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第29回

認知症はどんな病気?・生活する上で記憶力が身につかない・物事の流れなどの判断力が低下する、認知症とは“覚えられられない病気”

最終更新日時 2018/04/26
#親の介護
私は逆だと考えていて、認知症を発症した生活が長く続いた結果、脳の検査をしたら萎縮や変性がみられただけだということです。皆さん、ご家族が認知症を発症しその原因が脳の病気と考えてしまうとどうしたら良いか、わからなくなりませんか?

こんにちは。デイサービスで看護師として勤務している、認知症LOVEレンジャーの友井川 愛です。在宅介護で奮闘しているみなさんに、看護師目線で認知症介護のポイントをお伝えしていきます。

現在、認知症について一般の方にも正しい知識と理解していただきたいと考え、みんなの介護さんの場をお借りしてコラムを掲載させていただいています。

前回までは、「アルツハイマー型」「レビー小体型」「前頭側頭型」「脳血管型」などメジャーな認知症についてのお話しをしてきました。今回は、認知症の前段階と言われている「軽度認知障害(MCI)と、治ると言われている認知症」について皆さんにお話ししたいと思います。

認知症は忘れる病気じゃない

「軽度認知障害とは認知症は発症していないグレーな状態」のことです。認知症は突然発症する訳ではありません。医学的見解で言えば認知症は10~20年前から脳の萎縮や変性が起きておりその結果、発症するといわれています。

その中でも、若年性アルツハイマー型認知症や前頭側頭型認知症にみられるピック病は、脳の萎縮や変性による器質的な認知症だと言われています。ただし、認知症全体を含めると数パーセントほど。医学的見解からすると、脳の変性が起こるから認知症になりBPSD(認知症に伴う行動・心理症状)が起こるということです。

ただ、私は逆だと考えていて、認知症を発症した生活が長く続いた結果、脳の検査をしたら萎縮や変性がみられただけだということです。皆さん、ご家族が認知症を発症しその原因が脳の病気と考えてしまうとどうしたら良いか、わからなくなりませんか?

では、どう考えたら理解しやすいのか?本人の体調の変化や周りにいる私たちが作り出した環境によってBPSDが起こるということです。

体調の変化は、便秘・脱水・発熱・既往疾患の悪化・薬などが考えられます。環境の変化は住み慣れた場所から知らない場所へ行く・顔見知りの人と会えなくなる・今までできていた家事や役割を、認知症だからと家族などからしないように言われたり家族が良かれと過剰介護してしまうなどがあります。

また認知症の方は、発症するとなにもかもできなくなる・わからなくなるというのは間違いです。認知症を発症すると記憶の障害が起こることから生活がしづらくなりますが、その記憶がいきなり全部なくなってしまう障害ではないのです。

一部がわからなくなるだけなので…

  • ①洗濯をしようとして衣類を洗濯機の中に入れる
  • ②洗剤を入れる
  • ③スイッチの場所がわからず、洗濯機の電源が入れられない
  • ④洗濯ができない

という訳です。おそらく皆さんは、認知症とは忘れてしまう病気だと思っていませんか?

少しでも症状の進行を抑えるため、薬を使うのは危ない考え方?

私の経験上、よく聞く会話の中で認知症の方に「○○を忘れないようにしてください」とか「○○を覚えておいてください」などの言葉を聞きます。こういった言葉は認知症の方には不安や焦燥感しか与えません。どうしてだと思いますか?

答えは、"認知症とは覚えられない病気"だからです。忘れるのではなく覚えられない(特に新しいことは覚えられません)ので、そもそも覚えられないのに忘れることはできませんよね?認知症の方との正しい関わり方を、知識として理解できていないと、先程のような言葉をつい言ってしまうのです。

軽い記憶障害がみられるが認知機能や日常生活にも問題のない状態を軽度認知障害とよびます。軽度認知障害と診断されてもすべての方が認知症を発症するわけではなく認知機能が元に戻る場合もあります。

理由は、脳に回復力があるからなんです。神経細胞はネットワークを常に変化させていて、どこかの部分が使えなくなっても、別のところでネットワークをつないでしまうのです。「さまざまな認知症に移行する」以前は、軽度認知障害からアルツハイマー型認知症への移行が多いとされていましたが、現在では"病理所見"により他の認知症にも移行することがわかってきました。

医学的見解からだと軽度認知障害は症状、障害領域から4タイプに分けられ、記憶障害がみられる場合はアルツハイマー型認知症へ、記憶障害以外の障害が見られる場合は前頭側頭型認知症、レビー小体型認知症、脳血管性認知症に移行する可能性があると言われています。

また、現在では認知機能改善薬が開発され、早い段階から使うことで高価がみられるとされており早期診断、早期治療が大切だと言われています。ただ、これから治ると言われている認知症のお話しにもつながることですが、私が思う認知症は、脳の病気だから早く受診しないといけない、少しでも症状が進行しなくなるから薬を使おうというのはちょっと危ない考え方だと思っています。

近頃、物忘れがあるからといって病院で受診をしたら、普通の歳相応の老化による物忘れかもしれないのに、誤診により認知症と診断され脳に作用する余計な薬を投与されるわけで、次第に薬の量や種類だけが増えていくことになる可能性があるからです。ただし、受診したことで他の重大な病気が見つかることもありますので、検査を受けることは良いかもしれません。

認知症を治療する方法

認知症の中には血腫や腫瘍、過剰な髄液が脳を圧迫することで認知症の症状がみられることがあります。この中でも代表的な疾患について説明しますね。

慢性硬膜下血腫

転倒し頭部を強打、クモ膜と硬膜の間に血腫ができ脳を圧迫する。頭部をぶつけてから3週間から3ヵ月後くらいに頭痛、片麻痺、見当識障害、意識障害などの症状がみられ高齢者や大量の飲酒習慣のある男性に多く性格の変化が起こる。長い期間、脳がダメージを受けると認知症を発症する可能性が高くなり、血腫が小さい場合は自然と吸収されることもあります。早い段階で血腫を取り除く手術を行うことで、脳へのダメージを防ぐことができます。

正常圧水頭症

脳髄液が過剰になり脳を圧迫することで歩行障害、尿失禁、認知機能低下がみられます。画像検査をしてもらい、脳のダメージが軽ければ、髄液を逃がす手術を行うことで、治癒する可能性があります。

脳腫瘍

脳腫瘍は、もとから脳の中にできた腫瘍と他臓器から転移してできたものがあり肝臓がんや肺がんから転移したものが多いと言われています。できた部位で症状が違いますが一般的なものは頭痛、けいれん、片麻痺、失語があります。認知症の症状では、記憶障害よりも言葉がでてこない失語、手順がわからなくなる実行機能障害、手や足は動くのにどうして良いのかわからない失行があります。手術ができるのは、良性腫瘍や取り除ける部位にある腫瘍となります。手術ができない場合、放射線治療や抗がん薬投与にて治療することもあります。

これらの他にも甲状腺機能低下症や胃全摘手術を受けた方で、4年以上経過しビタミンB1、B2欠乏症になった方も認知症を発症することがあります。

次回は、認知症のことをもっと知ってもらいため、認知症の基本知識からお話しします。

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