みなさん、こんにちは。医療・介護コンサルタントの星 多絵子です。
今回は、急性期病院に長期入院できない理由を説明します。
みなさんが救急車などで運ばれたとき、急いで手術したり検査する必要がある場合は、急性期病院で受け入れをされる場合が多くあります。
しかし、急性期病院に長く入院することは難しく、多くの患者さんの場合は退院したり、転院したりといった状況におかれます。
例えば骨折。よほど重度の複雑骨折などでない限り、急性期病院は骨折の治療が終わるとすぐに退院させる場合があります。
今回は、急性期病院からすぐに退院しなければならない理由を解説します。
患者・家族の不満
患者さんやそのご家族は、病院に対して「なぜすぐに追い出すのか」という不満を持つことが多い傾向にあります。
もちろん、これまで診てもらっていた医師や看護師、コメディカル(医師と医療を行う病院職員)に長く面倒を見てもらいたいという気持ちもあるでしょう。
ここで重要なのは、病院は決して患者さんを見放しているわけではないということです。
病院側には、患者・家族の長期入院の要望に応えることが難しい事情があります。
急性期病院に長期入院できない理由
急性期病院のなかでは、「救急病院」の方がみなさんにとって馴染みがあるでしょうか。
急性期病院とは救急車で患者さんが運ばれ、夜間外来も行われている病院などを指しますが、この急性期病院は長く入院することが難しいのが現状です。
その理由は3つあります。
医療制度が2週間での退院を推奨しているため
この診療報酬は公定価格として国が定めているため、医療政策の影響を受けて高くなったり低くなったりするのです。
そして急性期病院については、入院が14日を超えると報酬が大きく下がるように定められています。

つまり長期入院患者を多く抱えると、病院の経営が成り立たなくなる可能性が高まるのです。
“医療費の抑制”という目的が背景となっているのですが、もちろん病院も、具合の悪い患者をそのまま無理に退院させることはありません。
医療技術のレベルが上がり、長期入院が必要なくなったため
技術が進歩し、身体に大きな傷をつけなくても手術が行えるようになりました。
例えば、以前まで主流だったお腹を切開する手術に比べ、腹腔鏡(ふくくうきょう)手術では内視鏡を使うことで、体に3、4ヵ所の小さな穴を開けるだけで手術ができるため、傷が小さく、治りが早いのです。
このため、以前よりも長期入院をする必要性がなくなっています。

急性期病院の機能をきちんと発揮するため
症状の安定した患者でベッドが埋まっていたら、急な患者を受け入れられなくなってしまいます。
そのため、急性期病院は今いる患者さんを早く治療して、新たな患者さんを受け入れる必要があります。
ここまで解説したように、病院にはきちんとした事情があるため、長期入院できないのです。
治療の対価として設定されている診療報酬は病院の収入としてお金に代わり、病院はその中から医師の技術料など病院を経営するために必要な費用を捻出します。病院の役割による区分と介護との関係
急性期病院は長期入院の難易度が特に高い病院ですが、「急性期は脱したけれど、まだ入院治療が必要で…」といった場合には他の種類の病院に転院するなどの措置がとられます。
病院は以下の3種類に区分できるので、それぞれ見ていきましょう。
病院の種類
- 急性期病院
-
病気のなり始めで、病気やケガの症状が急激に現れている状態の人が入院する
長期入院が難しい
- 回復期病院
-
リハビリで身体的機能を回復させる必要のある人が入院する
リハビリによる回復を目指しているため、急性期病院ほど短くはないが一定の入院期間が決められている
- 慢性期病院
-
病状が安定しているが、医療的ケアが必要な状態の人が入院する
比較的長く入院できる
ただし、医療政策上では在宅復帰を行うことが推進されているので、入院できる期間には限度がある
まとめ
急性期病院に長期入院できない理由は3つです。
急性期病院に長期入院できない理由
- 長期入院の場合、診療報酬は低くなるから
- 医療技術が向上したことにより長期入院が必要ではなくなったから
- 急性期病院は、急な患者を受け入れられるようにベッドを空けておく必要があるから
以上のことから、医療の必要があれば長期入院できる病院に、必要がなければ介護施設に移ることが求められます。

