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第356回

成年後見制度の仕組みと利用のポイント。判断能力の低下に備える大切な制度を理解しよう

最終更新日時 2023/01/30
#看取り・終活
目 次

今回は終活の中でも重要なテーマである「後見人制度」について掘り下げたいと思います。

2022年11月18日、東京都江東区東陽の「ケアの駅」で「後見人制度」をテーマにした交流会が開かれました。

イベントの様子

この日の基調講演に登壇したのは、江東区権利擁護センター「あんしん江東」の戸熊係長。まずは同センターの役割を説明することから、スタートしました。

以下、戸熊係長の説明から後見人制度について考えていきます。

成年後見制度による保障

認知症の高齢者や精神障がい、知的障がいのある方などが福祉サービスを利用する場合、事業者と対等な関係で契約を結ぶことが難しくなるケースがあります。そうなるとサービスが利用できず、不利益を被る恐れも出てきます。そうならないように支援するのが、同センターの役割です。

利用者が事業者と契約し、各種介護保険サービスを含めたさまざまなサービスを利用できるようにアドバイスをしたり、日常の金銭管理をしたりと、サービス利用料の支払いなどが滞らないようにしていく事業を行っています。

福祉サービス、介護保険サービスの利用が契約である以上、法律行為になるため、利用者さんが法的に事業者と対立した場合相談ができるように弁護士、司法書士による相談会も週1回行っています。

もう1つが成年後見制度の利用案内。判断能力の不十分な方を守るこの制度を利用者が使えるように制度の案内をしたり、利用支援をしたりするのがこの事業です。

例えば、障がいがある方を母親がずっと面倒見てきたものの、急に病気になってしまってご本人がお金の管理や手続きなどができない場合。認知症の高齢者の方がグループホームに入所したほうが良いのかという判断が難しくなってしまった場合。

また、将来自分が認知症になったとき、誰が支えてくれるのか不安になったときなどに、後見制度の利用が考えられます。

後見制度の利用後は、後見人が本人に代わって銀行等の手続きなどをしてくれたり、福祉サービス、介護サービスの相談に乗ってくれたり、騙されて契約してしまった契約を取り消してくれたりといったようなことをしてくれることになります。

具体的には後見人として本人の生活にどのくらいお金がかかるか、どういうことにお金を割り振っていけばいいか、本人と相談しながら使い道を考えていきます。

当初の目的でこの福祉サービスの利用や、医療の手続きなどをするほか、消費者被害については、取り消し権を使って取り消していきます。

後見人は家庭裁判所と連携していて年に1回、自分の後見事務について家庭裁判所へ報告することになっているので、その点でも安心できる制度です。

後見人は家庭裁判所へ後見事務の報告をする

成年後見制度の仕組み

成年後見制度は任意後見制度と法定後見制度があります。

法定後見制度は国の制度で、内容が法律で決まっています。一方の任意後見制度は本人が元気なうちに、将来してもらいたい後見事務を、あらかじめ自分で決めておく制度です。

法定後見制度の中には補助・保佐・後見という3つの類型が認知症の程度によって分かれていて、その類型によって支援する補助人・保佐人・後見人の仕事内容が法律で決められています。

補助対象の方は判断能力が不十分、保佐対象の方は判断能力が著しく不十分でお手伝いが必要で、後見についてはまったく判断能力が見込めないという状況とその程度が順に重くなっていきます。

その中身は同意または取り消す行為と、代理することができる行為の2つに分かれています。あらかじめ取り消し権に高額商品の購入などを入れておくと実際に補助人・保佐人に許可なく高いものを買ってしまった場合、取消し権が有効になって、補助人・保佐人がその契約を取り消すことができるという制度です。

代理権についても自分がどういう法律行為を代理してもらいたいかを、あらかじめご本人の希望によって裁判所に届けて代理権を決めておく仕組みになっています。

後見類型になるとすべての法律行為について取り消し権・代理権が発効され、常に強い権限が後見人に与えられます。これはご本人を守る制度ですが、すべての法律行為を後見人ができることで本人の権利を損ねてしまう危険性もあると言われています。

そこが注意点で、非常に強い権限があるということを確認しておく必要があります。

手続きについては住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てをします。申し立てをする人は本人または親族、4親等以内の親族、配偶者です。身寄りのない方や家族の協力が得られない場合には市区町村長が申し立てます。その場合は役所で全部申し立てをしてくれます。

申し立て書は家庭裁判所の書式で結構分量があり、手数料もかかります。家族や一般の方でもつくれますが、申し立てが難しいときは弁護士さんとか司法書士さんに作成を依頼することができます。ただし、費用は10万円、15万円、となるケースがあるため、本人の資産と家族の思いで決めていきます。

