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第61回

「私を邪魔だと思っているんでしょ」と言われた…要介護の家族とのコミュニケーションの秘訣とは?

最終更新日時 2021/04/13
#親の介護
介護者メンタルケア協会代表、橋中今日子です。今回は、「要介護のご家族とのコミュニケーションで悩んだときの対処法」についてお伝えします。

介護者メンタルケア協会代表、橋中今日子です。

介護の負担は、入浴介助やオムツ交換といった物理的なものだけではありません。要介護のご家族との関係性、特にコミュニケーションで悩んでいる方はとても多いです。今回は、「要介護の家族とのコミュニケーションで悩んだときの対処法」についてお伝えします。

母の言葉をどう受け取っていいかわからないNさん

30代の女性会社員Nさんから次のようなご相談がありました。

脳梗塞で右半身不随になり、車椅子で生活をしている要介護3の母を、10年間1人で介護しています。母とは昔から折り合いが悪く、倒れた直後は「なんで優しくしてくれないのよ!」と泣き叫ぶ母。私も「お酒もたばこも止めなかったんだから、自業自得でしょう! 迷惑かけないでよ!」と怒鳴り返していました。

最近は「いつも悪いね。ありがとう」と声をかけてもらうこともあるのですが、素直に受け取れません。先日、母に「私、施設に入ってもいいと思ってるのよ」と言われました。「え? どういうこと?」と聞き返すと、「どういうことも何もないわよ! どうせ私のことを邪魔だと思ってるんでしょう!」と突然怒りをあらわにし、会話になりませんでした。

私自身「施設に入ってくれれば楽になる!」とホッとしたのと同時に、「これまでの私の頑張りは何だったの?」と腹も立ち、気持ちの整理がつきません。また、母の本音がわからず、今後どう話を切り出していいのかもわかりません。どうすればいいでしょうか。

Nさんのように、これまで仲が良くなかった両親の介護に向き合っている方はとても多いです。ねぎらいや感謝の気持ちを伝えられても、言葉の真意を測りかねたり、反発的な気持ちが沸いたりすることもあるでしょう。

不仲であった母の介護で気持ちの整理がつかない

主張がよく変わる人は葛藤を抱えていることも

「施設に入ってもいいと思っている」というお母さまの言葉は本心でしょう。「どういうこと?」と聞き返されて怒ってしまったのは、「これ以上娘の負担になりたくない」という思いに加えて「慣れ親しんだ家で過ごしたい」という気持ちもあるため返答に困って動揺してしまった可能性があります。

主張がころころ変わる人は、相手を騙そうとしたり、いい加減な気持ちから適当なことを口にしているわけではないことがほとんどです。本人自身の中で葛藤が起きていることを知っておくと良いでしょう。

心に葛藤が起きているとき、その奥には恐れや不安、罪責感、無力感など、本人が「意識したくない」「見たくない」という感情が隠れています。相手に強い言葉を投げかけたり、喧嘩腰で対応するのは、その感情に触れたくないからなのです。前回の記事「介護マウンティングから身を守る方法」でもお伝えしましたが、相手の言葉を額面通り受け取る必要はありません。八つ当たりのような言葉を投げかけられたときは、「今、怖いのかな?」「不安なのかも」と頭の中で仮説を立てるだけでも状況を客観視でき、相手の言動に巻き込まれることも減ります。

重要なのは「相手を慰めたり、落ち着かせたりする必要はない」ということです。「自分でもコントロールできないほど、心が揺れているんだろう」と仮説を立て、「放った言葉を言いたくなるほどつらいんだね」と心の中で唱え、ただうなずくだけで十分です。

状況を何とかしようとするよりも、相手に共感の気持ちを寄せることを意識してください。もちろん、相手の言葉が自分の心に刺さることもあるでしょう。そのときも、前回の記事を参考にしてください。

相手の心情に関する仮設を立てよう

自分自身の混乱を鎮めるヒント

要介護の家族の言動によって自分自身が混乱してしまったときは、自分の中にどんな気持ちがあるのかを書き出してみましょう。「出来事に対しての感情」「自分に対しての感情」「相手に対しての感情」の3つに分けると、整理しやすくなります。

今回のご相談では、実際にお話をしながら、Nさんの気持ちを以下のように整理しました。

出来事に対しての感情

  • 「母から施設入居を切り出される」という予想外の出来事に「びっくり」「ショック」「混乱」

相手に対しての感情

  • 怒られて「腹が立つ」「イライラ」
  • 「今の状態に不満があるの?」という「不安」「怒り」「寂しさ」「苦しさ」
  • 「在宅生活を続けられるよう10年も頑張ってきたのに、わかってくれていない!」という「怒り」「寂しさ」「苦しさ」

自分に対しての感情

  • 自分が望んでいた展開に「ホッとした」と同時に、そんな自分を「許せない」
  • なのに、いざ母から切り出されるとショックを受けている自分に気づき「混乱」
  • 「母が自分から施設の話を言い出したのは、自分の努力が足りなかったからなのかも」と感じて「申し訳ない」「いたたまれない」「苦しい」「罪責感」

このように分類したことで、Nさんは、自分に対する気持ちの中に「ホッとした気持ち」と「自分を責める気持ち」という相反する感情が混在していたことに気づきました。

その後、Nさんは「母も、私に対する罪悪感で気持ちが揺れていたのかもしれません。もう少し落ち着いたときに、母の気持ちを確かめてみます」と、相手を思いやる気持ちが高まったと話してくれました。

自分の感情を紙に書いて分析する

自分の気持ちを整理することでトラブルを避ける

自分か混乱したまま会話を続けると、言い争いに発展してしまうことがあります。まずは自分の気持ちの整理をしてみましょう。相手と何を話せば良いのか、ヒントが見つかることがあります。混乱しすぎて感情を書き出す気持ちの余裕がないときは、「相手の言葉がショックだったな」「嫌だったな」と、自分の中に起きている感情を先に言葉にしてみてください。

そして、相手に対しては「今、不安なんだな」「気持ちに余裕がないんだな」と心の中で唱え、相手の不安を受け取ったり、自分が傷ついたりする必要はないことに意識を向けていきましょう。

 

皆さんが介護で経験されていること、対策を取られていることを介護者メンタルケア協会の問い合わせフォームでぜひ教えてください。お困りのことやご相談には、こちらの「介護の教科書」の記事やメルマガでお答えできればと考えています。

「職場が介護の状況を理解してくれない」といった日々の介護の悩みについては、拙書『がんばらない介護』で解説をしています。ぜひ、手に取って参考にしてほしいと思います。

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