話をするために、年間で一定日数取得できる休暇であり、労働者の仕事と介護の両立を図りやすくすることを目的としています。

介護休暇の法的根拠と目的

介護休暇制度の法的根拠は、育児・介護休業法の第16条の5に定められています。この法律は、少子高齢化が進む日本社会において、仕事と家庭生活の調和を図ることを目的としています。

高齢化が進む日本社会において、介護の問題は多くの労働者に関わる重要な課題となっています。厚生労働省の平成29年就業構造基本調査によると、介護・看護を理由とする離職者は年間約10万人に上ります。

さらに、総務省の平成30年就業構造基本調査によれば、介護をしている人の約7割が働いており、その数は約346万人に達しています。これらの数字は、介護と仕事の両立支援の重要性を如実に示しており、社会全体にとって重要な課題であることを裏付けています。
 

介護休暇の基本的な仕組み

介護休暇の基本的な仕組みについて詳しく説明します。

まず、取得可能日数については、対象家族1人につき年間5日まで、2人以上の場合は年間10日までとなっています。2021年1月1日からは時間単位での取得が可能になり、より柔軟な制度利用が実現しました。例えば、朝に介護をし、1時間だけ遅れて出勤するといった使い方ができるようになりました。

対象となる家族は、配偶者、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫です。ここで注意すべき点は、同居・別居を問わずこれらの家族が対象となることです。つまり、遠方に住む親の介護のために休暇を取ることも可能です。

介護の範囲は直接的な介護だけでなく、通院の付き添いや介護サービスの手配なども含まれます。例えば、親の介護施設を探すために休暇を取ったり、介護保険の申請手続きのために市役所に行く際にも介護休暇を利用できます。

介護休暇は、年次有給休暇とは別に付与される休暇であり、労働者の権利として法律で保障されています。つまり、介護休暇を取得しても、年次有給休暇の日数に影響を与えることはありません。労働者は介護の必要が生じた際に、介護休暇を取得する権利があります。

使用者は、業務の正常な運営を妨げる場合を除き、介護休暇の申出を拒むことはできません。

介護休暇と介護休業の違い

介護休暇と介護休業は、どちらも仕事と介護の両立を支援する制度ですが、その目的や利用方法に違いがあります。

介護休暇短期的・突発的な介護ニーズに対応するためのものであり、年間5日(対象家族2人以上の場合は10日)まで取得でき、時間単位で利用可能です。例えば、要介護状態の家族の通院に付き添う場合や、急な体調不良に対応する場合などに利用されます。

一方、介護休業は長期的な介護に対応するための制度です。対象家族1人につき通算93日まで取得でき、3回まで分割して取得することができます。介護休業は、介護の体制を整えるために一定期間仕事を休む必要がある場合に利用されます。例えば、家族が要介護状態になった直後に介護サービスを手配したり、自宅の介護環境を整えたりする場合などに活用されます。

介護休暇は日々の介護や突発的な対応に、介護休業は介護の体制を整えるための期間として利用されることが想定されています。労働者は自身の状況に応じて、適切な制度を選択することが重要です。

例えば、親が突然入院し、退院後の介護体制を整える必要が生じた場合、最初は介護休暇を利用して病院での手続きや退院の準備を行い、その後介護休業を取得して自宅の環境整備や長期的な介護計画の策定を行う、といった使い方が考えられます。

また、介護休業中は介護休業給付金を受給できる可能性がありますが、介護休暇にはそのような給付金制度はありません。この点も、両者の大きな違いの一つです。

介護休業給付金は、休業前の賃金の一定割合(休業開始時賃金日額の67%、一定期間経過後は50%)が支給されるため、長期の介護に備える上で重要な経済的支援となります。

項目 介護休暇 介護休業
目的 短期的・突発的な介護ニーズに対応 長期的な介護に対応
取得可能期間 年間5日(対象家族2人以上の場合は10日) 対象家族1人につき通算93日まで
分割取得 時間単位で利用可能 3回まで分割して取得可能
給付金 なし 介護休業給付金あり(休業開始時賃金日額の67%、一定期間経過後は50%)
利用例 ・要介護状態の家族の通院に付き添う
・急な体調不良に対応する
・介護サービスの利用に関する相談や手続きを行う
・家族が要介護状態になった直後に介護サービスを手配する
・自宅の介護環境を整える
・長期的な介護計画を立てる

2025年改正で変わる介護休暇制度の詳細

2025年に施行される育児・介護休業法の改正により、介護休暇制度にもいくつかの変更が加えられます。この改正は、より多くの労働者が介護休暇を利用しやすくすることを目指しています。ここでは、改正の詳細とその影響について詳しく見ていきます。

