皆さまこんにちは。フリーライター、メディア評論家、時折テレビ番組でのコメンテーターとして活動している奥村シンゴです。
1ヵ⽉ほど前、精神科病院に⼊院していた祖母が⼀般の病院へ搬送されました。医師から「尿路感染」と「骨髄異形成症候群」の疑いで、2週間程の入院が必要だと診断されたからです。
その際、看護士から「祖母は認知症の要介護5で部屋を変えると良くない」と、大部屋ではなく特別療養環境室個室(以下、個室と表記)を勧められ、応じると同意書にサインを求められました。
私は、病院都合なのだから差額ベッド代が発生しないと思っていたものの、病院の形式的なものと捉えて名前と住所を記入しました。ところが、祖母の入院が長引いたことをきっかけに、入院費用を病院の受付に聞くと「現在、20万円近く発生します」との答えが。私は、「看護士さんに勧められて個室に入ったので、病院都合ですよね?差額ベッド代は発生しないと思いますが…」と抗議しました。しかし、病院は「費用を支払って下さい」の一点張りで、病院側の具体的な説明がありません。
この経験から私が言いたいのは、「今、個室で入院している方は、差額ベッド代について具体的な説明がなされているのか、改めて確かめてほしい」ということです。
前置きが長くなりましたが、今回は差額ベッド代のことで起こったトラブルと、その解決方法についてアドバイスさせていただきます。
差額ベット代を拒んだら「退院」と言われてしまった
祖母は2週間で退院予定でしたが退院直前で発熱し、退院を延期にする予定でした。しかし、差額ベッド代の支払いを拒んですぐ、病院の事務から「検査の結果、異常はありませんでしたので、退院が決まりました。個室から大部屋に移動しますね」と連絡がありました。
私は、「え?今週いっぱいは入院し、肺炎か調べるのでは?」と病院に聞くと、事務の方に「直接医者に聞いてくれ」と言われてしまったのです。
すぐに医師に確認したところ、「血液検査やレントゲン撮影しましたが、異常はありませんし、熱もひいてきたので退院許可を出しました」と説明がありました。
私は、「先生、昨日まで1週間は経過観察と診断されましたよね?1日で診断が変わったのですか?差額ベッド代について意見したからですか?」と疑問をぶつけました。医師は、「急に退院が決まったのと、ベッドの事は関係ありません」としか答えてくれませんでした。私はこのとき、差額ベッド代について知識をつけておかなければならなかったと後悔しました。
同意書にサインしているからと差額ベッド代を請求される
その後、祖母の容体は回復し、医師から「今までの経過報告がしたいので病院へ来て下さい」と連絡があり、病院へ向かいました。
医師から今までの経過や退院日の説明後に突然、医事課や病院の相談員、看護士長の方々が部屋に入っていきました。私が戸惑っていると、医師から「少し相談室でお話をさせていただいてもよろしいでしょうか?」と言われ、私は相談室へ。部屋に入ると、相談員の方に「差額ベッド代についてですが、同意書にサインしているので、払ってください」と言われました。
私は、「個室については病院都合と考えます。厚生労働省の通知にも書いています」と反論しました。厚生労働省の通知では、差額ベッド代を徴収してはいけない場合を以下のように定めています。
- 同意書の確認を行っていない場合
- 「治療上の必要」がある場合
- 病棟管理として部屋替えの必要性がある場合
また、厚生労働省は、差額ベッド代に関する説明や同意に「懇切丁寧な説明をすること」としています。
今回の祖母の入院の場合、2と3に該当するものと考えていましたし、「丁寧な説明」も私は受けていません。しかし、相談員が看護士に「おい、そんなこと(病院都合であると)言った覚えあるか?」と聞くと、「ありません、ご家族様が個室を希望されました」との回答が。それを答えた看護師は、入院時に説明をうけた看護士ではなく、別の看護士です。
私は、知人の弁護士や医者といった専門家に払う必要性について聞いてみましたが五分五分の回答でした。
差額ベッド代のトラブル回避に録音・録画がオススメ!
差額ベッド代は、保険外診療で全額自己負担になり高額療養費の対象外なので、患者や患者家族に大きな出費となります。一方で、病院にとって差額ベッド代は数十万~数百万の大きな収益となるため、一部の病院によっては患者や患者の家族に必死に請求してくる場合もあるのです。
病院側と患者側でお金に関するトラブルを避けるために、例えば患者やその家族に入院期間中1週間~2週間単位で説明を繰り返してもらったうえで、患者側、病院側の双方で手続きの様子を録音・録画しておくのはどうでしょうか。
証拠を明確に残すことで、トラブルを避けることができるのではないでしょうか。
私の知人の医者によれば、今回のようなケースは少なくないと言います。厚生労働省も、説明や同意に関して曖昧な文言に終始せず、具体的な法的根拠を示すべきでしょう。
お金のトラブルを避けるためにも、医師や看護士、事務職員とのコミュニケーションは、しっかりとしておきましょう。