「徐々に親の状況が悪化してきた」
「実家帰省の回数が増え心身ともに疲れてきて、お金の負担も大きい」
「このまま遠距離介護を続けていくのが心配になってきた」
遠距離介護を続けている方の中には、このような悩みを抱える方もいらっしゃるのではないでしょうか。遠距離介護に疲れ、自分自身が限界に近付いているときは、施設入所を検討する時期でもあります。
この記事では、施設入所を検討するタイミングや施設選びのポイントなどについてご紹介します。
遠距離介護に疲れてしまう原因
遠距離介護は、以下のようなメリットがあります。
- 親子とも生活環境を変えなくてすむ
- 介護ストレスが少ない
- 介護保険サービスを利用しやすい
しかし、遠距離介護も長く続いてしまえば子の方が疲れてしまうことも少なくありません。
なぜ遠距離介護に疲れてしまうのでしょうか。原因としては、2つの負担があげられます。
1.金銭的な負担
遠距離介護では、定期的に親元に通うことになります。また、親の体調不良など不測の事態があったときは、予定外の帰省も出てくるでしょう。
移動の回数が増えれば増えるほど、金銭的負担が大きくなるのです。
2.心身への負担
遠距離介護が長く続くと、心身への負担も大きくなります。ここでは、身体的負担と精神的負担にわけてご紹介します。
1.身体的負担
実家帰省が増えれば増えるほど、身体に負担がかかるでしょう。また帰省時は、限られた時間で数多くのタスクをこなさなくてはなりません。
- 病院受診への付き添い
- ケアマネジャーとの面談
- 役所での各種手続きなど
これらを1人でこなすことも大きな負担になります。
2.精神的負担
遠距離介護中は、自宅での家事や育児・仕事との両立が難しくなります。
介護や家事育児、仕事との両立も精神的負担を増大させる原因です。
親の介護が大変になり帰省頻度が増えると、自分の家族に対して申し訳なさを感じてしまう方もいます。それがストレスになることも考えられるでしょう。
施設入所を考えるタイミング
遠距離介護の疲れがピークになり、「もう限界」と思った時点で施設入所を検討しましょう。
主な施設としては、以下が挙げられます。
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- 介護医療院
- 認知症高齢者グループホーム
親の身体状況や要介護度、認知症の有無なども考えながら入所施設を選びましょう。「気持ちだけでは介護ができない」と認識しておくことが大切です。
親に以下のような状況が見られたら、施設入所のタイミングといえます。
- 介護度が要介護3以上になった
- 排泄や食事が1人でできなくなった
- 認知症が進み、行方不明になったり火の始末ができなくなったりしている
- インスリン注射や痰の吸引・在宅酸素療法など医療的ケアが必要になってきたにも関わらず自己管理ができない
また、介護者に下記のような状況が見られた場合も、同様に施設入所を考えるタイミングです。
- 介護ストレスから体調が悪化してきている
- 「こんな生活がいつまで続くんだろう」とイライラが募り始める
- 経済的負担が大きくなり、実家に通うことが困難になってきた
ただし、各家庭において施設入所を考えるタイミングは異なります。まずは地域包括支援センターなどに相談し、アドバイスを求めるのが良いでしょう。
遠距離介護から施設入所を進めるために大事なこと
次に、遠距離介護が限界で施設に入所する場合の注意点及び、施設入所までの4ステップをご紹介します。
施設を選ぶ際の注意点
1.立地
遠距離介護から施設入所の場合、「親の自宅近くの施設か」、「子の居住地にある施設か」を最初に決める必要があります。入所後は面会や行事への参加などで施設に足を運ぶ機会は多いので、可能であれば子の居住地近辺の施設が望ましいでしょう。
2.費用
施設によって費用は異なります。本人と家族で無理なく払える費用の施設を選びましょう。詳しい金額は「みんなの介護」でも確認できます。
3.サービス体制
サービス体制も施設によってさまざまです。
- 手厚い介護サービスを望むのか
- 医療体制の充実を望むのか
- 認知症になっても安心して暮らせる体制を望むのか
- 看取りまで対応してくれるのか