勤続期間要件の撤廃

2025年の法改正で最も注目すべき点の一つが、勤続期間要件の撤廃です。現行制度では、勤続6ヶ月未満の労働者は、労使協定により介護休暇の対象外とすることが可能でした。しかし、改正後は勤続期間に関わらず、全ての労働者が介護休暇を取得できるようになります。

この改正がもたらす影響は大きいと考えられます。新卒入社直後や中途入社後すぐに家族の介護が必要になった場合でも、介護休暇を取得できるようになります。これにより、キャリアの初期段階にある労働者も、介護と仕事の両立がしやすくなります。また、転職後すぐに介護の必要性が生じた場合でも、介護休暇を利用できるようになります。これは、労働市場の流動性が高まる現代社会において、非常に重要な改正と言えるでしょう。

さらに、短期契約や派遣労働者など、勤続期間が短い非正規雇用労働者も、介護休暇を取得できるようになります。これにより、雇用形態による不利益が軽減されることが期待されます。

一方で、企業側には新たな負担が生じる可能性があります。特に、短期間で離職する可能性が高い労働者に対しても介護休暇を付与する必要が生じるため、人事管理の面で注意が必要となるでしょう。

この改正は、介護の問題が勤続年数に関係なく発生しうることを考慮したものであり、より公平で柔軟な労働環境の実現につながると期待されています。

画像提供:イラスト AC

個別周知と意向確認の義務化

2025年の改正では、事業主に対して新たな義務が課されます。この改正は、労働者の介護休暇制度の認知度を高め、より積極的な利用を促進することを目的としています。

まず、労働者が家族の介護に直面した旨を申し出た際に、事業主は両立支援制度について個別に周知する必要があります。また、その労働者の意向を確認することも求められます。これにより、介護に直面した労働者が適切な支援を受けられる可能性が高まります。例えば、介護休暇だけでなく、介護休業や短時間勤務制度など、その労働者の状況に最適な支援制度を案内することができます。

次に、40歳などの節目の年齢で、介護に関する情報提供を行うことが義務付けられます。40歳という年齢は、多くの人が親の介護に直面し始める時期と考えられています。この時期に情報提供を行うことで、労働者が事前に介護に関する準備を始められるようになります。例えば、親との話し合いを始めたり、将来の介護に備えて貯蓄を増やしたりする契機となる可能性があります。

さらに、介護休業制度の円滑な利用のための研修実施や相談窓口の設置などの雇用環境整備を行うことも事業主の責務となります。これにより、労働者が気軽に介護に関する相談をできる環境が整備されることが期待されます。また、管理職向けの研修などを通じて、職場全体の介護に対する理解が深まる可能性があります。

これらの措置により、労働者が介護休暇を含む両立支援制度をより認知し、活用しやすくなることが期待されます。同時に、企業側も従業員の介護ニーズを早期に把握し、適切な対応を取ることができるようになるでしょう。

テレワークの推進

2025年の改正では、家族の介護を行う労働者に対し、事業主はテレワークを可能とすることが努力義務となります。この改正は、新型コロナウイルス感染症の流行を機に広まったテレワークの経験を活かし、介護と仕事の両立をさらに支援することを目的としています。

テレワークには、通勤時間の削減、遠隔地に住む家族の介護と仕事の両立、フルタイムで働く日を増やすことが可能になるなどのメリットがあります。例えば、テレワークにより通勤時間が削減されることで、その時間を介護に充てることができます。朝の通勤時間を利用して、介護が必要な家族の朝食準備や身支度の手伝いができるようになります。

また、テレワークであれば、介護が必要な家族の自宅や近くの場所から仕事をすることが可能になります。これにより、遠距離介護の負担が軽減されます。例えば、親の住む実家に長期滞在しながら仕事を続けることができるようになります。

さらに、介護のために短時間勤務を選択していた労働者が、テレワークを活用することでフルタイムでの勤務に戻れる可能性があります。例えば、介護の合間の時間を有効活用して仕事を進めることができるようになります。

なお、厚生労働省の調査によると、テレワーカーの割合はコロナ禍で急増し、2023年時点でも2割を超えている状況です。

テレワーカーの割合

ただし、テレワークが困難な業種・職種があることを考慮し、この規定は努力義務とされています。事業主は、可能な範囲でテレワーク導入を検討することが求められます。

テレワークの導入は、介護と仕事の両立に大きな効果をもたらす可能性があります。例えば、介護施設に入所している家族の様子を確認するために、従来であれば1日休暇を取る必要があったケースでも、テレワークであれば午前中に施設を訪問し、午後は自宅で仕事をするといった柔軟な働き方が可能になります。

