こんにちは。6年間にわたって祖母の在宅介護をしている、フリーライターの奥村シンゴです。
今回は、「親族の介護にかかるお金は誰が払えば良いのか」と「私が祖母の介護費用をどうしていたのか」について、体験談をもとにお話させていただきます。読者の方も、参考にしていただけたらと思います。
突然母と祖母のダブル在宅介護に追われることに
まず、家族構成についてお話させていただきます。私の祖母は祖父と離別しており、兄弟とは疎遠。祖母の娘である母も父とは離別しており、兄弟はいません。私には弟と妹がいますが、2人とも結婚しています。
ある日、祖母が認知症と診断されたのと同時期に母親が脳梗塞で倒れ、突然ダブル介護が必要となりました。しかし、私は事前に、家族と介護にかかるお金について、まったく話し合いをしていませんでした。

というのも、祖母は20歳から電話局で40年間も勤務した後、嘱託(しょくたく)職員として10年程勤務していました。つまり、支給される年金額は女性の平均より上ではないかと思っていたのです。
また、私は祖母に誰よりも面倒をみてもらっていたので、恩返しとして私が金銭的な面倒もみたいという思いがありました。
しかし、我が家には祖母の借金が350万ほどあり、毎月分割で返済しないといけない状況…。家族と介護費用について、話し合いの場をもつことになったのです。
本人が元気なうちに介護費用について話し合うこと
兄弟は「お兄ちゃん(私)がばあちゃん(祖母)に一番かわいがってもらったんやから」と、介護費用の支援もせず、介護をする気もありませんでした。祖母の娘である母親までも「私、倒れて死んでまうわ」と後ろ向き。そんなわけで、介護費用に関しては祖母の年金でまかない、借金に関しては私が分割で支払っています。
介護離職をすることになった私が、借金の肩代わりを…となったときは、もちろん不安がありました。しかし一方で、借金があるから頑張ろうと思うこともできました。
大変だと思われる方がいるかもしれませんが、私の場合は祖母が長年働いていたので、介護費用に関しては一切の負担はありません。そういった意味では、介護者としては恵まれた環境だと思っています。中には、介護費用だけで精一杯という方も当然いらっしゃるでしょう。
私が今回の経験で感じたことは、本人が元気なうちに介護費用についてしっかり話し合うことです。余裕があれば、弁護士を介して書面で取り決めておくと安心できます。
介護費用は家族で分担すること
では、実際にどのような取り決めをすればいいでしょうか。
各家庭や要介護度にもよりますが、在宅介護にはデイサービスやショートステイなどの介護施設利用料や、車椅子やベッドなどの福祉用具費用、医療費、おむつ・バッドなどの介護用品といった費用が毎月発生します。
イメージしやすいように、要介護2と要介護4となったときの毎月かかった費用をお伝えします。
要介護2のときにかかった費用
- 介護施設利用料(デイサービスを週3回):約3万円
- 介護施設利用料(ショートステイ)を2泊3日:約1万3,000円
- 医療費:約5,000円
- 介護用品:約5,000円
- 雑費:約5万円(食費・光熱費・被服費など)
要介護4のときにかかった費用
- デイサービスを週3回:約2万5,000円
- ショートステイを2泊3日:約6万5,000円
- 福祉用具:約1万円
- 医療費:約1万円
- 介護用品:約1万5,000円
- 雑費:約4万円(同上)
- 施設入所・入院代:約16万円
- 他科受診・介護タクシー・小遣い等:約3万円
私の祖母の場合、要介護が2から4へと上がることで、介護サービスの利用数や通院回数が多くなり、介護用品や施設入所にかかるお金が高額になりました。

要介護度が上がった場合や施設入所した場合、毎月の費用が高額になり、ひとりでは負担しきれなくなる可能性があります。そのため、それについてもじっくり話し合い、誰が負担するか決めておくと安心できます。オススメしたいのは、複数人で費用を分担できるようにすることです。
介護で困ったことがあればケアマネジャーに相談しよう
とはいえ、私の家族のように介護費用のことで話し合いに応じてくれない家族も少なくないと思います。
その場合は、介護経験者や介護の専門職に助けてもらいましょう。私の場合は、祖母のケアマネジャーさんに相談していました。介護施設の費用を比較してもらったり、介護にかかる費用について、医療費控除や確定申告をすれば一部が還付されること教えていただきました。

介護経験者でも良いのかもしれません。例えば、看護助手をしながら10年間両親をダブル在宅介護していた私の彼女にも、介護者の接し方についていろいろと相談していました。
例えば、介護施設や病院でお医者さんや介護士さんの対応に疑問がありながらも、意見するのって迷いますよね。そんなとき、彼女は「その件は意見しても良いと思うけど、あの件は意見しても仕方がない」と的確なアドバイスをくれたり、施設で着る服装を一緒に決めてくれたりと、いろいろ助けられています。
「介護費用について誰が払うのか」を家族と話し合うのは、シビアな話題なので切り出しにくいでしょう。しかし、我が家のように突然介護が必要になるケースは多々あります。そのときに備えて、誰が支払うのかをキチンと決めておきましょう。
そうすれば、必ず道は開けると思います。