「介護保険って、なんだかややこしくて…」と思っている方、こんにちは。メニースターズ代表で介護コンサルタントの星 多絵子です。なかなかわかりづらい「介護保険」について、制度やお金の面から解説なるべく分かりやすくお話ししていきます。
連載第3回目の今回は、介護報酬に対する+αの部分の解説です。「市町村によって異なるサービスの仕組み」についてお話します。わからない部分がございましたら、巻末までご連絡ください。個別相談もいたします。
介護って、遠いようで意外と身近な存在ですね。私も両方の祖母の介護を経験してから、他人事ではなくなりました。できる限りのサポートをさせていただきます。
自治体の財源で行う「上乗せ」ってなに?
介護報酬は、「支給限度基準額」を上回ると、その超過額は全額自己負担になります。「支給限度基準額」は、介護保険被保険者証に書かれています。普段、この限度額を上回らないよう、ケアマネージャーはケアプランを作成しています。
医療保険とは異なり、介護保険で決められた「支給限度基準額」を、市町村自らの財源で引き上げることができます。これを「上乗せ」といいます。
ただ、財源が必要ですので実施している自治体は少ないのが現状です。私が調べたところ、愛知県高浜市が実行しています。例えば、要介護3は介護保険の基準では、1ヶ月26,931単位ですが、高浜市の基準では、31,844単位と18.2%上乗せされています。
※上乗せの有無や、利用者負担金額については各市町村のホームページ等でご確認ください。
自治体の財源で行う「横出し」ってなに?
介護保険サービスはサービス内容が限定されています。国から25%財源に投入されているからです。ただ、介護保険サービスにないサービスであっても、市町村が独自にサービスを提供することができます。これを「横出し」といいます。
横出しの例として、同居している人の部屋の掃除・食事の配達・出張理容が挙げられます。「横出し」は、介護保険サービス適用外ですので、少額ですが、利用者がいくらか負担しなければなりません。
横出しの内容は市町村によって異なります。なぜなら財源は、個人から集められる介護保険料によって成り立っているからです。財源や人材が確保できる市町村は、幅広いメニューを取り揃えています。
※内容や利用者負担金額については、各市町村のホームページ等でご確認ください。
「散歩」を巡る議論の歴史と対応策
外出介助といえば、訪問介護を利用することがまず考えられます、しかし、訪問介護は、居宅内で行われるものであり、外出介助はその例外とされています。
このため、従来は外出介助として認められるものは、自立支援のための見守りとして日常生活に必要な「通院」および「買い物」等に限られ、「散歩」のみの外出は介助の目的として不適切とされていました。
なお、介護保険上、病院内の付き添いでは、外出介助を行うことが認められておりません。病院内では、病院スタッフが対応にあたるべきとの考え方からです。
「散歩」について、2008年(平成20年)に国会内で議論が沸き起こりました。これを受けて、2009年(平成21年7月24日)「厚生労働省老健局振興課」からの事務連絡「適切な訪問介護サービス等の提供について」が出されました。
「適切な訪問介護サービス等の提供について」
散歩について「自立支援、日常生活動作向上の観点から、安全を確保しつつ常時介助できる状態で行うものであって、利用者の自立支援に資する(例えば、ケアプランにおける長期目標又は短期目標等に示された目標を達成するために必要な行為である)ものとして、ケアプランに位置づけられるような場合については、老計10号別紙「1.身体介護」の「1-6 自立生活支援のための見守り敵援助(自立支援、ADL向上の観点から安全を確保しつつ常時介助できる状態で行う見守り等)」に該当するものと考えられることから、保険者が個々の利用者の状況等に応じ必要と認める場合において、訪問介護費の支給対象となりうるものであること」とされています。
つまり、厚生労働省の見解では、散歩に介護職員が同行することで、利用者のADLやQOLの向上に役立つとケアプランに記載される場合には個別具体的に判断して、介護保険の対象にすることもできるということです。
しかし、市区町村(保険者)で対応が分かれています。「散歩同行を介護保険で認める」「ADLやQOLの向上に資するものか個別に判断する」など前向きな見解を示す保険者もあれば、「単なる散歩同行は認められない」「ADLやQOLの向上に資するものであっても認められない」と頑なな保険者がいることも知っていただきたいと思います。
渋谷区は独自で「外出サービス」を設けている
このような状況のなか、渋谷区は独自サービスとして、散歩同行を「外出介助」における横出しサービスで認めています。
渋谷区では、訪問介護外出介助サービスのうち、外出介助において、通院や散歩、近隣施設への外出介助を独自の横出しサービスとして提供しています。
対象は、要介護・要支援と認定された人で、ひとり暮らし、または65歳以上の高齢者と同居している人です。こちらは、「日中独居」など事情のある人を含み、生活の実情に合ったきめ細かい配慮がなされています。
利用にあたっては、介護保険が優先し、ケアマネージャーによるアセスメントが必要です。ケアマネージャーが必要とする範囲でこれらのサービスを受けることができます。渋谷区では、外出介助サービスとして要介護者は30分間230円からと料金が決められています。詳細は自治体ホームページをご確認ください。
本日のまとめ
介護保険+αの上乗せ、横出しは市町村によって内容が異なります。財政だけではなく、介護への取り組みが自治体によってばらけているからです。どのような独自サービスがあるか、ホームページやお知らせをよく見ておきましょう。使えそうなものがあれば、市町村役場かケアマネージャーにご相談してみてください。
お引っ越しを考えられている方は、転居先の市町村がどのようなサービスを提供しているか、よく確認されることをオススメします。
2018年(平成30年度)の介護報酬改定は大きな節目の年。さて、どう変わるでしょうか?今後も注目ポイントをピックアップ!
利用者・家族にとっても、負担割合や料金など支払うお金が変わります。次回は「同じサービスでも支払う金額が異なる介護報酬の仕組み」についてです。大切なことなので、わかりやすく説明いたします。次回もお楽しみに!