同居している高齢者に対して、困っていることや思う部分があっても角を立てたくないあまりに我慢してしまうことはありませんか?
「言ってもわかってもらえない」と諦めているつもりでも、我慢ができなくなりそうになり、辛い思いをしてしまうこともあるのではないでしょうか。
できれば角を立てず、悩みを解決したいものです。そこで、この記事では、高齢者に対しての悩みを、角を立てず解決する方法を紹介していきます。
高齢者に対して困ることがあっても上手く伝えられずモヤモヤ…
高齢者に対して思うことがあっても、それを上手く伝えられずモヤモヤしてしまうことがあります。以下では、同居の高齢者の行動に悩むSさんの事例を紹介していきます。
【事例】Sさん(50代・女性)のケース
Sさんは、義父(87歳)と夫との3人暮らしです。義父は、数年前から難聴で少し大きな声で話さないと言葉が伝わりません。
それはよいのですが、Sさんを悩ませているのは義父のテレビやラジオの音量です。義父は朝昼晩かまわず大音量でテレビを観ています。
隣の部屋にいるSさんは気になってしょうがなく、それがストレスになっているのです。また、ご近所トラブルに発展しないかという心配もあります。
何気なく補聴器の購入を勧めてみたこともありますが、昔から頑固な性格ということもあり「必要ない」の一点ばりで取り合ってもらえませんでした。
下手に本音を伝えてもヘソを曲げられてしまわないかと思い、Sさんはずっと我慢しているのです。
高齢者と同居している方で、Sさんのようなトラブルを体験したことがある方もいるのではないでしょうか?
特にプライドが高く頑固な方に対しては、困っていることを上手に伝えることが難しいと感じ悩んでしまう方もいるかもしれません。
困りごと別に対応策を考えていきましょう。
ケース別対応策
高齢者に対しての困りごとがあったとしても、それをストレートに伝えるのが難しいときもあります。
また、ストレートに伝えたからといって必ずしも解決するとは限りません。逆に関係がこじれてしまう恐れもあるため、角が立たない対応策を考えるとよいでしょう。
ここからは、ケース別の対応策の一例を紹介していきます。
ケース1:テレビ・ラジオの音量が大きい
上記の事例のようなケースは、実際によく耳にしました。筆者の祖父も難聴であったため、本人は無自覚のうちにテレビやラジオの音を大きくしてしまっていたこともありました。
そのような場合の解決策として補聴器がよく挙がりますが、実は嫌がる方は多い傾向にあります。
筆者の祖父も最初のうちは補聴器を使っていたものの、「耳が遠いのはそれほど困らない。補聴器は高いし、面倒くさい。すぐ失くしそうだからタンスに入れておくほうがいい」と言って、結局は使わず過ごしていました。
補聴器を嫌がる理由はさまざまですが、
- 面倒くさい
- 高価なもので失くすのが怖い
といった気持ちになる方も多いようです。
そこで、おすすめなのが手元スピーカーの活用です。特に高齢者が違和感なく使えるものは、手元スピーカーかもしれません。
手元スピーカーとは、その名の通り、使う人の傍で聞こえやすい音を出してくれるスピーカーのことです。テレビの大音量のように部屋中に音を広げることなく、本人に聞こえやすい音を届けることができます。
最近では、人の声が聴こえやすい「快調音」機能がついているものなども販売されているので、ぜひ探してみてください。
手元スピーカーを本人に活用してもらいたいときには、使いこなせるまで一緒に使ったり、プレゼントとして渡したりするなど、快く使ってもらえるような工夫をしてみましょう。
ケース2:エアコンをつけたがらない
夏、特に心配なのは、熱中症です。
エアコンをつけないことで熱中症になるリスクが高いのは、ご承知の通りです。人によっては、エアコンの風が嫌いという理由で猛暑にもかかわらずエアコンをつけたがらないこともあります。
しかし、「暑いんだからエアコンをつけなきゃダメでしょ!」「エアコンをつけないなんてどうかしてるわ!」というように強い口調で強制してしまうと、高齢者の心を傷つけてしまう可能性もあります。
よかれと思って言ったことも、口調が強ければ、高齢者にとって余計なお世話と受け入れてもらえないかもしれません。
安全に過ごしてほしいだけなのに、それが原因で関係にヒビが入ってしまうのは避けたいですよね。
もしエアコンを嫌がる場合には、以下の対策がおすすめです。
- 熱中症計の使用
- 高齢者のいない時間にエアコンをつけ温度を下げておく
- 怒るのではなく「体が心配なの」と優しく伝える
- 除湿する
熱中症対策として気温に注意するのはもちろんですが、湿度に着目することも大切です。
エアコンを使ってもらえないときの一つの対策として、除湿器やサーキュレーターなどを使用する方法もありますが、気温によってはそれだけでは不十分な場合もあります。
一番シンプルで早いのが、温度が高く危険なことを自覚してもらうことと、体を心配しているという気持ちを伝えることです。
猛暑日に、エアコンをつけないことに対し、焦りを感じ、強い口調で言いたくなってしまう気持ちもわかります。
しかし、エアコンが必要ないと思っている方にとって「エアコンをつけろ」という言葉は、自分のスタイルにケチをつけられることくらいの認識であるかもしれません。
例えば、自分の身内から嫌いな野菜を食べるように言われたとします。そのときに、ただ「健康にいいのだから食べなさいよ!なぜ食べないの?」と言われると反発したくなるものではないでしょうか?
しかし、「あなたの健康を守りたいの。心配だから一口だけでも食べてみない?」と真剣に言われれば、食べたいと思っていなくても相手の気持ちに免じて「一口だけ食べようかな…」と思う方も少なくないはずです。
同じように、エアコンをなぜつけてほしいのかを改めて考えてみましょう。きっと「心配だから」という答えが出るはずです。
その気持ちを優しく伝えてみると、高齢者の心が動くかもしれません。
また、危険を自覚してもらうのに適切なアイテムは、熱中症計です。
温度計でもよいですが、熱中症計であれば温度や湿度だけでなく、熱中症指数も表示され、ものによっては熱中症の危険を知らせるアラームまで鳴るため、高齢者自身が熱中症の危険を自覚しやすいです。
価格は、安いものであれば3,000円前後で買えるものもあります。便利なものを上手く活用し、危険を自覚してもらう工夫をしてみましょう。
自分の中にある優しい気持ちをそっと伝えよう
相手との関係を維持したいからといって、困りごとに対して我慢しているだけでは心の溝は深まっていってしまいます。
理想的なのは、家族の我慢で成り立つ関係ではなく、両者が尊重し合って生活していける空間なはずです。
中には頑固な方もいるかもしれませんが、そんなときには一度こちら側が冷静になり「どうしたらこの人と私にとって一番良いのだろう」と自分の気持ちも整理してみましょう。
気持ちを整理した状態であれば、相手への伝え方も自然と優しくなるはずです。こちら側が優しい気持ちで伝えれば、案外すんなりと受け入れてもらえるかもしれません。
それでも解決が難しい場合には、近くの地域包括支援センターで相談してみましょう。