有限会社リハビリの風でデイサービスを管理している阿部洋輔です。
今回は、「お泊りデイサービス」の概要と課題についてご紹介したいと思います。
デイサービスが提供する宿泊サービスが「お泊りデイ」
皆さん、お泊りデイサービスをご存じでしょうか?
読んで字のごとく、デイサービスで行われる宿泊サービスのことです。
通所介護施設(デイサービス)で、高齢者が日中の介護サービスを受けたあと、そのままその施設に宿泊できます。
介護保険サービスの中で宿泊と聞くと、特別養護老人ホームに入所したり、介護施設のショートステイのことを思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし、「お泊りデイサービス」は、以下のような理由から、需要がとても高いサービスになります。
- 通い慣れた場所(デイサービス)で宿泊ができる
- 居住系介護施設(特別養護老人ホームなど)への入所が困難である
- ショートステイの予約ができない
- 安く宿泊ができる
以前は、サービス内容が事業所に一任されており、その事業所が存在する自治体によってもルールにバラつきがありました。
しかし、2015年に厚生労働省から「お泊りデイサービス」に関するガイドラインが発表され、これにより、介護職員の人員配置基準や宿泊する部屋の広さなどの設備基準、スプリンクラーの設置の義務化などの安全基準が定まりました。
「お泊りデイ」の課題2つ
先にご紹介したように、需要の高い「お泊りデイサービス」ですが、いくつか課題もあります。
- お泊りデイサービスは、保険適用外の自費サービス
- 日中に利用するデイサービスは介護保険が適応されるが、お泊りデイサービスについては介護保険が適応しておらず、自費サービスになる
- 十分にプライバシーが守られていない
- 「お泊りデイサービス」は宿泊での利用に対応してつくられていない施設であり、介護保険外のサービスとなるため、プライバシーの確保が十分でない場合がある
厚労省が発表した『通所介護施設等の設備を利用した介護保険制度外の宿泊サービスの提供実態等に関する調査研究事業報告書』では、次の通り問題点が挙げられています。
- プライバシーが守られないことがある(食堂・機能訓練室・静養室などのスペースで就寝する)
- 防火防災面での施設が不十分(夜間の緊急対応含む)
- 入所施設化しつつある(利用者のうち1ヵ月に1.2泊利用者は27%、30泊利用者が18%)
利用料金は事業所ごとに異なる
料金形態も保険外(介護保険の場合は金額が定められている)のため、事業所によってさまざまです。
安く利用できることも利用目的の1つになっていることもあり、1泊数百円から利用できる事業所もあります。
ただし、すべての施設が安く設定しているとは限らないので、利用を検討する事業所に確認してみるのが一番です。
また事業所ごとのルールもありますので、もしサービスの利用を検討される場合は、その事業所に連絡してみると良いでしょう。
事業所が定めているルールの一例
- お泊りサービス単独利用は料金を高めに設定
- デイサービスの利用登録をしていないと、宿泊サービスが利用できない
「お泊りデイ」が利用できる施設を見つけておきましょう
お泊まりデイサービスは介護をするご家族の心身の負担を減らすこともできるサービスです。
在宅で生活しているデイーサービス利用者の方にとって、宿泊サービスのある施設は必要であることに間違いはありません。
しかし、前述したように事業所によってはいろんな課題があることも事実です。
利用を検討する際は、慌てて準備するのではなく、お住いの地域にはどういった事業所がお泊まりデイサービスを提供しているか、調べておくことが重要です。
既に担当のケアマネージャーがいる場合は、情報を教えてもらえるように声をかけておくのも良いでしょう。
「人生100年時代」となり、介護をするご家族の介護離職の問題も顕在化しています。
利用者ご本人の希望と介護者であるご家族のバランスを見ながら、うまく活用していきましょう。