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第141回

認知症で寝てばかり…原因は?高齢者の睡眠障害改善のカギは体内時計と環境の整備

最終更新日時 2020/04/27
#親の介護
皆さんこんにちは。株式会社てづくり介護代表取締役の高木亨です。認知症症状がある場合、昼夜を問わず生じる介護課題が家庭の社会性維持を困難にすることが多々あります。今回は「認知症症状のある方の睡眠障がい」についてお話します。

皆さんこんにちは。株式会社てづくり介護代表取締役の高木亨です。

認知症症状がある場合、昼夜を問わず生じる介護課題が家庭の社会性維持を困難にすることが多々ありますが、今回はその中でも語られることの多い課題、「認知症症状のある方の睡眠障がい」についてお話します。

睡眠障がいは誰にでも起こり得る

認知症症状のあるなしにかかわらず睡眠障がいは誰にでも起こり得ます。

認知症症状の課題が生じると何でもかんでも「認知症のせいで…」とか「認知症だから…」などと考えてしまいがちですが、そもそも高齢になると睡眠時間は短くなり中途覚醒が増えやすいものです。

認知症が原因であると直結して考えることそのものに無理があります。

ヒトは1日の間に睡眠と覚醒を繰り返しますがそれは脳の視床下部にある睡眠中枢と覚醒中枢がシーソーのようにバランスをとっていることで生じています。

その調整を図っているのがいわゆる「体内時計」です。ヒトの場合、日中に覚醒し、夜間に睡眠をとるのがバランスの取れた状態という訳です。

睡眠障がいは何らかの原因でバランスが崩れた状態です。

睡眠障がいそのものは少なからず誰でも似たような経験はあるでしょうから、冷静に考えれば「頑張ってすぐにどうにかできる類のものではない」ことが理解できます。

認知症特有の症状「寝た記憶がない」

物忘れと匹敵するほどに、認知症症状には「昼夜逆転」「深夜徘徊」がついて回ります。

認知症の原因となる病気として代表的なアルツハイマー病やレビー小体病の多くで、睡眠障がいとそれに伴う周辺症状が生じやすいためと考えられます。

脳の老化やメカニズムについてはまだ解明できていないことが多いものの、認知症症状が目立つ前の早い段階から海馬がダメージを受けることが分かっています。

扁桃体や視床下部は位置的に同じ大脳辺縁系にあるため強く影響を受けやすいのではないかと言われています。

さらに私たちは自分が覚醒しているのかそうでないのかを案外判断できません。

例えば私たちは夢を見ている間、それが夢なのかどうかの区別がつきにくいものです。

認知症症状が進めば、その判断はより一層困難となるのも自然なことでしょう。

また記憶障がいは物忘れとは根本的に違います。

物忘れは「再生機能の低下」と表現できますが、記憶障がいは「記銘記録機能の低下」ですので、本人からすれば記録のないことは出来事としてなかったことと同じです。

「寝た記憶」がないことで、夢と現実の境目に気づいて「あれは夢だった」という認知が、極めて困難になります。

明らかに寝ていても「寝てない」「眠れてない」と主張することがあるのは言いつくろいではなく、寝ていた記憶がないので本人にとっては事実なのです。

認知症症状の中核症状である見当識障がいもまた、睡眠障がいとの相性が非常に良くありません。

見当識障がいがあると、自分がいる場所や時間などが把握しにくくなります。ふと目覚めたとき、「いつ、どこで、何をしていたかわからなくなる」ことにより、不安感情が高まって、さまざまな弊害をもたらすこともあります。

睡眠障がいの5つのタイプを把握する

さまざまな対策を講じるうえで、どのような形で睡眠障がいが生じているのか把握することが重要になってきます。

認知症症状のある方の主要な睡眠障がいのタイプを5つに分けてみます。

1:体内時計が狂ってしまっているタイプ

認知症症状に伴う睡眠障がいの多くは体内時計が狂ってしまうことによる概日リズム睡眠障がいタイプです。

床につくのがとても早かったり、非常に遅かったりするため、深夜の活動が目立ちがちとなります。

夕方6時頃には寝て12時から起きる、という方もおられました。たっぷり6時間寝ていますので12時から活動を開始し、明け方になるとお昼寝をするような感じでウトウトしだしたりします。

