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第376回

【入院拒否】親を入院させたい時は地域包括支援センターに相談を!医療機関の連携で入院の“もしも”に備える

最終更新日時 2023/04/06
#親の介護 #地域包括支援センター
目 次

地域包括支援センターは、さまざまな関係機関と連携して地域課題や個別ケースの課題解決に向けて活動しています。

私たちが担当する千葉県富津市の地域には5ヵ所の医療機関と日常的に連携をしており、地域の高齢者の情報を共有しています。

今回は、入院を必要としていた高齢者のケースをもとに地域包括支援センターと医療の連携について考えてみたいと思います。

地域包括支援センターの弱点を補う医療との連携

地域包括支援センターは全国に5,000ヵ所以上配置されていますが、まだまだ一般的に周知されているとは言い難い状況です。

目の前で交通事故や犯罪、火事などが起これば、たとえそれが自分の家や家族でなくても110番や119番に通報するでしょう。当然それが自分に関わることであればなおさらです。これは「事件事故があれば警察110番、火事や救急は消防署119番」という情報が当たり前のように広く一般化されているからです。

しかし福祉・介護のことではどうでしょうか?

近隣住民が介護で苦労しているのではないかと思ったとしても、どこに連絡したら良いかわからないという方が圧倒的に多いのが現実です。また、他人の家のことを通報しても良いのか?と躊躇されるのではないでしょうか。

それこそが地域包括支援センターの弱点です。

しかし、私たちは地域の医療機関の医師と連携することでこの弱点を払拭しようと考えています。なぜなら、医療と福祉の対象者は密接な関係にあるからです。

高齢者に認知症状があったり、福祉用具を使用する必要があると医師が感じた際には、地域包括支援センターに相談して介護保険の申請をするよう医師に協力を仰いでいます。

医師からの連絡で私たちが自宅を訪問し様子を伺い、必要があれば介護保険の申請やサービス導入に向けて活動しています。

逆に、地域包括支援センターから医師に相談することもあります。急な認知機能の低下や妄想、転倒による骨折などが起きた場合、まずは主治医に相談することでその先の専門医の受診や入院の流れがスムーズになるのです。

 

【事例】入院を断固として拒否する高齢者

日常的な連携のほか、突発で起こる事態に際しても協働します。

ある日、ケアマネージャーから心身状況の急激な低下により動けなくなってしまったAさんについての相談が入りました。

私たちに相談する前日、担当ケアマネはすでに適切な対応を取ってくれていました。食事も摂れておらず、排泄にも苦慮するレベルの状態をみて、主治医に相談。救急搬送の要請をするという的確な対応をしてくれたのですが、いざ救急隊員が自宅に到着するとAさんは入院を拒否されました。

こうなると、救急隊員も無理矢理に搬送することができず、入院に至りませんでした。

しかし、医療につなげるべき状況だったため、地域包括支援センターに相談の報告が入ってきたのです。

状況把握のため、すぐにケアマネとともに自宅を訪問。会話は何とかできるものの、ベッドから起き上がることができず、トイレや食事も満足にできていませんでした。

さらに、Aさんはおむつ交換を拒否していました。何とか説得して担当ケアマネが対応したものの、汚物を失禁したままの状況でしたので、このまま放置しておくわけにはいきません。

起き上がれず、食事も排泄にも支障がある状態にもかかわらず、Aさんはやはり入院どころか受診さえ拒否していました。

そこで主治医に再度状況を報告し、医師による往診と入院についての相談をしました。

主治医もすぐに看護師とともに往診の対応をしてくださり、バイタルチェックの結果、血圧の低下、呼吸数の低下、血中酸素濃度の低下が顕著だとわかりました。

医師はAさんに血中酸素濃度の数値だけでもすでに入院レベルであることを伝え、入院を勧めました。それでもやはり拒否をされるばかりで、関係者一同で懸命に説得しましたが首を縦に振りませんでした。

そこで、主治医と相談したうえで、これ以上状況が悪化した際には躊躇なく救急搬送を要請することを決断。救急隊員には主治医の経営する病院に搬送するよう伝え、速やかに入院ができる体制を整備しました。

事前に医師と連携しておくことのメリット

主治医との事前の意志疎通の有無によって、入院できるかできないかに大きな差が生じます。

一般的に救急要請をした場合、到着した救急隊員は対象者や家族の状況などを把握したうえで搬送先の病院探しを開始します。しかし、ここから搬送先の病院が決まるまで数十分かかることが多いのです。さらに、搬送されたからといって入院ができるかは診察後になってみないとわからないことが一般的です。

しかし、事前に主治医との連携が取れている場合、搬送から入院までスムーズに運ぶことができます。日頃の医師とのコミュニケーションや連携が緊急時に功を奏することとなります。

画像提供:adobe stock

今回紹介したケースにおいては、その後担当ケアマネが毎日訪問して状況の把握と入院の説得を懸命に行ってくれましたが、拒否は続き、ご自宅でお亡くなりになってしまいました。

Aさんのように医療対応が必要な方でもそれを拒否する方はいます。

そんなときは主治医やケアマネ、親族と協働して有事の対応がスムーズに運ぶよう体制を構築することが大切です。

一生懸命利用者のために活動してくださったケアマネさん、そして相談にのってくださった主治医の先生には心から感謝しています。少しでも多くの方がすこやかに生活が送れるよう地域包括支援センターは活動をしています。

皆さんもご家族に入院を拒否されるような方がいらっしゃったら、まずは地域包括支援センターにご相談ください。

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