デイサービスを選ぶ基準は多々ありますが、その一つに「食事」があげられます。
先日、薬膳を学ぶ機会がありました。医食同源といいますが、もとは食薬同源だったそうで「食事」は健康管理の基本中の基本。日頃から自分の体質や体調に合わせたバランスの良い食事を摂ることで心身の不調を予防することが期待できるのだそうです。
デイサービスの食事のチェックポイント
そもそも食事は生活をするうえで欠かすことのできない大切なものです。
体に必要な栄養素の摂取はもちろん、楽しみや生きがいにもなるほか、生活リズムの要となり、食の旬や季節の料理により季節感を感じることもできます。
そんな食事はデイサービスでの楽しみの中でも、常に上位に入る重要なポイントであり、各々のデイサービスにおいても特徴や特色が出てくるものです。食事に着目してデイサービスを選ぶ際のポイントとして大きく3つがあげられます。
- 食事内容
- 食事環境
- 介助体制
それぞれについて具体的な選択ポイントをあげてみましょう。
1.食事の内容について
栄養バランスが考えられているか
私たちの体は、普段の食事で取り込まれた栄養素によりつくられています。健康維持のためには栄養バランスの良い食事が欠かせません。もちろん価格帯も気になるところですが、安かろう悪かろうということにもなりかねません。
食事の料金は介護保険から外されていることもあり、内容によってかなり差がつきます。単純に費用を抑えようとすると食事の内容もそれなりとなると予想できます。
ただ、食事について安易に済ませているデイサービスの質は良くない可能性も高くなるので、しっかりとその内容についても吟味したいところです。
現場調理・給食・弁当食
どこで調理しているものかの違いもあります。
さらに同じ現場調理でも職員がつくるのか、調理師がつくるのか確認しておきましょう。利用者を交えてつくる場合もありますが、それぞれにメリットとデメリットがあります。
調理する人 | メリット | デメリット |
---|---|---|
職員 | 人件費を抑えられる | 調理時に介護人員が減る |
調理師 | 調理時も介護人員が減らない | 人件費が追加で掛かる |
利用者&職員 | 自立支援の取り組みにつながる | 怪我や衛生面でのリスクが増す |
給食や弁当 | 栄養など品質が安定している | 内容が画一的になりがち |
弁当・給食の場合、どのような配給業者や仕出業者と取引しているのか、管理栄養士の有無、形状など、どこまで調整できるかによってもコストが大きく変わることになります。
現在は冷凍・解凍タイプのお弁当もあり、それだとコストを抑えることもできそうです。
主菜・副菜など、おかずの品数や彩り
こちらも栄養面とコストに大きく関わってきます。厚生労働省・農林水産省が推奨する『食事バランスガイド』に基づいて食事提供しようとすると主菜・副菜合わせて3~5品は最低限必要になるでしょう。
食事に関わる栄養士の有無によってコストや内容が大きく変化します。季節に合わせた旬の食材を取り入れたり、行事食やイベントに対応できるか否かでも同様に異なってきます。
形状(大きさ・硬さ・一口大・刻み食・ペースト食など)の対応の可否
介護状況や口腔内の状態、誤嚥の危険性の有無などによって、メニューが同じであっても提供する際の形状に工夫が必要な場合があります。
よりきめ細かな形状が選べるほど基本的にコストは上昇しますが、安全面や栄養面では得られる安心感がまったく異なります。
せっかく栄養バランスが取れたメニューが提供されていても、通われる方が食べにくい・飲み込みづらいようであれば、食が進まなくなったりひどい場合には誤嚥性肺炎を招くことも起こりえるでしょう。

2.食事の環境
食事を取り巻く食空間の環境的要素も食欲やおいしさに大きな影響を与えることがわかっています。
コロナ禍において「黙食」が普及しましたが、皆で交流しながら食べていたときに比べて味気ないと感じることはなかったでしょうか。
また、同じお弁当であっても青空の下で食べるのと室内で食べるのでは不思議と味が異なるように感じるものです。
同様に「孤食」か「皆と食べるのか」によっても感じる風味が異なることは言うまでもありません。一方で感染症とのリスクがこちらもまた大きく差が生じることになります。
食事をする際のテレビや音楽の有無、使用する食器の種類によってもそうした影響があります。そのほか食べこぼしの量や誤嚥・火傷といった介護事故率にも影響してくるそうです。
通われている方に「食べたい」「おいしい」と感じてもらうことで、食事の自立促進という役割もデイサービスには求められているので、食事の際にどのような食事環境が提供されているのかについても説明を受けておくと良いでしょう。
3.食事の介助について
食事介助時の体制状況の確認も重要なポイントです。
食事時の個々の姿勢づくりや食事自助具・補助具の有無などにも配慮できているか確認しておきましょう。
自分で食事をどの程度できるのか、そのADLのレベルによって従事者がどの程度配置できるのかをチェックしておくと安心です。
食事のときにお手伝いを要する方がたくさんいらっしゃるようなデイサービスでは、介助者が一人で何人も対応しなければならないようなところもあります。
あまり過剰になると個々人の食事のペースよりも業務の流れを重視せざるを得なくなるかもしれません。
また、食事の前後の服薬確認や服薬介助体制の充実度によってもリスクが変わってきます。従事者はもちろん細心の注意を払っていますが、介助者の人数が十分でないと起きてはならない間違いや飲まし忘れ、確認漏れなどが生じやすくなります。
従事者の表情や動きについても可能であれば従事されている方にお話を伺ったり、実際に見学させてもらっておきたいところです。
口腔ケアの有無も確認しよう
食事の前後にもう一つ、ぜひ確認しておいてほしいことが口腔ケアの有無です。口腔ケア加算の算定の有無にかかわらず、基本的に口腔ケアを実施しているデイサービスがほとんどでしょう。
しかし、まれに非常に疎かにされているデイサービスがあるのも事実です。口腔ケアの取り組みがされていないようであれば「食事面では十分に気を配っています」との話があったとしても問題がある施設だと思った方がよいでしょう。

こうした食事の面一つとっても各々のデイサービスによって明らかな違いが生じます。ぜひデイサービスを選択する際の一つの基準としてお役立てください。
きめ細やかに整えられた食事を提供しているデイサービスでは、直接でなくても、たくさんのメリットが得られる場合があります。
健康の維持増進はもちろん、ADLやQOLの向上、便秘の解消や精神的な安定などにも関わってくることが期待できるのです。
諸事情や今般のコロナ禍等の理由により食事の様子が見学不可であったり、対面不可の場合もあるとは思います。
しかし、そうした事情があったとしても見学に代わるオンライン機器を使用した様子の閲覧や資料の提供・従事者からの情報提供なども得られないような施設は注意が必要です。十分検討した上で利用するようにしてみてください。