こんにちは。REASON代表で、理学療法士でもある医療・介護ライターの中川恵子です。
「介護の教科書」の連載では、在宅介護をされている方に向けて、「介護者の負担を減らし、高齢者のケガも減らせる環境整理収納術」をテーマに、在宅介護のヒントをお伝えします。
第13回「老人ホームへお引っ越し!家具は何を持っていきますか?整理収納アドバイザーが教える、環境を変えない環境整備~家具選び編~」でお伝えしましたが、持っていく家具が決まれば、おのずと収納できる量も決まります。
収まりきらない量のモノを持っていくと、動きにくく、床などにモノが散乱する原因になるので、持っていく衣類の量は収納にきちんと収まる量を心がけましょう。
そこで今回は、老人ホームで環境整備をしていた経験から、「老人ホームでの生活をラクにする、既存のクローゼットの上手な使い方と持っていく衣服の量の目安」についてお伝えしていきます。
既存のクローゼット収納を上手に使うコツ
老人ホームの居室スペースは空間に限りがあるので、既存の収納を上手に活用しましょう。もしクローゼット収納がついているのであれば、それを有効活用できるといいですね。
クローゼットの活用が不慣れな高齢者の場合、クローゼットの中が空っぽで、タンスの中がぎゅうぎゅう詰めという方を良く目にします。そのような場合は、よく使うモノとそうでないモノにしっかり分け、使わないモノをクローゼットに収納するようにしましょう。
例えば、下着のストック、シーズンオフの洋服や布団などが挙げられます。そして洋服を持つ量はきちんとクローゼットに入る量を意識してください。
まず、クローゼットの幅を計ります。例えば、幅が80cmあった場合、洋服の1枚の幅は2㎝ほどで計算するので、最大で40枚の衣類を収納できます。
80cm(クローゼットの幅)÷2cm(洋服の1枚の幅)=衣類40枚
→40枚も衣類を掛けるとぱんぱんになるので7割の28枚くらいが目安)
この数字がクローゼットで収納できるハンガー数(=吊るす洋服の数)ということになり、老人ホームに持っていくハンガーの数の目安です。洋服をぎゅうぎゅう詰めに収納すると、取り出しにくくて、戻しにくい、そして何よりも見えにくいクローゼットに…。力の弱い高齢者だと衣類を取り出せなくなる場合もあるので注意しましょう。
さらに、高次脳機能障害がある方や認知症の方にとっては、洋服がたくさんある状態は情報が多すぎて選ぶことができなくなってしまうことも考えられます。
また、針金ハンガーはすぐにゆがんでしまうので衣服を取り出しにくく、そして戻しにくいので、できれば針金素材以外のハンガーで揃えると良いでしょう。
クローゼット収納のおススメ収納家具
クローゼットの中は、キャスター付きの家具を置くのがおすすめです。キャスター付きチェストは移動できるので、掃除がしやすくなります。幅は35㎝くらいが良いでしょう。幅35㎝は、カットソーなど、1アイテムを収納するためにちょうど良い収納量です。
幅35㎝収納チェストの引き出しの収納例が上の写真です。上の写真のように、洋服は立てて収納しましょう。立てる収納については、第9回「在宅介護が楽になる!整理・収納アドバイザーが教える整理整頓3つの極意。~ラベルを貼る・吊るす・立てる~」を参考にしてみてくださいね。
左の写真は長袖カットソーやトレーナーなど4着、右の写真は半袖ポロシャツ4着、半袖カットソー4着の合計8着を収納しています。入居の際に持っていく洋服の枚数の参考にしてみてください。
その他、左の写真のようなカラーボックスも仕切り収納に使いやすいのでおすすめです。一段カラーボックスは重ねて置くことも可能で、縦にも横にも置けるので、モノに合わせて個数や高さを変えることができます。
右の写真の奥行きの深い収納ケースは、使っていないモノ、シーズンオフのモノを収納するには良いですが、毎日着ている洋服を収納するには、大きすぎて使いにくいです。
洋服と下着は何枚準備したら良いの?
ご自身で衣類を管理されている方でも、職員が洗濯をして戻してくれる場合でも、モノがあふれてしまっているとどこに戻して良いのか分からず、衣類がタンスの上などに積み上がってしまう方がいます。衣服をタンスに収納することなく、積み上げられた中から着替える度に着るものを探すというライフスタイルになってしまうので要注意です。
衣服を何枚持っていくかについては、2日に1回洗濯する場合、着ている服1枚+洗濯待ち1枚+着替え1枚で最小必要枚数は3枚で足りていることになります。
尿漏れなどがある方の場合は、その頻度によってズボンと下着の枚数は増えます。自尊心から尿漏れのことを家族であっても話さない方もいるでしょう。もし枚数が多いなと感じても無理に整理することはせず、要介護者の方の気持ちに寄り添って見守ってあげることも大事なポイントです。
ですが、限られた収納スペースが増えることはないので下着などの衣類の収納スペースが増えれば、その他のモノを減らすことになります。例えば、洗濯サイクル+予備1~2枚、幅35㎝収納チェストの引き出し一段に収まる下着の量など、要介護者のライフスタイルに合わせて持つ量、収納ルールを決めましょう。
ルールを決めたらそれ以上に衣服が増えることがないように、「下着を1枚持ってきたら、1枚持って帰る」のような習慣をつけることで、必要なモノがすぐに見つかる暮らしを送ることができます。
本日のまとめ
入居するときに持っていくものをスムーズに選ぶことができるということは、引っ越し準備をするご家族のみなさんにとっても負担が減ります。そして、環境を変えることが負担になる高齢者にとって、必要なモノを選んで老人ホームへの入居と同時に環境を整えられれば、入居後、快適な暮らしを継続しやすくなります。さらに、職員さんがお手伝いしやすくなれば、入居者にとっても介助されやすくなる環境を整備できます。
第2回「介護者の負担を減らし、高齢者のケガも減らせる環境整理収納術」でもお伝えした、介護する人・介護される人の双方にとって良い環境は、安全で掃除がしやすい環境であるとともに、モノと収納スペースのバランスが良い環境だと言えます。
このバランスが崩れると、たとえ広い部屋に引っ越しても、部屋にモノがあふれてはみ出してしまいます。ですが、要介護者の方のこれまでの長い経験・生活歴・習慣に配慮して無理やり整理をして減らすのではなく、高齢者の方の考えを尊重して実践していきましょう。
もちろん、介護が始まってからだけではなく、介護する方の身の回りもモノが溢れているなと感じたら、整理収納の5つのステップを参考に、今からモノの量と収納スペースのバランスを見直してみると良いですよ!