介護休暇の利用方法と注意点

介護休暇を効果的に利用するためには、その具体的な利用方法や注意点を理解しておくことが重要です。ここでは、介護休暇の申請手続きから、給与の取り扱い、利用時の留意点までを詳しく解説します。

介護休暇の申請手続き

介護休暇の申請手続きは、基本的に労働者が事業主に介護休暇の取得を申し出ることから始まります。事業主は、労働者の申し出を拒否することはできません。申し出は口頭でも可能ですが、会社によっては書面での申請を求める場合もあります。2025年の法改正後は、事業主による個別周知と意向確認が義務付けられるため、より円滑な申請が可能になると予想されます。

申請の際は、事前に会社の規定を確認することが大切です。また、可能な限り早めに上司や人事部門に相談することをおすすめします。介護の状況や必要な期間について、具体的に説明できるよう準備しておくとよいでしょう。

申請の際には、対象家族が要介護状態であることを説明し、介護休暇の取得希望日を明確にする必要があります。また、介護の内容(通院の付き添い、介護サービスの手配など)を説明し、時間単位で取得する場合は、具体的な時間帯を伝えることが重要です。

申請の具体例としては、次のようなものが考えられます。

「母が先日転倒し、来週から2週間ほど入院することになりました。入院中の付き添いと、退院後の介護サービスの手配のため、来週月曜日から金曜日まで、毎日午後2時から5時まで介護休暇を取得したいと思います。」

このように、具体的な状況と希望する休暇の日程を明確に伝えることが大切です。

また、介護休暇の取得を理由とした不利益取扱いは法律で禁止されています。

具体的には、解雇や契約更新の拒否、配置転換や降格、減給や賞与等における不利益な算定、不利益な評価や昇進・昇格の人事考課、専ら雑務に従事させるなど就業環境を害する行為などが禁止されています。万が一、介護休暇の取得を理由に不利益な扱いを受けた場合は、会社の相談窓口や労働基準監督署に相談することができます。

介護休暇中の給与・賃金について

介護休暇中の給与・賃金については、法律上の明確な規定がありません。そのため、会社ごとの規定に従うことになります。一般的には無給とする企業が多いですが、有給とする企業や、一部を有給とし残りを無給とする企業もあります。

給与・賃金に関する主な取り扱いパターンとしては、完全無給、完全有給、一部有給、給与カット、代替休暇などがあります。

完全無給の場合は介護休暇取得日の給与が支払われず、完全有給の場合は通常勤務と同様に給与が支払われます。一部有給の場合は、例えば1日の介護休暇のうち半日分は有給、残り半日分は無給とするなどの対応がとられます。

給与カットの場合は、基本給は支払われるが、諸手当(通勤手当など)が支給されないケースがあります。代替休暇は、介護休暇取得日の代わりに別の日に出勤することで、給与減額を避けるケースです。

給与・賃金に関しては、会社の就業規則や労働協約を確認することが重要です。無給の場合は、収入減少に備えて事前に計画を立てておく必要があります。有給の場合でも、手当等が支給されない可能性があるので注意が必要です。

なお、介護休暇とは異なりますが、介護休業を取得する場合は、一定の条件を満たせば介護休業給付金を受給できる可能性があります。介護休業給付金は、休業開始時賃金日額の67%(一定期間経過後は50%)が支給されます。

まとめ

介護休暇制度は、仕事と介護の両立を支援する重要な法的制度です。2025年の法改正により、さらに利用しやすい制度となることが期待されています。

介護休暇を効果的に利用するためには、制度の理解、適切な申請手続き、経済的な準備、柔軟な働き方の検討、介護保険サービスの活用、そして上司や同僚とのコミュニケーションが重要です。制度の基本的な仕組みや2025年の法改正による変更点を把握し、介護休暇と介護休業の違いを理解することが大切です。申請手続きの際は、会社の規定を事前に確認し、上司や人事部門と早めに相談することをおすすめします。

介護と仕事の両立は決して容易ではありませんが、介護休暇制度を含む様々な支援制度を適切に活用することで、より良いバランスを見出すことができるでしょう。労働者と企業が協力し合い、互いの理解を深めながら、介護と仕事の両立がより実現しやすい社会を目指していくことが求められています。介護休暇制度の改正は、そうした社会の実現に向けた重要な一歩と言えるでしょう。

最後に、介護に直面した際には躊躇せずに制度を利用し、必要な支援を受けることが大切です。同時に、日頃から介護に関する情報を収集し、準備をしておくことも重要です。介護は誰にでも起こり得る問題です。介護休暇制度についての理解を深め、いざという時に適切に対応できるよう備えておきましょう。

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