2:覚醒と半覚醒を繰り返してしまうタイプ

レビー小体型認知症症状をお持ちの方に割と多いようです。日中から傾眠していることが多く、半分起きて半分寝ている状態を一日中繰り返しているようなパターンです。

こうした場合、昼夜を問わず夢を見ている状態に近いようで、理性が効きにくく感情むき出しであったり、そばからは異常に見える行動をとる場合があります。

見えているものが違ったり幻視や幻聴などの幻覚も多く見られるようです。

よく「寝言に答えてはいけない」などと言われますが、答えていなくても、返答したかのように話が続いていくこともあります。

3:不眠症誤認タイプ

寝つけない場合や、寝ていても「寝た記憶」や「寝ついた感覚」が残らないため、不眠に陥っているタイプです。

実際には眠っている場合が多く、問題とならないこともあります。

しかし、眠った記憶自体がないことによる精神的なストレスが、周辺症状を悪化させることもあります。

また、早く寝ようとして体内時計を狂わせてしまったり、睡眠薬に固執依存する場合があるので注意が必要です。

4:見当識障がいタイプ

見当識障がいにより、自分の置かれている状況や現状が把握しにくくなると、不安を解消しようと家族を探して呼んだり、記憶にある場所を求めたりする行動が見られます。

こうした見当識障がいある方が中途覚醒すると「今がいつでどこで何をしていたか」を把握できない以上寝ている場合ではなくなります。

5:そのほかの疾病や障がいがあるタイプ

痛みや湿疹などの痒みを伴う疾患や、レストレスレッグス(むずむず脚)症候群などが原因で安眠できない場合や、排泄に伴う障がいが原因で頻繁に覚醒してしまう場合があります。

そうした状態に認知症症状が加わると、自分の状況を理解できなかったり、理解していても周りの人にうまく伝えられなかったりするため、どうにか不快な状況を解消しようとさまざまな行為に及ぶことがあります。

また、精神的なストレスや服用している薬の副作用が原因となることも少なくありません。もちろん、それぞれのタイプが複合的に生じていることも珍しくないでしょう。

体内時計や環境を整える

体内時計を整える

体内時計が狂ってしまっているタイプには、特に有効です。

生活リズムや住環境を整え、日中の活動量や太陽の光を浴びる時間を増やすと、体内時計が刺激されて昼夜のリズムが良くなります。

活動量を増やすまでいかずとも、時間を決めて着替えをしたり、リビングへ移動して食事をしたり、家族との会話などで時間を共有したりすることも有効です。

日中の時間帯は、なるべくカーテンを開けるなどして部屋を明るくするのも良いでしょう。

環境を整える

眠りにつきやすく、中途覚醒に備えた環境づくりも大切です。

眠りやすくするために暗くすることは重要ですが、暗すぎると恐怖感が強くなって眠れない場合や中途覚醒時に不安感を強める場合があるため、足元灯や間接照明の活用をお勧めします。

また、手足が冷えやすい場合には、寝つきの改善や安定した睡眠のために寝具等を温めておくと良いでしょう。

電気毛布や湯たんぽなども便利ですが、使用の際は低温やけどや脱水症状に注意してください。

家族のかかわり方を整える

認知症症状があると、周囲のかかわり方によって心理状態が大きく変わります。

症状によりストレスを抱え込みやすい状態になっていますので、寝るように強制したり、叱りつけたりといった「抑制的態度」を取ると、むしろ逆効果になってしまうことがほとんどです。

安心できる状況にあることを伝え、不安があれば聞き入れるようにし、本人に寄り添うような対応を取ると良いでしょう。

医師や薬剤師への相談

認知症症状がある場合の睡眠障がいは、ほかの症状や病状を悪化させることが多いことから市販薬はあまりお勧めできません

医師による診療や処方を受けるようにしてください。

その際、ほかにかかっている診療や服用している薬なども必ず伝えるようにしましょう。

特に、薬は組み合わせによって症状や病状を悪化させる恐れがあり、命に危険を及ぼす場合もあります。

また、一度の受診ですぐに効果が感じられるということは稀ですので、経過観察をして、その後の様子や副作用の有無を伝えることも大切です。

さまざまなサービスや周辺地域を活用する

認知症症状に伴う睡眠障がいは、すぐに解消することはなかなか期待できません。

ご家族もストレスを溜め込みやすく、疲労しやすくなります。

そうなれば多くの場合、お互いにイライラし、興奮が高まり悪循環となりますので介護負担を軽減するためにも、周囲に打ち明け、近隣の力を借りたりデイサービスやショートステイ、状況によっては視野を広げ施設などの介護サービスを利用検討しましょう。

結果的に日中の活動量が増え、自然に睡眠障がいが解消するといった効果も期待できます。

いずれにせよ、介護者が自分だけでなんとかしようとして対応・解決するにはなかなか難しいのが認知症症状です。

加えて、睡眠障がいも見受けられる場合に、ひたすら我慢を重ねてしまうと、支える側の健康や社会関係に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、場合によっては事故や高齢者虐待などの事件につながることも決して少なくありません。

周囲に打ち明ける勇気と相談先を見つけることが先決となります。

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