親及び自分たちの状況を踏まえた上で、どのような体制の施設がよいかを考えましょう。重視することがあれば、施設見学時に担当者へ質問してみてください。
4.入所条件
子の居住地に呼び寄せて施設入所を考える場合、「他地域からの入所が可能か」を最初に確認してください。
長距離移動は、親にとっては体力的に大きな負担になる可能性が高いですが、長距離移動が難しい場合は入所を断られる可能性があることもあります。
その他にも、介護度や認知症の状況によって入所の可否は異なります。親の現状を把握した上で施設を検討しましょう。
施設入所までの4ステップ
施設入所を決めてから実際に入所するまでは、いくつかの段階を踏む必要があります。
ここでは4つのステップで説明します。
1.情報収集
希望にあった施設をいくつか選んだら、電話やメール、インターネットサービスなどでパンフレットを取り寄せてください。施設のホームページがあれば、そちらもチェックしてみましょう。
2.施設見学
パンフレットだけでは、実際の状況は分かりません。候補とした施設については、実際に見学することをおすすめします。
遠距離介護で子の居住地近くの施設へ入所を希望する場合、親本人の見学は難しいでしょう。その場合は、親の状況を書面で伝えることになります。
可能であれば、親の写真や動画を見せて、間接的に親の様子を知ってもらうというのも1つの方法です。
そして、施設によって雰囲気は異なるので、できれば複数の施設を見学することが望ましいでしょう。見学する際に見ておきたいポイントは以下の5つです。
- 入所者やスタッフの雰囲気
- 見学者への接し方
- 施設内の環境(居室や食堂、トイレなど)
- 介護サービスの内容
- 食事の内容
見学時は気になることを抜け漏れなく聞けるよう、質問事項をメモしておくことがおすすめです。
また、施設内を撮影しておくと後から見返すことができるので、許可を得たうえで撮影しておくのがよいでしょう。
3・入所申し込み
希望する施設が見つかったら入所申し込みをします。申込時は、入所申込書・診療情報提供書・健康診断書などの書類を提出します。
また、申し込みをしてから入所するまでは1~2ヵ月が必要になります。施設によってはそれ以上の期間待機するので、計画的に申し込みをしましょう。
なお、特別養護老人ホームの場合は、入所判定会議により入所順が決まります。
4.契約・入所
入所の順番がきたら、施設と契約をします。
契約書や重要事項説明書といった書類が交付され、入所に関して説明されます。
説明に納得した上で、書類に署名・捺印してください。不明点・納得がいかない点はこのタイミングでしっかりと確認しておきましょう。そして、入所日が決まった時点で転居の準備を進め、準備が整ったら入所となります。
入所する親が長距離移動する場合は、移動手段をあらかじめ決めなくてはなりません。子の車で送迎する・介護タクシーを利用するなどが考えられます。
迷うことがあれば、担当のケアマネジャーや施設職員にも相談してみましょう。
施設入所のメリット
施設入所の大きなメリットは、家族の介護負担が軽減されることです。心身ともに安定した状況で親に会えるので、よい関係性を保つことができるでしょう。
親にとっても以下のようなメリットがあります。
- 介護職や看護職による24時間のケアを受けられる
- 医療的ケアや緊急時対応受けられる
要介護度が高い方や認知症の方も、しっかりとサポートが受けられるのも施設入所のメリットです。
ただし、特別養護老人ホームは原則要介護3以上が入所条件なので、ご注意ください。
施設入所のデメリット
一方、施設入所のデメリットとして、以下のようなことがあげられます。
- 在宅介護より費用が高くなる
- 住み慣れた家を離れることで、親に大きなストレスがかかる
- 生活環境の変化で、認知症の発症(もしくは悪化)する危険性がある
施設入所は親にとっても子にとっても、メリットとデメリットどちらもあります。両方を理解した上で、施設入所を検討することが大切です。
今まで住み慣れた家を離れることは、親にとっては大きな決断です。その決断がプラスに働くように、親の状況にあわせて施設を選ぶことが大切となるでしょう。