後見人は家庭裁判所に候補者なしでお願いすると弁護士、司法書士、社会福祉士など裁判所に登録されている専門職が選任されることになります。事前に家族が申し立てれば家族を候補者できますが、最終的に選任するのは家庭裁判所になるので、申し立てで希望した候補者が選ばれるとは限りません。

配偶者が非常に高齢で、自分で手続きができない場合や、金銭管理が難しい場合、本人が高額の現金や土地を所有していて、親族が勝手に動かしてしまう恐れがある場合には、家庭裁判所も家族を選ばずに別の弁護士、司法書士などを選ぶ場合があります。

後見人の報酬は家族であっても、家庭裁判所が金額を決めます。年間で本人の財産から支払われます。

目安としては約24万円、月に約2万円の報酬が家庭裁判所から示されます。本人が管理する財産の大きさによっても変動し、月額3~5万円となるケースもあります。

また、契約の手続きなどが煩雑な場合、付加報酬ということで随時報酬が増える場合もあります。

後見人の報酬は家庭裁判所が決める

成年後見制度は、本人が亡くなるまで基本的には後見人がサポートするという制度。精神疾患の方などで病気が回復すると終了する場合もありますが、通常はずっと続いていく制度です。

ほとんどは法定後見制度

裁判所の資料によれば成年後見の申し立ては令和3年は約4万件で、東京都江東区内で140~150件。利用者については約750件が区内で利用されている方がいると言われています。

また、令和3年の申し立て件数を見てみると、ほとんどが法定後見で、任意後見はほとんど使われていない現実が見て取れます。(※筆者注=法定後見のうち後見開始が28,052件、保佐開始が8,178件、補助開始は2,795件であるのに対し、任意後見の監督人選任は784件)。

やはり報酬が高いと感じる方がいるのは否定できません。申し立てる前に1年間で24万円、30年なら700万円と計算してしまえば、なかなか手が出ないと感じてしまうのもわかります。

また手続き自体を煩雑に感じたり、家庭裁判所に申し立てることに対する抵抗感があったり、一度申し立てをすると家庭裁判所の許可を得なければ取り下げができないということなど、それぞれのハードルが高いので躊躇してしまうというところがあると言われています。

急にさまざまな機関や病院から呼ばれたり、警察から「迷子になっていますよ」と連絡が来たりするのも後見人。高収入の専門職からすれば、月に2万円ではボランティア精神が必要という見方もあるようです。

しかし制度を利用する側からしてみれば、全部後見人が事務手続きなどをしてくれることは、煩わしいことがなくなり気分的にも安心できる面もあります。

成年後見制度は介護保険制度ができると同時期に成立しました。利用者を守る制度である一方、本人に申し立てる能力がないため、支援者が申し立てを必要と思ってくれないと、申し立てにつながりません。

支援者からすると、「本人は介護保険サービスを使えているし、いらないんじゃないかな」って思ったりしますが、この制度の本来の意味とは、その契約自体が対等にできているかをチェックしてもらうためにできています。利用者から見れば必要な制度ではあるかなと思っているとのことでした。

我々は、そういったことを念頭において支援するような施設なので、支援者のための制度ではないために、なかなか制度の利用につながっていないのかもしれません。

事業者さんと契約するときに本当に納得して契約しているのかとか、困った利用者さんがいた場合に、事業者さんとしては「もう利用できませんよ」となることもあると思う。

そういったときにご本人だけでは事業者さんと戦えないので、後見人、保佐人、補助人が必要と言われています。そういった意味合いを汲んでいただければと思います。

実際には本人の意識がなくなって、いろいろな手続きや代金の滞納が発生して困った段階で、やっと申し立てをするというような使われ方もされています。

そうなってくると、後見人の方もご本人の心情を汲んだりせず、仕事としてお金の管理をして、1回滞りなく支払ってというような使い方にお互いになってしまうこともあります。

一部ではそういう事例もあるので、そのような噂が広まってしまって、なかなか利用につながらないというような状況もあるのです。

まとめ

このあと、参加者からの質疑応答、戸熊さんからの事例紹介などがあり交流会は終了しました。今回、多くの方が語っていたのが、後見人制度の中身について、認知度が上がっていないこと。保佐、補助などの用語を知っている人は本当に少ないことを、関係者の多くが肌で感じているようです。

2025年に構築が目指されている「地域包括ケアシステム」が機能するためにも、関係各機関からの広報・告知活動が必要な局面に入っています。その最前線基地となるのが、地域包括支援センターであり「ケアの駅」のような施設なのだと、痛切に感じました。

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安部 静男
安部行政書士・社会保険労務士・FP事務所 代表
2020/06/09

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